女子日本代表

髙田真希や町田瑠唯の『リオ組』が不参加で、若いタレント揃いのチームに

女子のアジアカップが本日開幕する。日本代表は今日からインド、ニュージーランド、韓国とグループリーグの3試合を、いずれも日本時間16時から行い、グループ首位での準決勝進出を目指す。2位と3位のチームは30日に準決勝進出決定戦を行い、10月1日の休養日を挟んで2日に準決勝、2日に決勝が行われる。

東京オリンピックでは決勝に進出し、世界最強国のアメリカに敗れたものの銀メダルと大健闘した日本代表は、ほんのわずかな休養を挟んでこの大会に臨むが、チームは大きく様変わりしている。トム・ホーバスが男子日本代表のヘッドコーチへと転じ、これまでアシスタントコーチだった恩塚亨が女子のヘッドコーチに昇格。チームを熟知している指揮官ではあるが、選手の自主性や決断力を尊重した、アジリティを生かすバスケで戦うと明言しており、そのスタイルには変化がありそうだ。

選手の顔ぶれも変わった。東京オリンピックに参加した12人のうち、今回も引き続き代表招集されたのは林咲希、赤穂ひまわり、宮崎早織、オコエ桃仁花、東藤なな子の5人。3×3日本代表で東京オリンピックを戦った馬瓜ステファニーと山本麻衣、西岡里紗の3人に加えて、そのサポートメンバーだった永田萌絵も新たに5人制の代表に戻って来た。髙田真希や町田瑠唯、宮澤夕貴など2016年のリオ五輪からの主力選手が今回は休養となったことで、チームは大幅に若返った。それに伴い、それぞれが背負う責任も増す。

勝負強いシューターとしてオリンピックで大活躍した林は、今回初めてキャプテンに任命された。日本代表の生命線である3ポイントシュートの能力は実証済みだが、日本代表では2019年にデビューしたばかりで、所属するENEOSサンフラワーズでも中堅に差し掛かったところ。チーム最年長とはいえ26歳で、リーダーとして日本代表を引っ張るのは初めての経験となる。それでも恩塚コーチはキャプテンに任命した林に対して「気持ちの作り方、ポジティブな気持ちで自分自身とチームメートを常に良い状態にできる。お互いを高め合う言葉掛けのできるリーダーシップに期待しています」と信頼を寄せている。コート内外で林がその信頼に応えられるか、彼女自身にとってもチームにとっても大きな意義のある挑戦だ。

オリンピックでの宮崎早織は町田に続く2番手のポイントガードとして、自分が出る時はとにかくペースを上げて、アグレッシブに仕掛ける姿勢を求められた。それでも今大会ではメインのポイントガードとして、引き時は引くゲームコントロールも求められる。林と同様にENEOSでは同じガードに岡本彩也花がいて、宮崎は『考えるより感じろ』でチームに勢いを与える役割。今回、日本代表の司令塔として試合を支配できるかどうかは大きな挑戦となる。

女子日本代表

得点を期待したい東藤なな子、赤穂ひまわり、山本麻衣

得点面で期待したいのは赤穂ひまわりと東藤なな子。サイズがあって走れるオールラウンダーである赤穂は、オリンピックでは9.3得点を記録した。今回は倍増とは言わないまでも、ディフェンスとリバウンドで奮闘しつつ、オフェンスでも自ら仕掛ける積極性を求めたい。東藤はホーバスの下ではディフェンスを買われての出場となったが、今大会ではトヨタ紡織サンシャインラビッツで見せているような1対1のオフェンスの持ち味を発揮してほしい。

山本麻衣は3×3で小柄ながら抜群のシュート力で世界を驚かせた。その得点能力は5人制でも通用するはずで、3ポイントシュートもドライブで割って入っての2点シュートも決められる力を見せてもらいたい。それと同時に5人制のポイントガードとしての総合力も求められる。同じポジションの宮崎との切磋琢磨が良い結果をもたらすことに期待したい。

一方でディフェンス面では、インサイドの選手のステップアップが不可欠な状況だ。東京オリンピックではケガで出場を果たせなかった渡嘉敷来夢の穴を、結局は2歳年上の髙田真希が埋めた。だが今回は『日本の大黒柱』が不在で、インサイドの守備は大きな弱点になりかねない。オコエ桃仁花はオリンピックでは繋ぎの役割で、与えられたプレータイムの中で攻守に全力を尽くせばよかったが、今回は髙田が担っていた責任を担う必要がある。相手のエースとマッチアップして抑え込み、なおかつ簡単にファウルトラブルになることは許されない。相当なプレッシャーのかかる役割だが、だからこそ大きな成長の機会となる。

ここで期待したいもう一人の選手が馬瓜ステファニーだ。5人制以上にコンタクトの激しい3×3で世界のトップ選手を相手にフィジカルで当たり負けず、長い腕を使ったディフェンスで日本のゴール下を守ったステファニーは、トヨタ自動車でそうであるように5人制でも攻守のキーマンとなるタレントだ。同じく3×3日本代表として、体格で不利な状況でも粘りのディフェンスを見せた西岡里紗も、5人制でどれだけ活躍できるか楽しみだ。

若い選手ばかりで計算しづらい面はあるが、どの選手もポテンシャルは十分に持っている。そして何より、日本代表がここまでアジアカップ4連覇を果たす中では、常に若い選手の台頭があった。2013年には当時22歳の渡嘉敷来夢が大会を席巻する活躍でMVPを受賞しており、2015年大会ではその渡嘉敷が完全なエースへと成長したことに加え、本川紗奈生や山本千夏が活躍した。2017年には藤岡麻菜美が、2019年には本橋菜子と林咲希がブレイクし、優勝の原動力となっている。

日本代表はアジアカップ5連覇を目指す。その目標達成に期待するもはもちろんだが、その過程で若い選手たちが見せるであろう大きな成長にも期待したい。

アジアカップ2021 大会メンバー12名

3 馬瓜ステファニー(PF/182cm80kg/トヨタ自動車アンテロープス)
18 西岡里紗(C/186cm81kg/三菱電機コアラーズ)
20 東藤なな子(SG/174cm65kg/トヨタ紡織サンシャインラビッツ)
21 永田萌絵(PG/174cm65kg/トヨタ自動車アンテロープス)
23 山本麻衣(PG/165cm58kg/トヨタ自動車アンテロープス)
27 林咲希(SG/173cm67kg/ENEOSサンフラワーズ)
32 宮崎早織(PG/167cm54kg/ENEOSサンフラワーズ)
33 中田珠未(PF/183cm70kg/ENEOSサンフラワーズ)
41 根本葉瑠乃(SG/176cm65kg/三菱電機コアラーズ)
81 宮下希保(SF/179cm73kg/トヨタ自動車アンテロープス)
88 赤穂ひまわり(SG/185cm72kg/デンソーアイリス)
99 オコエ桃仁花(PF/182cm88kg/富士通レッドウェーブ)