川崎ブレイブサンダース

現実をありのままに写すドキュメンタリーの醍醐味

6月25日から川崎ブレイサンダースの2020-21シーズンの戦いぶりを描いた公式ドキュメンタリー映画『OVER TIME 2020-21 SEASON -葛藤と、歓喜と、感謝と。』が神奈川県内の8つの劇場で公開されている。

川崎のドキュメンタリー映像『OVER TIME』は、2018-19シーズン終了後に長編作品として劇場公開され、2019-20シーズンは短編がYoutubeで無料公開された。そして2020-21シーズンは短編がYouTubeで配信され、新たな映像を追加して再編集した長編が2年ぶりの劇場公開となっている。

『OVER TIME』では、長いシーズンのチームの歩みを1時間半に凝縮している。7カ月以上に渡る長丁場の戦いにおいて、チームにどんな浮き沈みがあり、選手たちはどんな思いをその時々で抱えながらコートに立ち続けていたのか。興味深い内容となっている。

YouTubeでの短編版でもロッカールームの様子が頻繁に登場する。特に印象深いのは試合前、ハーフタイム、そして試合後の佐藤賢次ヘッドコーチのスピーチであり、その時々のチーム状態、好不調の背景に何があったのかなど、ナレーションでの補足がなくても容易に理解できる。それは視点を変えれば、指揮官がいかに非凡なコミュニケーション能力を持っているかを示している。

また、今オフには長年チームを支えてきた看板選手、辻直人が広島ドラゴンフライズへと移籍した。ファンにとっては大きな衝撃だったが、彼が東芝時代から9年間過ごした愛着あるチームのラストシーズンをどんな思いで戦っていたのかを知ることができるのは貴重だ。

今回の大きな特徴は、これ以上ない勝利と敗北の両方が映されているところ。Bリーグ開幕後では初のタイトルとなる天皇杯制覇は作品屈指の名場面である。ただ、シーズン終盤に右肩上がりで調子を上げ優勝候補の声が高まる中、チャンピオンシップのセミファイナルで宇都宮ブレックスに敗戦。再びリーグ制覇を逃した絶望の姿は、天皇杯の歓喜を見ているからの対比でより大きなインパクトとなり、現実をありのままに写すドキュメンタリーの醍醐味を感じられる。

そして敗退直後の指揮官は、悔しい思いで一杯の中でも「感謝しかないです」と語る。さらには後日あらためてチーム全員で集まる場を作り、再び感謝を強調した。そこには佐藤の信念、川崎というクラブのアイデンティティが凝縮されており、多くの人が心を揺さぶられるはずだ。

ファンはこの作品を見て川崎の戦いの軌跡をより深く知ることで、新シーズンの応援をより楽しむことができる。また、バスケットボールファンにとっても激闘の裏側を知ることのできる貴重な機会だ。

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