第2クォーターで衝撃の25-1、ビッグクォーターを作り出す
12月24日、ウインターカップは大会2日目を迎えた。男子1回戦にして早くも実現した、福岡第一と仙台大学付属明成の強豪対決は持ち味のプレッシャーディフェンスで流れを一気に引き寄せた福岡第一が76-65で制した。
試合の出だし、福岡第一は各選手たちの動きが重く、人とボールがよく動く本来のオフェンスを展開できない。また、明成にインサイドの攻防でも優位に立たれたことで、第1クォーター残り約6分で2-13と出鼻を挫かれた。
福岡第一の井手口孝コーチは「初めてのコートですし、それなりに緊張しているのでフワフワしていました。足元が緩いという感じでした」と立ち上がりの出遅れについて振り返っている。だが、「タイムアウトを取ると逆に向こうの勢いが増すと思ったのでちょっと辛抱してみようかと。1つ目のギャンブルでした」と続けたように、選手たちの修正能力を信じると、ガード陣の積極的なドライブ、ディフェンスリバウンドからのトランジションと、本来のプレーを徐々に見せることで14-15と盛り返して第1クォーターを終えた。
そして迎えた第2クォーター。いつもの機動力を取り戻した福岡第一は「うまくいかないだろうと思っていたら2本、3本と良い感じになったのでやり続けました」と井手口コーチが語る、オールコートでの激しいプレッシャーディフェンスで明成を圧倒する。敵陣でのターンオーバー奪取からの速攻。さらにタフショットを打たせ続けてリバウンドを取ってからのトランジションで次々とイージーシュートを決めていった。その結果、このクォーターで25-1と衝撃のビッグクォーターを作り出して一気に突き放す。第4クォーターに入ると、プレッシャーディフェンスに慣れた明成の追い上げを受けるが、それでも常に2桁のリードをキープと、ゆとりをもって逃げ切った。
「この後も強豪ばっかりで、毎日が準決勝、決勝のような試合が続きます」
「久しぶりの試合なので、しょうがないとも思いますがちょっと危なかったですね」。こう試合を総括する井手口コーチは、終盤に点差を詰められることも想定内ではあったと明かす。だからこそ、大差が開いた場面でも、故障による長期欠場からの復帰戦となった崎濱秀斗など主力を使い続けていた。
「明成さんは我々より強い思いで来ていて、最後まであきらめない。ああいうことを想定して、何十点開いても緩めないようにしようと思っていました。崎濱あたりは久しぶりの試合でオーバーワークだった気もしますが、最後の勝負どころはよく決めてくれました」
この明成の強い思いとは、6月に逝去した佐藤久夫前コーチのためにもという気持ちだ。また、井手口コーチにとって、佐藤コーチは常に目標にしてきた大きな存在で、明成と今大会の初戦で戦うことにはいろいろな思いがあったはずだ。
試合中はその思いを隠していた。しかし試合終了後、挨拶にきた明成の選手たちと顔を合わせ、3年生エースであるウィリアムスショーン莉音と握手した後、その隠してきた感情が溢れた。この一戦にどんな気持ちで臨んでいたのか、次のように明かしてくれた。
「今日は久夫先生がいないものだと思って試合をしました。『もういいでしょう、静かに天国でゴルフでもしていてください』と思って試合をしていました。自分の中では断ち切ってという気持ちでいました。でも、最後はやっぱり……」
初戦で大きな山を超えた福岡第一だが、「この後も強豪ばっかりで、毎日が準決勝、決勝のような試合が続きます」と井手口コーチも語るように、険しい道のりが待ち構えている。しかし、だからこそ初戦で明成とタフな試合ができたことを指揮官はポジティブにとらえる。「最初にこういうゲームを経験できたのは良いかもしれないです。(主力選手の)プレータイムが伸びたことで逆に慣れができたと思うので、良い方にとらえます。ケガから復帰して3年生の崎濱、アピア(パトリック眞)もコートに立てたので、体力が尽きるまで、走らせたいと思います」