網野友雄コーチ「我慢できたことに尽きる」
インカレ男子の決勝は、持ち味の堅守で劣勢を耐えた白鷗大学が第4クォーターに一気の攻勢に転じて63-58で逆転勝ち。初の決勝進出から悲願の日本一に輝いた。
試合の出だし、両チームともに互いのディフェンスのプレッシャーに負け、思うような形を作れない。特に東海大は連携ミスからパスが逸れてのアウト・オブ・バウンズが続く。この悪い流れを河村勇輝のピンポイントパスによる金近廉の連続得点で切ってリードを奪うが、白鷗大も立て直す。
第2クォーターに入ると、東海大のゾーンディフェンスが効力を発揮。白鷗大は最初の数ポゼッションでターンオーバー、オフェンスファウルが続き、シュートすら打てない状況となってリズムを崩す。東海大はこのチャンスに八村阿蓮が3ポイントシュートを沈めリードを2桁に広げるなど、完全に勢いに乗った。
白鷗大はこのピンチで控えの杉山祐介が東海大の大黒柱、大倉颯太を相手に1対1からスティールを奪うビッグプレーで停滞したムードを変えることに成功するが、8点リードで後半を迎えた東海大が主導権を握って試合は推移する。
第4クォーター序盤にはハーパー・ジャン・ローレンス・ジュニア、西田陽成、金近廉と3人の1年生がコートに立ちながらもリードを保ち、残り約6分から体力を回復させた大倉、八村、河村の中心選手を投入する理想的な展開で、ゲームの締めに入る。
だが、白鷗大は最後までディフェンスの強度が落ちず、東海のフレッシュな中心メンバー相手にも得点を許さない。思うようにインサイドアタックをできない東海大は、河村が切れ込んでのキックアウトから外角シュートのチャンスを作り出すが、3ポイントシュート26本中4本成功と最後まで当たりがこなかった。
最後のチャンスを託された大倉颯太、シュートを打てず
白鷗大も3ポイントシュートは13本中1本と不発に終わったが、司令塔の松下裕汰のドライブを筆頭にインサイドアタックで加点。残り4分には52-52とついに追いつくと、そのまま逆転に持っていった。
白鷗大の3点リードで迎えた残り20秒弱、東海大はラストオフェンスを迎える。この試合、白鷗大はフリースロー18本中8本成功と苦しんでおり、2点を取りファウルゲームを仕掛ける選択肢もあったが、東海大はエースの大倉にボールを託す。大倉は3ポイントシュートを狙うも、ポンプフェイクでかわしたかに見えたミサカボ・ベニとの接触でファンブル。これにファウルは吹かれず、こぼれ球を拾った白鷗大が速攻へと繋いで勝負あり。最後までもつれた激闘を制したのは白鷗大だった。
今大会、白鷗大は最多失点がベスト8の日本体育大戦の67失点、準決勝は筑波大を相手に51失点、決勝は58失点と、大学バスケ界随一のタレント集団を連続で60失点に抑える堅守が光った。
網野友雄ヘッドコーチも勝因はディフェンスにあったと語る。「試合を通してディフェンスの部分は強度を高くできる自信がついていると思います。点数が取れなくても1桁差で前半を終えて、後半しっかりディフェンスを継続する。オフェンスで修正したところが少しずつ後半は出せたことで逆転できたと思います」
そして、指揮官はディフェンスに加え、メンタルの強さにも絶大な自信を持っている。「ディフェンスの強度が落ちない。そして、どれだけビハインドでもメンタルが落ちない。この2つに尽きると思います。学生たちも一生懸命やりながらもビハインドで入るゲームを多く経験してきて、決勝でも我慢できたことに尽きると思います」
どんな苦しい時間でもタフに戦い続けられる。白鷗大はこの大舞台でも、自分たちのチームカルチャーを存分に発揮することで日本一に立った。この特徴は網野ヘッドコーチの古巣で今もアンバサダーとして関わりを持つ宇都宮ブレックスを彷彿とさせるものだ。今宵、不撓不屈のメンタルを持った日本一のバスケチームが、栃木にもう一つ誕生した。