3x3男子日本代表

文・写真=小永吉陽子

サイズのなさを組織力で補い決勝トーナメントへ

「全試合ノックアウト勝利(21点先取)で決勝トーナメントに進めたことはうれしいですが、(杉本)天昇がケガしてしまい、すごく複雑な気持ちです。それでも彼らは日に日に成長しているので、決勝トーナメントでもさらにうまくなってくれると思います」(長谷川誠コーチ)

ネパール、ヨルダン、カタール、シリアに対してすべてノックアウト勝利を飾り、予選プールC組を首位通過した日本(モルディブ戦は相手が棄権したために不戦勝)。長谷川コーチは、チームの戦いに手応えを感じると同時に、負傷者が出たことによる複雑な気持ちを明かした。

ヤマ場となったのは予選2日目。日本よりサイズが上回るカタールとシリアとの対戦だった。2試合ともに序盤は一人ひとりが確実に行くことを意識しすぎてか、ボールを持ちすぎて迷いが見られた。しかし、相手の出方を見極められるようになってからは、オフェンスでは速いパス回しからノーマークを何度も作っては、松脇圭志と荒川颯を主体に2点シュートを狙い、ディフェンスでは相手のインサイドに対して宮越康槙が身体をぶつけて相手の体力を消耗させる日本の持ち味が出せるようになり、カタールには22-15、シリアには21-13、最終的には突き放す形で2連勝をもぎ取った。

だが残念なことに、カタール戦の中盤、2点シュートを決めてバスケット・カウントを奪った杉本天昇が相手との接触によって左足首を負傷し、ゲーム続行が不可能になるアクシデントが起きた。続くシリア戦では杉本を除いて3人で戦わなければならず、体力面での不安があったが、逆に終盤になればなるほど足を動かすタフな戦いぶりに、長谷川コーチは『チーム力』の成長を感じていたのだ。
3x3男子日本代表

アジア競技大会がU23世代の成長の場に

アジア競技大会に初採用された3×3は、正式種目となる東京オリンピックとその後の発展を掲げ、若手育成の意味を込めてU23の年齢制限の下で開催が決定した競技だ。今大会の選出にあたっては、候補選手の登録が4月末だった関係から「リーグ開催中だったBリーグ勢には大々的な打診ができない状態で、日本大と拓殖大の積極的な協力によってメンバーを選考した」(長谷川コーチ)という背景がある。

それぞれが大学のトーナメント戦や新人戦を兼ねた中での強化となったが、春先はアジアカップやワールドカップに出場するメンバーとの合同練習、7月には世界一のレベルを誇るセルビアを含めたヨーロッパ遠征を行い、FIBA U23ネイションズリーグで実戦の場を経て大会に臨んだ。

今大会、唯一のBリーグから代表に名を連ねていた保岡龍斗(秋田ノーザンハピネッツ)が、体調不良のために出場が不可能となったが、エントリー変更での代表入りとなった宮越は、すでに7月末のネイションズリーグでアジア競技大会メンバーとチームを結成していたことから、コンビネーションの面で問題はなかった。チームは今「ヨーロッパ遠征での成果が出てきて、サイズが大きな選手との戦い方がだんだん分かってきたところ」(荒川)である。

3x3男子日本代表

松脇「どんどん上のメダルを狙っていきたい」

杉本の負傷の状態および、試合出場についてはドクターの診断待ちであるが、現状では厳しい状況と言わざるを得ない。それでも長谷川コーチは「ケガやアクシデントにより、3人で戦わなければならないことが想定されるのも3×3という競技。決勝トーナメントでも日本らしく、足を動かして、2ポイントを狙うスタイルで勝ちに行く。選手たちは苦しい状況の中でもっと成長してくれると思う」と期待を込めた。

また、日本のエースである松脇は決勝トーナメントに向けて、さらなる『チーム力』を強調している。そこには、土浦日大高、日本大での先輩後輩としてともに戦ってきた杉本へのエールも込められていた。

「シリア戦は『天昇のためにも絶対に勝とう』とみんなで戦いました。3×3は一人欠けると交代がいないし、天昇が抜けると得点源が一人いなくなってしまうので大変でしたが、3人しかいないからこそ、早く(21点先取して)試合を終わらせようと、積極的にがむしゃらにやって勝つことができました。決勝トーナメントに天昇が出場できればうれしいし、もし出られなくてもいつも以上に頑張るので、みんなでどんどん上のメダルを狙っていきたい」

26日の準々決勝はタイとの対戦が決定。これを勝ち抜いていけば、決勝まで一日3試合こなすハードなスケジュールが待ち受ける。しかも、サイズもフィジカルも増す相手との決戦となるが、成長の階段をのぼる若き日本は全員でメダルを狙いに行く。

3×3男子日本代表選手
宮越康槙(F/189cm/拓殖大4年)
松脇圭志(G/184cm/日本大3年)
荒川颯(G/182cm/拓殖大3年)
杉本天昇(G/185cm/日本大2年)

予選プールC 最終順位
1位:日本(5勝)
2位:カタール(4勝1敗)
3位:シリア(3勝2敗)
4位:ネパール(2勝3敗)
5位:ヨルダン(1勝4敗)
棄権:モルディブ(5敗)