テレンス・マン

敗れてもなお評価されたクリッパーズ、その戦いぶりを継続できるか

クリッパーズが優勝するには、カワイ・レナードとポール・ジョージが揃ってチームを引っ張る必要がある。カワイが右膝の前十字靭帯部分断裂のケガをしたことで新シーズンの優勝予想からは後退したが、昨シーズン最後の戦いぶりは希望を残すものだった。

カワイを欠いたクリッパーズがジャズを撃破したのは驚きだった。カンファレンスファイナルではサンズの勢いに押し切られたが、敗れてもなおその戦いぶりは評価されるものだった。ポール・ジョージが『バブル』のプレーオフでは見せられなかったリーダーシップを発揮し、ペイサーズ時代のような力強いプレーを取り戻した。ニコラ・バトゥームやレジー・ジャクソンの素晴らしい活躍もあったが、さらにインパクトの大きかったのがテレンス・マンのブレイクだった。

NBAキャリア2年目、24歳の彼はローテーションプレーヤーではあったものの、それまで重要な試合の勝敗を左右するような働きはなかった。それがレギュラーシーズン終盤になって自信を付け、互いに長所の潰し合いとなるプレーオフで『Xファクター』として大活躍。ジャズとの第6戦では、若い彼が39得点を挙げてシリーズに決着を付けた。

彼は3年目のさらなる飛躍に前向きで、オフシーズンもSNSを通じてワークアウトの様子をファンに伝えている。先日には地元のミルウォーキー州ローウェルで『Complete Player Camp』を開き、子供たちにバスケを教えた。

マンはニューヨークで生まれ育ったが、11歳でローウェルに移り住んだ。地元紙『THE SUN』の取材に対し、マンは「このコートで僕は成長した。友達や先輩たちに自分の力を見せてやりたい、という気持ちでプレーしていた。あの頃はまだNBAなんて意識せず、ただ勝ちたくてプレーしていたよ」と語る。彼にバスケを教えた指導者は数年前に亡くなったが、恩義は忘れていない。コービー・ブライアントやアレン・アイバーソンにあこがれる前、バスケの純粋ない楽しさを教えてくれた指導者に報いるため、彼は自分が育ったコートに戻って来る。

そこで彼はキャンプの名前と自分のプレースタイルの関連を「僕自身が『Complete Player』でありたいと考えているからなんだ。シュートもドライブもパスも、必要なことは何でもできる完璧な選手にね」と語っている。

実際、昨シーズンの彼はそのスタイルで頭角を現した。身長198cmの見た目よりもフィジカルが強くてスタミナもあり、攻守にエネルギッシュにプレーできる。シューティングガードだがリバウンドは平均3.6と、ビッグマンが待ち構えるインサイドに飛び込むことでボールを奪いに行く。シュートが得意な選手とは見られていなかったが、プレーオフでその印象を覆した。そして得意のディフェンスでは、ペリメーターでガードに自由を与えないスピード、ビッグマンのロールを塞ぐ力強さがある。

昨シーズン前半戦には、元気は良くても他の選手で替えの利く控えでしかなかったマンは、今ではクリッパーズの将来を担う重要なピースの一つになっている。「僕にすべてを教えてくれた選手」と懐いていたパトリック・ベバリーの放出は彼にとってショックだったようだが、それもまた彼のキャリアを開く一つの要素になりそうだ。

クリッパーズにはカワイ抜きでもプレーオフに行く力を持っているが、マンのような選手がステップアップすることで、チームはさらに骨太になる。カワイがシーズン終盤に復帰してプレーオフに間に合うのであれば、チャンスは大きく広がるはずだ。