宮﨑優介

東海大学付属福岡は一昨年の初出場から3年連続のウインターカップ出場を決めた。198cmと圧倒的なサイズを誇るセネガルからの留学生、ファール・アミナタが2年生になり、チームもまた昨シーズンの全国大会の経験を得て成長している。札幌山の手、岐阜女子と2年連続で名門校に阻まれているが、宮﨑優介コーチはその経験こそを求めていると言う。新型コロナウイルスの影響でチーム作りが難しい中、今年も強豪ひしめく福岡県からウインターカップへ。目指すはベスト8、そしてその先だ。

県決勝で敗れるも「通用しないところが見えたことをプラスにとらえています」

──今年ここまでのチーム作りはどんなものだったのかを教えてください。

夏の大会から振り返ると、準決勝で福大若葉さんに負けて地区大会では精華女子さんに負けて、我々はチャレンジャーという気持ちで準備を進めてきました。準決勝に勝てばウインターカップ出場が決まるので、精華女子さんに勝ちたい気持ちが大きくて、そこは良い雰囲気で勝てたのですが、中2日での若葉さんとの決勝では対策もできておらず、やりたいバスケができませんでした。

夏の大会はアミナタを軸にバスケットを作っていたのですが、ウインターカップに向けてはキャプテンの藤井や神森の3年生を中心にバスケを展開しようと思いました。準決勝での戦い方は全国の舞台でも通用する手応えは感じられましたが、若葉さんとの試合ではアウトサイドのバスケを展開されて、アミナタがペイントにいればどうしてもそういう対策はされます。その意味ではウインターカップ本戦の前に、ああいった形で自分たちの通用しないところが見えたことをプラスにとらえています。

──チーム作りの上ではどんな苦労がありましたか? 今年もコロナの影響が大きかった1年だったと思います。

どうしてもコロナ禍で練習時間が制限され、体育館を使える日数も限られてしまい、いかに効率良く練習を進めるか、選手たちにどう落とし込んでいくかがスタッフの課題になりました。そこでこれまでのチームと比べると、卒業生たちはファミリー感がすごく強かったのですが、今の3年生はなかなかファミリーになれませんでした。それは練習時間が足りない、一緒にいる時間が短い中で意思疎通がなかなか上手くいかず、それは私自身も選手たちから「この練習を続けて本当に勝てるのかな」という不安があるように感じました。私自身も、もっと噛み砕いた指導は意識していたのですが、インターハイ予選では上手くいっていませんでした。

そういった中でキャプテンの藤井(心咲)から、動画を見てテーマをみんなで共有したいと相談がありました。彼女の一歩踏み出す勇気をすごく感じましたし、私もそうやって彼女と向き合えるのはすごく良かったです。そこでキャプテンである彼女のアプローチからチームがようやく一つになれましたし、彼女の成長がこのチームをウインターカップに導いてくれたと思います。

宮﨑優介

「先輩たちが残してくれた財産をどう生かすかは自分たち次第」

──初出場から3年連続のウインターカップ出場となります。コーチ自身、過去の大会で印象的な思い出はありますか?

初めてウインターカップに出場させていただいた時には札幌山の手さん、去年は岐阜女子さんと対戦させていただきました。全国の舞台に立たせていただき、名将が率いるチームとバスケをさせていただく中で、個人的にもすごく学びが多い大会だと実感しています。三年目の正直ではありませんが、今大会は福岡県の代表として全国ベスト8に、それ以上を目標に頑張りたいです。

──3年連続でウインターカップに出場することで、チームを取り巻く雰囲気も変わってきましたか?

地元の中学生には刺激になっているようです。学校のオープンキャンパスなどのイベントの参加者も例年より増えていますし、地元の子たちが我々のバスケットに興味を持ち始めてくれているのは感じます。県内だと福岡市や北九州に選手が多いのですが、ここから一つ抜け出すにはやっぱり全国の舞台で「東海ってこんなバスケをするんだ」というのを示したいです。

また、前任の飯田先生の頃の卒業生も今回の決勝を応援しに来てくれたり、OGの皆さんに興味を持ってもらえているのもうれしいですね。我々のチームは小学校、中学校とキャリアを踏んだ選手が少ないので、大会に出ると面喰う部分もあります。それでも先輩たちが残してくれた財産をどう生かすかは自分たち次第で、先輩たちの過去の映像を何度も見返して、東海はきれいなバスケットじゃなくても球際の泥臭さだったり、そういったところでチームカラーを出していくんだ、と選手たちも意識してくれています。

──トーナメントは岐阜女子がいる山に入りました。厳しい戦いが予想されます。

昨年は1位通過しても岐阜女子さんとの対戦だったので。それに全国の舞台で名門と戦うことがチームの成長にも繋がっていますし、やはりインターハイのベスト8、ベスト4に入ったチームと一戦交えたいという気持ちはあります。組み合わせ抽選までひたむきに頑張って、ここからは相手チームにアジャストできるようなバスケを準備していきます。今回の県予選では、準備したものが上手くいった精華女子さんとの試合、逆に苦しい思いをした若葉さんとの試合と、両方を味わうことができたので、その経験を全国の舞台に繋げたいです。

宮﨑優介

「ウインターカップでは全員が共通認識を持って戦いたい」

──アミナタ選手を始め、教え子たちの成長ぶりをどう見ていますか?

アミナタは今こそ私と日本語でコミュニケーションが普通に取れるようになって、バスケの面はもちろんですが、日本の文化を学んで理解してくれたことが彼女の成長に繋がっていると思います。入学当初は「なんで毎日練習するの?」や「なんでこんなに長く体育館にいなきゃいけないの?」という部分があったんですけど、今では体育館にいるのが当たり前になって、県予選が終わった後のトレーニングにも一日一日真剣に向き合って頑張っています。それがコート上での彼女のタフさにもなっています。

アミナタは2年生ですが、他は藤井や神森(祐里)、木場(優杏)、中井(千尋)、足立(凪彩)と3年生が中心になって頑張ってくれています。それでも県予選の準決勝と決勝では1年生ガードの3人、伊良部(由明)、境(さくら)、浜口(さくら)が非常に頑張ってくれました。2年生からも藤本(愛香)、赤間(静夏)を鍛えてウインターカップに臨みたいと思います。

──そのウインターカップに臨む意気込みを教えてください。

福岡県の男子では福岡第一さんと福岡大学附属大濠さんがいて、井手口孝先生や片峯聡太先生が選手たちと見ている景色というのは、女子の我々がまだ見たことがないものだと思います。私も選手たちとそういった景色を見たい、それを目標に頑張りたいです。ここに来てようやく東海のチームカラー、ファミリー感が出てきています。3年生と過ごす最後の時間を有意義に過ごしながら、厳しい言葉を投げかけることも当然あると思うんですけど、ウインターカップでは全員が共通認識を持って戦いたいです。

──最後に、このチームに注目しているバスケファンの皆さんへのメッセージをお願いします。

東海大福岡はこれまでひたむきにバスケットをやってきました。試合を見ている皆さんにワクワクやドキドキをもっと感じてもらえるように、ここから大会に向けて準備していきます。本大会で是非、我々のバスケットをご覧いただき、一人でも多くの人に応援してもらえるよう、ファンになっていただけるように頑張っていきます。