ニック・スタウスカス

写真=Getty Images

「自分の力を疑って、泣いてしまったことも何度かあった」

10月18日、レブロン・ジェームズのレイカーズ公式戦デビューに関心が集まったモーダ・センターでの一戦で最大のサプライズを起こしたのは、このオフにトレイルブレイザーズと契約したニック・スタウスカスだった。

第1クォーター終盤に2本の3ポイントシュートを連続成功させると、第2クォーター開始後もレイアップ、プルアップジャンプシュート、そして再び3ポイントシュートを立て続けに決め、数分間で13得点を記録。スタウスカスが作ったリズムに乗ったブレイザーズは、レイカーズとのスコアリング合戦を128-119で制し、ホーム開幕戦18連勝を飾った。

試合後、ヘッドコーチのテリー・ストッツから「ニックがチームを乗せてくれた」と称賛されたスタウスカスだが、昨シーズンまでは、NBA選手としてのキャリアが終わるかもしれないという不安と恐怖の中にいた。

2014年のドラフト全体8位でキングスから指名されたものの、3年目まで毎シーズン移籍を繰り返し、昨シーズンは開幕をセブンティシクサーズで迎えたがシーズン中ネッツにトレードされた。そして2月が終わる前にローテーションから外れることを伝えられ、自信を完全に失っていた。スタウスカスは、『The Athletic』に「自分の力を疑ってしまっていて、泣いてしまったことも何度かあった」と、明かしている。

「怖かったんだ。自分がこのリーグで消えて行く選手になって、海外リーグでプレーしないといけないようになるかもしれないとも考えた。夜眠る時も、『これは現実に起こっている』と思ってしまって、怖かった」

しかし、ブレイザーズに移籍してからというもの、スタウスカスはバスケットボールの楽しさを取り戻していった。トレーニングキャンプ中には、自宅に戻るたびに今年の夏に婚約したパートナーに練習の楽しさ、チームメートとの相性の良さについて話し続けた。開幕戦後、流れを重視するストッツのオフェンス戦術を「ガードにとって夢のようなシステム。このシステムでプレーできるのは、夢が叶ったような気持ち。チームに合流した初日から興奮しているんだ
」と絶賛し、チームメートとの関係については「繋がりを感じられる」と形容。特にセカンドユニットでチームを組むエバン・ターナー、セス・カリーとの連携に手応えを感じているようで、「彼らとのグループでのプレーは楽しい。こんなことは大学以来なかった」と語ったほどだ。

わずか半年前までは、ブルックリンで失意のどん底にいた選手とは思えないほど、今では自信を取り戻している。開幕戦に向かう前、自宅で支度をしていたスタウスカスに、婚約者が「今夜は20得点決めるんでしょ?」と声をかけると、彼は「もちろんさ。他に俺が何をするって言うんだい?」と答えたという。

4年目にして自分の力を生かせる職場を見つけられた以上、あとは結果を残すだけだ。