「世界No.1のチームだなと感じました」
東京オリンピックでの金メダル獲得を目標としたバスケットボール女子日本代表は『女王』アメリカとの決勝戦に臨んだ。
戦前の予想では必殺の3ポイントシュート、高速トランジションで世界を驚かせてきた日本にも付け入るスキはあると見られていた。しかし、インサイドを徹底的に攻められ、シューターも封じられた日本は75-90で敗れ、金メダルには手が届かなかった。
司令塔の町田瑠唯は「世界No.1のチームだなと感じました」と完敗を認めた。「予選の時よりもディフェンスでアジャストされました。高さもそうですけど、外角のシュート確率も高く、アグレッシブにプレッシャーをかけたんですけど、それでも決め切る強さを感じました」
日本はアメリカの高さに手を焼いたが、それはディフェンスだけでない。オフェンスでも脅威で合計12本のブロックショットを浴びた。日本は連携プレーで活路を見い出そうとしたが、長い腕が伸びてきて合わせのプレーも不発に終わり、日本が目指す高速トランジションもアメリカのほうが多く成功していた。
「自分よりもシューター陣のマークが厳しく、シューター陣が気持ちよく3ポイントシュートを打てていなかった印象です。相手がオールスイッチになっていたので、そこを崩すのに時間がかかりました。相手のシュートがなかなか落ちなかったので、自分たちのディフェンスからブレイクという形も出せなかったです」と町田は振り返る。
悔しい結果となったが、それでも多くの選手たちが笑顔を見せた。それは充実感と達成感があるからに他ならない。町田も「この舞台を楽しみ、やり切った気持ちから笑顔になりました。悔しさもあって複雑でしたが、でもメダルを獲ったんだなという気持ちもあって笑顔になりました」と語った。
「この12名でしかできないバスケットができた」
日本は準々決勝でベルギーを逆転で下し、ベスト8の壁を乗り越えたことで注目を浴びた。さらに準決勝でフランスを破ってメダルを確定させ、町田がオリンピック記録を更新する18アシストを挙げたことで、さらに女子バスケに注目が集まった。町田は言う。「男子バスケが盛り上がっていましたが、女子は結果を出さないと見てもらえないと分かっていました。決勝まで行けたことでいろいろな方に女子バスケを見てもらえて、知ってもらえて良い大会になりました」
女子サッカーや男子ラグビーがそうであったように、ジャイアントキリングを起こせば世間からの注目度は増す。だが、一番難しいのはその盛り上がりを単発で終わらせないことだ。町田も「見てくれる方々に勇気や元気を与えることができたら、また見てもらえると思う。世界で良い結果を残すしかない」と言う。
今回の準優勝で日本は追う立場から追われる立場となった。当然、スカウティングされる機会も増え、今まで以上に警戒されることになる。そして、アメリカとの差を埋める作業もしていかなければならないが、町田は「まだまだ自分たちはできそうだなという気持ちがあります」と、日本のバスケットに絶対の自信をのぞかせる。
「相手が大きいので個人のフィニッシュスキルも大事ですが、周りの合わせも大事になってくると思います。シュートを打つギリギリまで全員が合わせるとか、そういうところを徹底していけたらアメリカを違う形で崩せたんじゃないかと思います」
「一人ひとりがちゃんと自分の役割を分かっていて、その中でチームとして戦えました。この12名でしかできないバスケットができたんじゃないかと思います。トム(ホーバス)さんが金メダルを獲りますって言ったことに対して、周りの人は信じていなかったと思います。正直、渡嘉敷(来夢)さんがケガした時に取れるのかなって思ったんですけど、それを言い続けてくれて、自分たちもそれを信じてバスケットできたことが結果に繋がりました」
193cmの渡嘉敷がケガから復帰すれば、インサイドの負担は減り、ここが日本のアドバンテージへと変わる可能性もある。歴史を変えた女子バスケ日本代表にはこれからも大いに期待したい。