文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

コービーのラストマッチに感動しながらも引退は「他人事」。

シーズンも佳境を迎える中、どの選手も疲労は溜まっているはず。リーグ戦の合間に代表合宿を行う負担について質問すると、田臥は「これもまた勉強」と笑った。「この状況にどう付き合っていくか。僕もそうですけど、若い選手もこれからタフな状況になってくるので。経験だと思います」

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35歳はチーム最年長だが、老け込むつもりは全くない。2歳年上のコービー・ブライアントの引退ラストマッチを見て、「プレーヤーとしてバスケットに情熱を注ぐ姿は本当に格好良かったので、刺激になりました」と、そのキャリアを称えつつも、引退の二文字を意識することはない。

代表チームの若手について質問されると、この日、同じチームでプレーした馬場雄大を引き合いに出し、「若手でああいう楽しみな選手がいるのはうれしい」と前置きしながら「自分も現役をもっと続けて一緒にやりたいなと思わせてくれます。もっとバスケットを学べるチャンスだと思えます」と語った。田臥は今も自分を特別視せず、仲間として、競争相手として、切磋琢磨する存在と見なしているのだ。

もっとも、経験を伝える役割を期待されていることは自覚している。「若い選手とは積極的に話すようにしています。僕から話すだけじゃなくて、相手がどう思っているかも知りたいですし。そうやってコミュニケーションを取るようにしています」

田臥はこの年齢になっても、すべてを糧にして自分の成長につなげようと貪欲だ。「若いメンバーと一緒にできることは自分にとってもプラスです。こういう機会を大切にしたいと改めて思います」

35歳の代表最年長にして、今なおメンタルは成長途上。田臥にはまだ老け込むことなく日本代表を引っ張ってもらわなければならないが、心配は全くいらないようだ。