カワイ・レナード

同じような状況で過去にスパーズと関係悪化、退団へ

カワイ・レナードはジャズとのカンファレンスセミファイナル第4戦を最後に戦線離脱した。31得点でクリッパーズを勝利に導いたこの試合中に右膝を気にする素振りを見せており、会見でこのことを問われると「問題ない」とだけ答えていたが、実際は前十字靭帯の部分損傷の可能性があるとされる。ただ、チームはケガの詳細について発表していない。

チームはカワイ不在をよく埋めている。ポール・ジョージが得点面でも精神面でもチームを引っ張り、レジー・ジャクソンとテレンス・マンは大舞台でステップアップを遂げ、今シーズンはプレーに波のあったパトリック・ベバリーも調子を上げている。カワイの復帰を待ちながらよく戦ってきたが、それでも今のサンズは間違いなく強敵で、チームは1勝3敗と追い詰められている。

その状況で『UNDISPUTED』は、「信頼できる情報筋の話」として、カワイの膝は手術が必要でプレーできる状態ではないこと、またケガをした当初に軽傷と誤診したメディカルスタッフにカワイが不信感を抱いていると報じた。

これが事実ならクリッパーズにとっては大きな問題だ。カワイがルーキーイヤーから7シーズンを過ごしたスパーズを離れた理由が、まさにこのことだからだ。2017年のカンファレンスファイナルでウォリアーズと対戦した際、カワイはシュートを放った直後に距離を詰めて来たザザ・パチューリアの足に着地してしまい、もともと痛めていた左足首を悪化させた。

エースを失ったチームはここで敗れたのだが、その先に起きるトラブルは誰にも想像できなかった。翌2017-18シーズンには9試合にしか出場せず、ケガのリハビリ方法を巡ってチームのメディカルスタッフと対立。レナードの『取り巻き』が出場を拒んだという噂もあった。スパーズはスーパーマックス契約を提示し、グレッグ・ポポビッチが直接対話に乗り出して関係回復を目指したが、カワイは退団の決意を固めた。ポポビッチが最終的には折れ、この時期から頻発したスター選手のトレード要求を「リーグにとってネガティブなこと」としつつも、カワイについては「自分の人生において彼が希望することを尊重するし、彼を支持する」と移籍を認めた。2018年オフにカワイはラプターズへ。そのシーズンにラプターズがNBA優勝を果たす、まさに『リーグの勢力図を塗り替える移籍』となった。

優勝争いの正念場でのケガは間違いなくネガティブな出来事で、カワイにとってもチームにとっても大きなストレスとなる。そしてケガをした選手の扱いをチームが間違えるようだと、関係はあっという間に破綻しかねない。大きなケガを見落としていたり、プレーさせたいがために軽傷として扱うようであれば、カワイのように健康管理を重視する選手の不信感を招く。

それでも、現状でカワイがメディカルスタッフをどう思っているかは別として、チームとは良い関係を維持しているように思える。ホームで行われた直近の2試合、ステイプルズ・センターのVIPルームには家族とともにチームを応援するカワイの姿があり、練習場やロッカールームでチームメートにアドバイスを送り。ヘッドコーチのタロン・ルーもカワイのその姿勢を称賛している。

カワイには今オフにフリーエージェントになる権利がある。クリッパーズ残留が当確と見られているが、これが揺らぐような事態はクリッパーズにとっては絶対に避けたい。妙な噂をかき消すにはチームが勝つことが一番。少なくとも、それで動揺するようなことがあってはならない。