安藤誓哉

絶妙な攻めとミスが混在した大阪を、ミスを抑えた試合運びで上回る

大阪エヴェッサと島根スサノオマジックの対戦は、両チームのオフェンスの持ち味がぶつかり合う点の取り合いになった。

先手を取ったのは大阪だった。ケガの癒えた合田怜が今シーズン初先発し、ポイントガードとして大阪の『走るバスケ』を引っ張り、リバウンドを抑えてはトランジションに転じる攻めが機能した。竹内譲次のスクリーンを巧みに使ったディージェイ・ニュービルの3ポイントシュートも飛び出し、理想的な攻めを展開する。

新加入の木下誠も合田の作った良い流れを引き継ぎ、第2クォーターに入ると昨シーズンは先発を張った中村浩陸が今シーズン初出場。開幕時点ではケガ人だらけだったポイントガードの選手が戻って来ている。

ただ、彼ら全員がまだ試合勘が戻らず、新しいチームメートとの連携もこれから高めていくところで、安定感では島根が上だった。メンバーが入れ替わると勢いを失う大阪に対し、島根はベンチスタートのペリン・ビュフォードが次々と得点を挙げる。さらに日本人ビッグマンの小阪彰久が常時ビッグラインナップの大阪相手に前半だけで3スティール、唯一の3ポイントシュートのチャンスもきっちり沈める、『脇役』と呼ぶには派手すぎる活躍を見せた。

大阪は速攻の意識が強すぎるのか、前半で11アシストを記録するもターンオーバーも7あり、ミスで流れを悪くすることに。さらには主力にプレータイムが偏るだけに試合が進むごとにインテンシティが落ち、それはリバウンドに現れた。第2クォーター途中からディフェンスリバウンドを取り切れず、速攻に持ち込めないどころかセカンドチャンスポイントを連続で奪われ、リズムを崩すことに。46-43、大阪が3点リードまで追い上げられて前半を終えた。

金丸晃輔

後半には金丸晃輔、前半は無得点と波に乗れない中で『らしさ』を発揮

後半に入ると島根の新たな看板選手、安藤誓哉と金丸晃輔が力を発揮する。点を取り合う展開でも安藤は落ち着いてゲームをコントロールし、有利なマッチアップを探し出してはパスを送って得点を重ねていく。第3クォーターは大阪が相変わらず、良い攻めはあるがミスも重なり6アシスト4ターンオーバーだったのに対し、島根は7アシストでターンオーバーはわずか1。また金丸は前半こそ無得点に終わったが、初の3ポイントシュートを記録した後は、相手の警戒を逆手に取ってアイラ・ブラウンのシュートチェックを待ってファウルを誘発。当然のように3本のフリースローすべてを沈める『らしさ』を発揮した。

こうして島根が68-61と逆転して迎えた最終クォーターも打ち合いの展開のまま、それでも安藤がベンチで休む間は山下泰弘がチームを引き締める島根がリードを保って時間が進む。追う大阪は攻勢を強めるも、ディフェンスでミスが続く。外で待つニック・ケイに誰もチェックに行かず3ポイントシュートを沈められると、セカンドチャンスから金丸を空けてしまうミスを2度続けて犯し、いずれも3ポイントシュートを決められた。木下とアイラの絶妙なホットライン、ニュービルの3ポイントシュートと大阪も良い攻めは出るものの、攻めのギアを上げると守備に脆さが出て、どうしても自分たちの流れを作れなかった。

最終スコア88-77。ハイテンポな打ち合いに応じながら、隙のない試合運びでいつの間にか試合の流れを引き寄せる島根の強さが目立った。島根もトランジションのチームだが、ファストブレイクによる得点は大阪の19に対し11と下回った。それでもセカンドチャンスポイントで24-7と圧倒し、リバウンドを制することで大阪の出足を鈍らせたのが効いた。互いに走る展開の中で、11人の選手でプレータイムと役割をシェアして走り負けない、リバウンドでも優位に立つポール・ヘナレの選手起用も見事だった。これで島根は5勝1敗。大型補強で注目を集める中、期待を裏切らないスタートダッシュに成功している。