Bクラブのキーマンに聞く
Bリーグ開幕が迫ってきた。日本のバスケットボール界が大きく変わろうとしている今、各クラブはどんな状況にあるのだろうか。それぞれのクラブが置かれた『現在』と『未来』を、クラブのキーマンに語ってもらおう。
取材・文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

栃木という規模、東京からの距離感はかなり良い

──栃木のファンは熱いと言われますが、そんなファンについて教えてください。

鎌田 今年で丸9年になりましたけど、初年度から応援してくれている人もいれば、新たにどんどん応援してくれる人もいます。本当にチームのことを愛してくれて、応援もアウェーまで駆け付けてくれたり。選手たちの力になっていますし、私たちスタッフもファンの方々のために日本一になりたいと思っています。ファンの方々も含めて、一つのチームの戦力だと見ています。

──栃木のファンの特性に合わせた演出や運営はありますか?

鎌田 何と言ってもブレックスファンの強みは「声」だと思っています。初めて観戦に来られた方でも、ファンの声援に引っ張られる形で声を出したり、立ち上がったり、拍手したりできる雰囲気ができていると思います。また、アウェーゲームでもホームさながらの声援で、選手を後押ししてくれます。ブレックスのホームゲームは、ファンの方々と選手、スタッフで一緒に作り上げている感があります。

──栃木は決して大都市ではありません。言ってしまえば田舎です。地方に本拠地を置くプロスポーツクラブとして、小さく成功させることはサッカーのJリーグではいくつも例があります。しかし、日本一を本気で目指せるチームとなると、あまり例がない。この栃木でトップを狙う勝算はどんなところにありますか?

鎌田 そこは考え方です。私はチームが栃木にあって本当に良かったと思っているんです。大都市になればなるほど娯楽が溢れています。それで言うと、栃木の規模、東京からの距離感はかなり良いです。リンク栃木ブレックスが試合をして勝てば、地元のメディアが取り上げてくれます。チームの活動が県民の皆さんに伝えられる状況にあるということです。これが大きな都市になればなるほど、様々な娯楽やメディアがあって、扱いはどうしても小さくなります。それが我々が栃木県を本拠地にするメリットの一つですね。

──今はいいとして、いずれ大きくなってきた時に物足りなくなるということは?

鎌田 今のバスケ界で平均5000人を集めるクラブはないですよね。栃木県には200万人近い人口があって、我々が集めようとしている観客はその1%にも満たないわけですから、しっかりアプローチできればファンを増やすことは可能です。もちろん、ミニバスや中学高校の競技者数で言えば大都市よりずっと少ないかもしれないですが、今の環境でファンを増やすことにちゃんと力を注げば、やれると思っています。

──ただ、ローカルの枠を押さえつつも全国区の人気を獲得したいという気持ちはお持ちですよね?

鎌田 もちろんです。栃木県のファンとしても、地元チームが全国区のメディアに出ているとなれば誇りに思ってもらえるでしょうし。そこはどんどん出ていかなきゃならないと思います。

──Bリーグが始まるこのタイミングで、『バスケット・カウント』のようなメディアに求めることは何かありますか?

鎌田 チームごとに特色があるし、選手にもいろんな選手がいます。そういう魅力をどんどん取材して、発信してもらえるとありがたいです。バスケットボールの楽しみかたも、ただ見ているだけより、中身が分かっていればより楽しくなります。専門メディアにはそういったところを深堀りして、普通に見ているだけでは分からないようなことを発信してもらえると、バスケットボールの発展に力を発揮してもらえるんじゃないかと思います。

──最後に、代表が考える『リンク栃木ブレックスの未来像』を教えてください。

鎌田 Bリーグができるこのタイミングは非常に重要だと思っています。ここでどれだけトップに躍り出ることができるか。これはこれからの経営に直結してくると思います。やはりここでしっかり存在感を出して、今シーズンはもちろん優勝を目標に置いていますが、そこで日本を代表するチームになりたい。今後はアジアとの連携も出てくるでしょう。そういったところにも名前を出せるようなチームにしていきたいです。

取材を行ったのは小山市の県南体育館。「白鷗大のセレクションもここでやったんですよね」と鎌田代表は昔を思い出して笑顔を浮かべた。