スーパースターのわがままに振り回され続けるネッツ
最終的にプレーヤーオプションを使ったためフリーエージェントにこそならなかったものの、カイリー・アービングとの契約延長交渉に失敗し、不穏な空気が渦巻いていたネッツは、ケビン・デュラントからトレード要求されてしまい、チームは崩壊の危機に瀕しています。
スーパースターのわがままに振り回されることに嫌気がさしたのか、ネッツのフロントもトレード先を探している状況と言われています。将来のドラフト指名権をセルティックスに渡し、ケビン・ガーネットやポール・ピアースらを手に入れ、優勝を目指した13-14シーズンのネッツでしたが、プレーオフで敗退するとスター選手は流出し、再建期へと突入しました。15-16シーズンは21勝、16-17シーズンは20勝と散々な成績だったものの、本来手に入るはずだったドラフト上位指名権を失っていたため新たなスター候補を獲得することもできませんでした。ちなみに、この時の指名権でセルティックスはジェイレン・ブラウンとジェイソン・テイタムという現在のエース2人を指名しています。
リーグ最低勝率ながらドラフト指名権も持たないネッツは『史上最も困難な再建』と評されるほど、どうにもならない状況でしたが、ショーン・マークスGMが行ったサラリーキャップスペースを利用した見事なトレード術と、ヘッドコーチのケニー・アトキンソンが見せた錬金術のような選手育成により、他のチームで失格の烙印を押された選手を見事に磨き上げ、上位指名権も大物フリーエージェントも獲得せずに、18-19シーズンにはプレーオフへと返り咲きました。
この成功により、ブルックリンにあるライジングチームは、それまで見向きもされなかった大物フリーエージェントに注目されることになりました。アービングとデュラントが揃ってネッツとの契約を選び、翌年には優勝のためにネッツ入りを強く望んだジェームス・ハーデンをトレードで獲得し、スーパースターが並ぶ優勝候補の最右翼へとジャンプアップしました。このまま優勝さえしていれば『史上最も華麗なる再建』が完成していたでしょう。
しかし、優勝を大前提に集まってきたスーパースターにチームへの愛情は望むべくもなく、優勝が遠のけばあっさりと見限ってトレードを要求してきます。シクサーズへとトレードされたハーデンに続き、アービングがチームから離れることを示唆すれば、デュラントもトレード要求へと動きました。皮肉にもネッツの指名権でセルティックスが獲得したテイタムとブラウンにスイープ負けしたことが引き起こした事態とも言えます。
優勝さえしていればすべてが肯定されていたでしょうが、失敗に終わった今となっては、この3年間のネッツはスーパースターの輝きに依存した戦術と薄っぺらいチームワークしかなく、グラグラと揺れ動く不安定さを見せ続けており、常に急増チームのような戦いぶりでした。スーパースター抜きで再建を果たしながらも、いざ優勝を目指しに行くとスーパースターのわがままに振り回された感があります。
この間にアトキンソンはヘッドコーチを辞任し、再建期の中核だったディアンジェロ・ラッセル、ジャレット・アレン、キャリス・ルバート、スペンサー・ディンウィディらはチームを去っており、積み上げてきたベースは何も残っていません。このままデュラントとアービングが移籍すれば、ベン・シモンズを中心とした再建へと足を踏み入れることとなります。『史上最も華麗なる再建』から一転、再び苦しい日々へと戻るのか。ネッツは不透明過ぎるオフを迎えることになってしまいました。