『陰鬱な夏』を終えて雪辱へ、シーホース三河の狩俣昌也「僕たちの年にしたい」

2018/09/07
Bリーグ&国内
3700

狩俣昌也

文=鈴木健一郎 写真=バスケット・カウント編集部、B.LEAGUE

「ガードとしてチームを勝たせられなかった」

シーホース三河にとってはさぞかし『陰鬱な夏』だったことだろう。5月20日、ウイングアリーナ刈谷にアルバルク東京を迎えた、チャンピオンシップのセミファイナル第2戦。初戦を落としていた三河は奮闘し、終盤に比江島慎のクラッチシュートで追い付くも、延長で力尽きた。2試合ともにどちらに転んでもおかしくない大接戦、勝ったA東京はファイナルで千葉ジェッツに大勝して優勝したのだが、敗れた三河には長い夏が待っていた。

オーバータイムの5分間、もう足が残っていなかった橋本竜馬に代わりポイントガードを務めたのは狩俣昌也。A東京も安藤誓哉は限界で、小島元基に試合を託していた。ここで「チームを勝たせられなかった」という自責の念が、夏の間ずっと狩俣を苦しめた。

狩俣はこのオフに結婚式を挙げた。シーズン中はバスケ優先で準備が進まなかった分、相当に慌ただしかったそうだが、「そんな中でもバスケットのことは常に頭にありました」と明かす。「携帯で昨シーズンの動画を入れて、何度も見直しました。A東京との試合も何度も見て、自分のプレー、チームのプレーを確認しました」

普段はそんなことはしないと言うから、よほど悔しかったのだろう。ただ負けただけでなく、自分に託された試合を落としたことが、彼に重く圧し掛かった。「終了のブザーをベンチで聞くのとコートの中で聞くのでは全然違いますし、あの瞬間は今も忘れていません。ガードとしてチームを勝たせられなかったことは反省でもあり悔しさでもあり、そして今のモチベーションにもなっています」

狩俣昌也

「大事な場面でコートに立っている選手でありたい」

セミファイナルでの敗戦は『陰鬱な夏』の幕開けでしかなかった。オフになると橋本と比江島が相次いで移籍。ビッグクラブである三河から、チームの顔である選手が2人も流出したことは大きな衝撃だった。

移籍を最初に知った時の率直な気持ちを「驚きましたし、寂しかったですね」と狩俣は明かす。「チームメートとしてもそうですけど、友達としてもすごく仲が良かったんです。特に橋本選手とは同じポイントガードとして、シーズン中にいろいろなことを話していたので」

それでも橋本の移籍は、ポイントガードの2番手だった狩俣にとってはチャンスでもある。「そうですね。チームメートとしても友達としても、いなくなった寂しさがありますが、それと同時にプレーヤーとして自分が成長できるチャンスだとも受け止めています」

新シーズンのポイントガードは狩俣と村上直、そして新加入の生原秀将の3人体制。まだ先発は決まっておらず、チームを作っていく中で序列を決める状況にあり。「そこはやりながらだと思います。ただ、ポジションとしてはライバルですけど、同じチームで勝ちを目指すのは一緒です。スタートは自分が、という気持ちは持っています。大事な場面でコートに立っている選手でありたいですから。でも優先するのはチームの勝ちで、そこはチームファーストが大事だと思っています」

狩俣昌也

「三河の新しいバスケット、新しい魅力を見せる」

世間は橋本と比江島の抜けた三河を過小評価するだろう。だからこそ、狩俣は「今シーズンのほうが勝ちたい気持ちは強いです」と言うし、それはチームが始動した今、仲間たちの様子からも感じるそうだ。「周りの不安な声も聞こえていると思いますし、2人が抜けたから勝てなかったと言われるのはみんな悔しいはずです。絶対にそうはしない、という気持ちは一人ひとりが持っています。もともとプロフェッショナルとして自立している選手が多いチームなので、そういう気持ちは感じています」

そして狩俣自身は……と尋ねると、「昨シーズンの悔しさがやっぱりあります」と、また話は同じところに戻った。「Bリーグになって2シーズン、同じところで負けました。どうしても僕たちの年にしたいという思いが強いです」

最後に狩俣はキャプテンとして、三河を代表して新シーズンの抱負をこう語る。「チームが変わって新しいシーホース三河が見せられるんじゃないかと思います。良いものは残しながら、三河の新しいバスケット、新しい魅力を見せられるように。シーズンを通してチームで成長しながら戦って、最後に勝ちたいです。皆さんも一緒に戦ってもらえたらうれしいです」

『陰鬱な夏』は終わり、新たなシーズンの幕が上がる。狩俣がキャプテンとして引っ張る新しいシーホース三河は、どんなバスケットを見せてくれるのだろうか。