バスケットボール男子代表は不祥事を受けようやく必勝態勢に「8人で勝ちに行く」

2018/08/24
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男子日本代表

文=小永吉陽子 写真=小永吉陽子、Getty Images

不祥事の4人が帰国、8人で戦った香港戦は辛勝

ジャカルタ(インドネシア)で開催中のアジア競技大会にて起きた男子代表4選手(永吉佑也、橋本拓哉、佐藤卓磨、今村佳太)による買春行為は、アジア競技大会全体、そして日本のスポーツ界を揺るがす不祥事となった。日本オリンピック委員会(JOC)から日本選手団の資格を剥奪された4選手は8月20日に強制帰国を命じられ、JBA(日本バスケットボール協会)の三屋裕子会長は帰国直後、即座に4人を登壇させて謝罪会見を開いた。

恥をさらしながらも事実を明らかにして猛省を促すことは、4選手のみならず、バスケットボール界全体として競技への取り組み意識を改め、再発を防止する意味でもこれほどの薬はなかった。

そして不祥事が発覚して最初の試合となった22日の香港戦、相手はメンバーから言っても格下だったが、激戦の末に88-82で勝利した。

8人で戦っているとはいえ、試合間隔が5日も空いて連戦ではないことからも、体力面ではそこまでの心配はなかった。それでも苦戦してしまった原因は、4選手が抜けて普段とは違うポジションを兼ねたことでディフェンスローテーションが乱れ、簡単なミスが多発したことにある。そして何よりも辻直人が語ったように「頭では集中しようと思っても、いつもとは全く違う状況で臨んでしまったので、簡単なミスが出て、空回りして最悪の内容」というメンタル面の影響があまりにも大きかった。

大会はまだまだ続く。今、日本代表がやるべきことは、一丸体制となって前に進むことである。今大会、フリオ・ラマスに代わって指揮を任されたエルマン・マンドーレは試合後、「心配と迷惑をかけて申し訳ありませんでした。この勝利によって少しでも悲しみが薄められれば。この勝利を喜びたい」と語った。相当な責任感とプレッシャーの中での試合だったのだろう。そう語る目からは大粒の涙が止まらなかった。

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選手の自覚欠如だけでなく、強化体制を作る側にも問題

そもそも、どうしてこのような事態になってしまったのだろうか。最も問われるべきは、アジア競技大会というアジア最大規模の大会中に、日本代表としての行動が求められる中で起きたことだ。さらに言えば、バスケットボールの場合、東京オリンピックの開催枠が確約されていない中で、バスケファミリーが一丸となってプロリーグを立ち上げ、ワールドカップ予選を戦っている必勝態勢の最中に、前代未聞の不祥事が起きてしまった。このことが最大の疑問にして、愚かなことなのである。

そこで、さらに浮かび上がる疑問は、今回の男子アジア競技大会をJBAがどう位置付けして臨んでいたかが不明瞭だったことだ。女子の場合は、9月のワールドカップを戦うA代表と、若手強化を図りながらアジア競技大会に挑むB代表の2チーム体制となり、どちらも目指すは「優勝」という明確な目標の下で強化が進められてきた。しかし、男子は大会直前までメンバーが決まらず、その計画性が見えてこなかった。

JBA技術委員長の東野智弥は7月のワールドカップ予選で1次ラウンドを突破した時に「今はアンダーカテゴリーを含めてすべての試合が東京オリンピックに向けたアピールの場で、常に成長が問われている。アジア競技大会もとても大切で、できる限りベストメンバーで臨みたい」と発言しており、ラマスヘッドコーチが采配する予定でエントリーしていた。しかしその後は一転、太田敦也と辻直人、今大会キャプテンを任された2選手以外は国際経験の浅い選手が主体となった選考となり、指揮官も変更された。

その理由を確認したかったが、メンバー選考が難航していたからか、代表活動の取材は不可能で一切の情報が遮断された。そんな中で、8月12日にJBA公式サイトに「アジア競技大会は勝っても世界へつながる大会ではないため、男女代表は若手を主とした編成で挑む。男子代表は9月のワールドカップ予選が迫っており、そのための強化が最優先」との方針を示す記事が出た。大会直前のことだ。
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この大会を本気で勝ちに行っていたのか

土壇場まで何も決まらなかった背景には、アジア競技大会のお粗末な運営も一因にある。当初は18日の開会式以後に試合日程が組まれていたが、バスケの場合はスケジュールが二転三転して開会式より前の14日開幕となり、試合間隔が大幅に空く変則日程にどこの国も困惑していた。そうした状況からコンディション維持が難しくなったため、主力選手を9月のワールドカップ予選に万全な体制で臨ませる方針に急遽変更したことも、7月のジョーンズカップで成長した選手を招集したことも、選手層の底上げという点では理解できよう。ただ、ほぼぶっつけ本番のメンバー構成で、大会を戦い抜く目標設定が見えない曖昧さの中で挑んでいたことは否めない。

というのも、不祥事を起こした4選手が会見で反省していた「認識が甘かった」「自覚がなかった」という言葉が示すように、彼らが起こした言動を見ると、とてもではないがこの大会を本気で勝ちに行っていたとは思えないし、必勝態勢のチーム作りができていなかったからこそ、今回のような事件が起きたのではないだろうか。今大会は5人制と3人制の男女4チームが出場しているにもかかわらず、現地には統括をするJBA関係者が不在で、不祥事が起きてから強化担当が数人現地に飛んで来ている。アジア競技大会に臨む姿勢からして甘かったと言わざるを得ない。

ただ、だからといって、このような不祥事が起きるとは誰も思っていなかった。それでも起きてしまったのだから、三屋会長が会見で嘆いたように、選手の自覚欠如の向上面から教育していかなければならない。東野技術委員長が掲げる「今は日本が一丸となり、すべてがアピールの場」という意志は、全バスケファミリーに伝わっていなかったし、指揮も執れていなかったことになる。ここから戒めて再出発するしかない。

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信頼を取り戻すにためも、8人で戦い抜いて勝ちに行く

不祥事の後、チームは一つになっている。「試合ができることに感謝して戦う」(辻)、「信頼を取り戻すためにも一生懸命に戦うだけ」(張本天傑)との思いで、選手たちは残りの試合を戦う決意だ。そしてマンドーレヘッドコーチ代行はあらためて今大会への誓いを立てた。

「8人で戦うとローテーションは難しいところはある。だからといって次の試合に勝てるか分かりませんではなく、勝ちにいきます。我々はこの8人の選手とスタッフで戦い抜いてみせます。絶対にこの大会を戦い抜いてやろう、日本の旗を高み置きにいこう、良い結果を残そうと、選手とスタッフで誓いました。日本代表として、国旗を胸に掲げることはどれだけ大切なのかは選手たちに常に伝えています。それだけ私たちが背負っているものは大きい。常に見られていることを自覚しなければならない」

日本は2勝1敗でグループラウンドを終了。グループ上位2位までが進出できる8強での決勝トーナメントに進出できるかは、25日のチャイニーズ・タイペイvsカタール戦の結果を待って決まるが、得失点差からいって2位以内に入ることは濃厚だ。8人で戦い抜くと決めたアジア競技大会は、遅まきながらもようやく必勝態勢で動き出した。