「シーズンを通してこのメンバーで一緒にやれるのはエキサイティングだ」
NBAの2021-22シーズン開幕までまだ2カ月あるが、各チームのロスターは固まりつつある。現状の戦力から複数のメディアが発表しているパワーランキングの多くでトップに挙げられるのがネッツだ。昨シーズンのネッツは48勝24敗で東カンファレンスの2位となったが、カンファレンスセミファイナルで第7戦までもつれる激闘の末に敗退している。
ケビン・デュラントとカイリー・アービング、ジェームズ・ハーデンの『ビッグ3』を始めとする主力がほとんど残り、パティ・ミルズが新たに加わって優勝候補の筆頭となった。しかし、そこは「全員のコンディションが良好であれば」という但し書きが付く。どのチームも、長く激しいレギュラーシーズンを戦い抜いて、プレーオフで全員が何の問題も抱えていないことはあり得ない。
それでも『Sports Illustrated』の取材に応じたハーデンは「このままでいい。何かを変える必要はない」と断言する。
ハーデンは昨シーズンのネッツで最もケガに苦しんだ選手だ。レギュラーシーズン終盤にハムストリングを痛め、このケガを途中で再発させたことで欠場試合数が増え、カンファレンスセミファイナルでは強行出場したものの、急加速も急ブレーキも掛けられなかった。その状態でも最終的に優勝するバックスと競ったのだが、最後は『タフに戦い続ける』という点で競り負けた。
この時、ハーデンは敗退の悔しさをこう語っている。「僕は自分をケガに強い選手だと思っている。ここ何年かはポストシーズンでも自分のプレーができていた。ケガがなければ、と言いたいけど、これは言うべきではないね。良いコンディションを維持するのもバスケの戦いの一部だ。これからも成長していくしかない」
しかし、オリンピック出場を回避して新シーズンに備える今のハーデンは、コンディションとともに自信も取り戻している。「僕たちはただただ興奮している。そして集中しているよ。自分たちが何をやらないといけないのかは分かっている。最大のポイントが健康であることは間違いない。でも、シーズンを通してこのメンバーで一緒にやれるのはエキサイティングだ」
昨シーズンのネッツには個で戦わざるを得ない事情もあった。それがハーデンの獲得で、複数のローテーションプレーヤーをトレードで手放したことで、プレシーズンの準備がご破算になってしまった面もある。攻守のスタイルのベースを確立し、ケミストリーを構築するのはプレシーズンの作業だが、ネッツはそれをハーデン獲得後にやり直す必要があった。しかも昨シーズンは例年以上に過密日程で、主力選手に無理をさせない方針もあって、シーズン中にフルメンバーで戦う機会は極めて少なかった。
だが、『ビッグ3』だけでなく全員で開幕に向けた準備ができる今回は違う。強力な個の力はそのままキープしつつ、相互理解が進んでチームとして成熟するという伸びしろがある。それぞれが万全のコンディションを整えて開幕を迎えるのはもちろん、誰かが抜けた時に、その穴をチームでカバーする総合力も整備できる。チームとして成熟した上で、個々の高いスキルとバスケIQで試合中に起きる課題を解決していく。そうなればネッツは、昨シーズンのチームから大きくステップアップできるはずだ。