評論家はラプターズを推すも、ペイサーズは大きな可能性を秘めている。
プレーオフを盛り上げる「アップセット」(番狂わせ)の有力候補として、西カンファレンスからはブレイザーズを挙げた。では、東カンファレンスで期待できるチームはどこだろう?
本命は東カンファレンス1位でプレーオフに進出した昨シーズンのファイナリスト、キャバリアーズ。対抗は2位に躍進したラプターズと考えるのが順当だ。そんな東カンファレンスで「大穴」に推したいのは、そのラプターズと対戦するペイサーズだ。
2014年8月、ポール・ジョージはアメリカ代表でのエキシビジョンゲーム中に右足を骨折した。その痛々しい姿は、記憶に新しい。
選手生命を脅かすほどの重傷を負いながらも、長く辛いリハビリに心折れることなく耐え、昨年4月5日のヒート戦で復帰。ショッキングなシーンが世界に発信されてから実に8カ月というスピード復帰だった。
昨シーズンはわずか6試合の出場にとどまったが、レギュラーシーズン中の復帰すら見通しが立っていなかったのだから、驚きだったというのが正直な感想だ。
そんなジョージが2015-16シーズンに完全復活。キャリアハイの1試合平均23.1得点という成績を残すとともに、東カンファレンス7位でペイサーズを2年ぶりのプレーオフ進出に導いた。
ペイサーズは、2シーズン前の時点ではレブロン・ジェームズ、ドゥエイン・ウェイド、クリス・ボッシュという『スリー・キングス』を擁したヒートに対抗できるだけの力を持った、東トップクラスのチームだった。
ジョージのケガというアクシデントもあったが、エースの完治を見越した球団社長のラリー・バードは、昨年のオフ、チームのオフェンス力を高めるため、サイズではなく機動力に優れた選手によるチーム作りを明言。ウォリアーズに代表される、いわゆる『スモール・ラインナップ』だ。
エースのジョージは開幕当初、慣れないパワーフォワードとしてのプレーに戸惑っていたが、新人のマイルズ・ターナーが急成長したことで慣れ親しんだスモールフォワードに戻ると本領を発揮。自己最多となる平均得点を稼ぎ、ペイサーズに新たな可能性を示した。
1回戦の第1戦を翌日に控え、選手、チームのモチベーションを高めるためなのか、ペイサーズ公式Twitterアカウントでは、優勝リングのデザインらしきものを公開した。
?? 2016 NBA Champion @Pacers? ?? #ThisIsWhyWePlay https://t.co/hkEK6z9fvN
— NBA (@NBA) April 16, 2016
気が早過ぎると言うべきだが、それほど士気を高める必要がある相手ということだ。
ラプターズは、カイル・ラウリー、デマー・デローザンというダブル・エースのプレーメーク力と得点力に加え、スパーズ(92.9)、ジャズ(95.9)に次いで平均失点(98.2)が少ない守備に優れたチーム。サポーティングキャストの陣容も層が厚く、ルイス・スコラ、デマーレ・キャロル、コーリー・ジョセフという一芸に秀でた「職人」タイプが揃っているため、苦戦は免れないだろう。
『ESPN』では専属ライター21人による勝敗予想を公開しているが、ペイサーズの勝利を予想したのはわずか1人。ただ、21人全員が最低でも第5戦まではかかるとみているため、ペイサーズに勝機がないと見られているわけではない。
アップセットを実行する上で必要なのは、やはりジョージの活躍だ。レギュラーシーズンのラプターズとの対戦では平均16.3得点、フィールドゴール30.8%に抑えられた。だが、エースの名にふさわしいパフォーマンスを披露し、チームをシリーズ突破に導いた時こそ、真の意味での完全復活と言えるだろう。