スピード、得点、バスケットIQを兼ね備えた司令塔
「今まで日本代表はアンダーカテゴリーも含めて、全くかすりもしてこなかったので、こういった機会をいただけて本当にうれしく思います。日本代表になることは夢の一つでもあるので、このチャンスをつかみきれたらいいなと思います」
広島ドラゴンフライズの司令塔を務める寺嶋良は、先日のバスケットボール男子日本代表の会見で開口一番にこう語った。
男子日本代表は新ヘッドコーチに女子日本代表を東京オリンピックで銀メダルに導いたトム・ホーバスを招聘し、新体制をスタートさせた。前任のフリオ・ラマスは世界と戦うためにサイズを重視したが、ホーバスコーチは「私はサイズアップより速いペースを作りたい」と、女子日本代表の時と同様にスピードを重視している。
寺嶋もそうして初招集となった選手の一人だ。洛南から東海大へ進み、2019-20シーズンには大学4年生ながら京都ハンナリーズと特別指定契約ではなく本契約を結び、2019年末にBリーグデビューを果たした。チーム加入後はすぐにプレータイムを獲得し、プロデビュー間もない2020年2月にリーグの月間MVPに選ばれている。経験がモノを言うポイントガードだが京都では、テンポ良くボールを運んで周囲を引き立たせてチームを上手く回す『大人のプレーメーク』を披露し、指揮官の信頼を得た。
そして、今シーズンは広島でプレーし、開幕からの14試合すべてに先発して、平均プレータイム26.9分で12.0得点、2.4リバウンド、3.8アシスト、1.0スティールを記録。持ち前のスピードと冷静な判断力に加えて、若手らしいアグレッシブなペイントアタックでチームの勝利に貢献している。
今回、初めて代表合宿に参加している寺嶋は、招集された要因をこう語る。「持ち味のスピードや得点力がリーグで通用していて、スタッツや成績を残せています。それを踏まえて日本代表の候補として呼んでいただいて、長所なども理解していただいています。それを練習でも、メンバー選考で選ばれても存分に発揮できればと思います」
「僕は特にスピードを生かすように言われています」
広島では、その実力を発揮してチームのオフェンスを活性化させている寺嶋だが、ホーバスコーチが求めるバスケットは所属クラブとは異なる。
寺嶋は「今回のスタイルでガードはすごくスピードを重視されています。スピードやコントロール、バスケIQを重宝されている」とホーバスコーチがチームに求めていることを語ると、「僕は特にスピードを生かすように言われています」と続けた。「トランジションやペイントアタックからのキックアウトなど、そういったものを存分に発揮したいですし、そこを期待されて呼ばれているので合宿でも発揮したいです」
ホーバスコーチは女子代表の時から、多くの選手にチャンスを与えて来た。今回、招集されたガード陣は岸本隆一、藤井祐眞、富樫勇樹、ベンドラメ礼生、齋藤拓実、そして寺嶋の6人だ。ロスターを争うレースはすでに始まっていて、コーチは「誰がウチのプレーやルールを覚えるか、それを覚えながら良いパフォーマンスができるかをすごくチェックしています」と語っている。
初めての日本代表で緊張はあるかもしれないが、ホーバスコーチのバスケットは全員が初めてだ。コーチが求めるバスケットをどれだけ早く理解し、コート上で体現しつつ、自身の持ち味を出せるかどうか。寺嶋がこのチャンスをどう生かすのかが楽しみだ。