外国籍選手とのマッチアップも「自分がより成長できる場ととらえています」
昨シーズン開幕前、今村佳太は地元の新潟アルビレックスBBを離れて琉球ゴールデンキングスへと加入し、新天地でも持ち前の得点力を発揮して、チームの西地区4連覇に貢献した。
今シーズンも開幕節こそ2試合合計4得点と不発に終わったが、それ以降は徐々に調子を上げてきている。代表ウィークを前にした最後の試合となった11月14日の群馬クレインサンダーズ戦では、3ポイントシュート5本成功を含む19得点で勝利の立役者となった。
2番、3番ポジションではリーグトップクラスの身体能力を誇り、ボールプッシュも難なくこなす。そしてキャッチ&シュートからクイックリリースで放つ3ポイントシュートは一度入りだすと止まらない爆発力がある。西地区トップの琉球で中心を担う彼を日本代表に推す声が出てくるのは当然だが、ここまではフル代表には縁がなかった。
東京オリンピックでは32名から20名へと絞り込まれる時点で落選と、ナショナルトレーニングセンターに集まってのサバイバルレースの現場にたどり着くこともできなかった。当時、その心境を「落選はSNSで知りましたが、本当に悔しかったです」と明かしている。
ただ、ここで落ち込んで終わりとならないタフさを今村は示した。落選を知った直後、チャンピオンシップの富山グラウジーズ戦の初戦で「ハングリー精神ではないですが、ここから見返してやろうというメンタリティになりました」と27得点の大暴れ。さらに第3戦でも再び27得点を挙げ、セミファイナルへと導いたのは記憶に新しい。
キャプテン田代のケガで「日本人の中ではエースとして活躍しなければ」
チーム在籍2年目の今シーズン、今村は名実ともに琉球の中心を担う一人となった。キャプテンの田代直希が、11月6日の新潟アルビレックスBB戦で残りシーズン絶望の重傷を負ったことで、その自覚はより強くなった。
「正直、ケガをした時にはそこまで長引かないと安易に考えていて、全治10カ月という発表にはショックが大きかったです」
今村はチームメートの痛ましい故障を振り返った後で、こう言い切る。「田代選手との両ウイングで、僕らがいるからこその強みはあると思っていました。自分がよりいっそう、日本人の中ではエースとして活躍しなければいけない。その意識は大きく変わりましたし、より責任感を持って臨まなければいけないと思っています」
この強い責任感と覚悟は日の丸を背負って戦い、国と国のプライドを懸けてしのぎを削る国際舞台では欠かせないものだ。そしてオフェンス面に加え、身体能力の高さを生かした強度の高いディフェンスにも磨きをかけている。冒頭で触れた群馬戦でも、リーグ随一のスコアラーであるトレイ・ジョーンズのペネイトレイトに対し、戦略的ファウルを上手く使って対応していた。
国際舞台では自分よりサイズ、フィジカルで上の選手とマッチアップすることが日常茶飯事となるが、Bリーグで外国籍選手とのマッチアップが多い今村にとって非日常ではない。
「昨シーズンから外国籍ガードが増えて、そこにマッチアップする機会は多かったです。その経験がすごく生きていると思います。自分のバスケットボールのレベルとしても、ああいうレベルの高い外国籍とマッチアップすることで成長できる。キツいところもありますが、自分がより成長できる場ととらえて楽しんでやっています」
今回の招集は今村にとって、他の候補選手と直に競争できる待望の機会だ。そして女子代表の時代を振り返れば、トム・ホーバスは経歴や実績に関係なくトライアウトで結果を残した選手を抜擢してきた。この代表合宿でこれまで積み上げてきたものを披露できれば、10日後のゼビオアリーナ仙台のコートに彼が立っていても驚きはない。