トム・ホーバス

「この経験を絶対に忘れない、この気持ちを絶対に忘れないと言いました」

トム・ホーバスの日本代表ヘッドコーチとしての初陣は2試合連続の大敗となり、厳しい現実を突きつけられた。相手はアジアの盟主である中国で、日本代表は海外組が不在なのはもちろん、田中大貴の代表引退、B1で活躍する帰化選手を招集できないなど予想外のマイナス要素が重なった。とはいえ、それを言い訳にできる内容ではなく、攻守ともに完全な力負けだった。

ホーバスが目指すスタイルは女子代表を東京オリンピックで銀メダルに導いたスピードと3ポイントシュートを軸としたもの。しかし、2試合続けて3ポイントシュートは不発に終わり、サイズで上回る相手にスピードでも負けてしまった。

63-79で敗れた第1戦、日本は第1クォーターで11-27と大差をつけられたが、第2クォーター以降は互角の戦いを演じていた。だからこそ、今日の第2戦は出だしを修正しなければならなかったが、緩慢なプレーによるミスから10-29と第1クォーターで再び大きく出遅れ、そこから挽回できずに73-106で散った。

指揮官は、2日続けて第1クォーターでつまずいたことに「びっくりしました」と落胆の表情を見せた。「今朝いろいろ話して、良い練習をやって、みんな分かっていたと思っていたけど、出だしが良くなかった。中国は強いチームです。相手のプレッシャーに負けたのは良くなかったです」

後半については「ウチのプライドが少しは出たかなと思います。後半は最初から最後まで、前半より良いエネルギーでプレーしたと思う」と語る。ただ、中国にとっては常にセーフティリードを保ち、余裕で乗り切った試合だったのも事実だ。

これが女子だったら、じっくりと合宿を行ってチームを鍛え直す時間がある。しかし、男子はBリーグのタフな日程があり、代表は明日で解散。選手の中には水曜日の天皇杯と、すぐに試合が待ち構えている者もいる。ただ、それはホーバスも十分に分かっており、対策は考えている。

「みんなバラバラになるけど、試合が終わってからこの経験を絶対に忘れない、この気持ちを絶対に忘れないと言いました。私のバスケスタイルはBリーグのチームはやらないけど、代表選手はそれぞれのチーム練習が終わって後で少し練習してもらった方がいいと思います。このスタイルの練習が必要です。そのためにビデオを作ったり、選手とコミュニケーション取っていきます」

トム・ホーバス

次の代表活動は来年2月の予選「多分、2月の合宿では24人は呼ばない」

この2日間は多くの選手を試した。特にポイントガードは2試合で3人ずつと入れ替えたが、その理由をこう明かす。

「この合宿は6人のポイントガードを呼びましたが、レベルが高いと思いました。岸本(隆一)のディープスリーや寺嶋(良)のタフディフェンスと速さとか、みんな特別なものを持っています。ただ、6人のうち4人に代表経験がなかった。代表の大舞台でどれだけできるかは実際に使ってみないと分からない。だから昨日3人出して、今日は新しい3人にしました」

そして、印象に残った選手たちの名前を語る。「ポイントガードは今日までがトライアウトでした。この合宿、寺嶋は良い仕事をしました。齋藤(拓実)も良い仕事をやって、2番で西田(優大)はすごく頑張りました。3番は古川(孝敏)とアキ(チェンバース)が頑張りました。ただ、古川のパーセンテージが高くなく、アキは良い守備をしたけど、もうちょっとアタックしてほしい。3番もシュートチャンスはあるので、もうちょっと打ったほうが良いです」

今回の代表合宿と2試合を経て、ある程度の選別は終わったとホーバスは示唆する。「多分、2月の合宿では24人は呼ばない。もうちょっと減らして、少ない選手の中で練習したほうが良いかなと思います」

次のアジア予選でどんなメンバーが招集されるかは今から楽しみだ。また、これからのリーグ戦での活躍次第で、今回選ばれなくてもチャンスは与えられるはずだ。それはこれまでホーバスの女子代表でのチーム作りが示している。

この2日間を終えて、「2試合やってあまり良くなかったけど、我慢しかない」とホーバスは総括した。次の試合も海外組は参加できない。国内組がこの悔しさを晴らすパフォーマンスを見せてくれるはずだと、バスケットボールファミリー全体が今は我慢してホーバスのチーム作りを見守る必要がある。