盾にも矛にもなるリバウンド
バスケットボール男子日本代表は沖縄アリーナで行われた国際強化試合3連戦を1勝2敗で終えた。ハンガリー戦ではラプターズの渡邊雄太が25得点を挙げ79-58と快勝したが、続くベルギー戦を70-73で落とし、最後のフィンランド戦も71-76で惜敗した。
フリオ・ラマスヘッドコーチは「常に我々の先にいて、リバウンドもウチよりも取っていた。ベルギーのほうが勝利に値する内容だった」、「フィジカルかつアグレッシブにディフェンスとリバウンドに力を注いでいて、フィンランドのほうがやりたいバスケットができていた」と、それぞれ敗戦後に語った。
これらの発言を言い換えれば、日本のやりたいバスケットができなかったということになる。では日本のやりたいバスケとはどんなモノか。それは速攻を重要視したトランジションバスケだとラマスヘッドコーチは言う。「我々のバスケットはアーリーオフェンスだったり、しっかり走ってスピードに乗った状態から生まれるシュートチャンスを生かして、相手の意表を突くスタイル」
敗れた2試合とも、速攻からの得点は決して多くなかった。さらに言えば、フィンランド戦では速攻を狙った際のミスが逆速攻に繋がるなど、強みにしたい部分が弱みとなる悪循環に陥っていた。速攻が繰り出し、イージーシュートを打つためには多少のギャンブルは必要だろう。だが、ワンマン速攻ではない限り、数的有利な状況に持ち込んだとしても簡単にスコアできていないのが現状であり、リスクが伴うことも頭の片隅に入れておかなければならない。
速攻を出すにはディフェンスリバウンドの確保が重要だが、ベルギー戦で1-15、フィンランド戦で6-16とオフェンスリバウンドで大きく差がついた。田中大貴が「リバウンドを一発で取れなかった状況が多くて、良い流れでオフェンスに入れなかった」と語ったように、このディフェンスリバウンドが簡単に取れないことも速攻が生まれない理由になっている。
サイズとフィジカルで劣る日本にとって、リバウンドは永遠の課題だ。ラマスヘッドコーチは「リバウンドを互角で取り合えるのが1番の理想」と語ったが、実際に唯一勝利したハンガリー戦では42-30で上回っている。
日本はマンツーマンとゾーンディフェンスを併用しているが、特にゾーンの際にオフェンスリバウンドを多く許している。これは人ではなくエリアを守るゾーンの性質上、ボックスアウトする相手を捕まえきれなかったり、そもそもボックスアウトする相手がおらずボールウォッチャーになってしまうことがその結果に繋がっている。また、ボールを振られて3ポイントシュートを多投され、ロングリバウンドが増えることも一つの理由だろう。だからこそ、どんな時でもボックスアウトをすることが必須となる。
渡邊も「ボックスアウトは当然やらなきゃいけない」と話し、ガード陣の協力も必要と訴えた。「相手が飛び込んでくるのに対して一人で身体をぶつけても、自分達の方が身体が弱く背もないので、上の選手たちと二人がかりで封じ込めにいくのも重要です。それこそラプターズではフレッド(バンブリード)とかカイル(ラウリー)がビッグマンを抑えてくれています。ビッグマンがゴール下で頑張っても取りきれない部分があるので、そこはガード陣などの上の選手が中に飛び込んでいって、一緒にボックスアウトすることが大事です」
帰化選手としてインサイドを主戦場とするギャビン・エドワーズも「チームとして改善しなければいけない点」にリバウンドを挙げつつ、何としても取りに行くという執着心の大切さを強調した。「オフェンスリバウンドは運が良ければ取れるとかではなく、集中して力を注がないといけない。オリンピックで対戦するのはより大きくて強い相手ばかり。取りに行くというマインドがまず大事で、自分が取れなくてもティップすればチームメートが取るチャンスに繋がる」
オリンピック前最後の国際強化試合埼玉大会では、いよいよ八村塁と馬場雄大が合流し、フルメンバーが揃う。ラマスヘッドコーチは起用法とともに、2人への期待をこのように語った。「塁はシュートもペネトレイトもポストアップもできる選手で、4番と5番で使う。雄大はペネトレイトと3ポイントシュートが武器なので、2番で起用しようと思う。2人が合流することでリバウンド力は上がる。ギャビン、雄太、塁の3人でトライアングルポジションを取ってリバウンドを取りにいくのが1番の理想」
今回の埼玉大会で課題がより明確になった日本。八村と馬場が加わることで純粋にサイズは増すが、それ以上の効果を発揮するケミストリーを構築し、世界に挑んでほしい。