接戦で終盤にもつれれば、両チームの『顔』の一騎打ちに
素晴らしいパフォーマンスで西カンファレンス2位へと躍進したサンズですが、よりにもよってディフェンディングチャンピオンのレイカーズとファーストラウンドを戦うことになりました。レイカーズはシーズン後半にケガ人が多く、まだコンディション面に不安はあるものの、ウォリアーズとのプレーイン・トーナメントでは高い集中力を見せ付けただけに、第2シードと第7シードの対戦とは思えない激しいシリーズになることが予想されます。
これまでレギュラーシーズンで好成績を残してもプレーオフを勝ち残れなかったクリス・ポールと、プレーオフになると一段階も二段階もギアを上げ、ここ10年で9回もNBAファイナルに進んだレブロン・ジェームスが、初めてプレーオフで顔を合わせます。この両者の対比はそのまま両チームの対比にもなってきます。サンズはシーズン通りのプレーができるかがキーポイントになり、プレーオフになると対戦相手の特徴に応じた大胆な対策を打つレイカーズに、どのような対応を見せるかが注目されます。
通常の戦い方で大きな差が出そうなのは、アンソニー・デイビスとアンドレ・ドラモンドを擁するレイカーズがビッグマンのパワープレーで押し切ることですが、優れたウイングディフェンダーを多く揃えるサンズとしても十分に対策を講じてくるでしょう。特にシュート能力が低いドラモンドはポジションさえ取らせなければ怖さが半減します。ドラモンドがレブロンと一緒にプレーしたのはわずか5試合のみと、レイカーズが想定通りにビッグマンの優位性を生かせる保証はありません。
レイカーズの指揮官、フランク・ボーゲルは昨シーズンのプレーオフで、相手に合わせたラインナップ構成を採用し、レブロンとデイビスの優位性で勝ってきただけに、ビッグマンで押し切れないと判断したら、ウイングの多いサンズに合わせてスモールラインナップに移行することが予想されます。サンズはスターパワーに屈することなく落ち着いてプレーできれば、レイカーズから自分たちに合わせてくれるはずです。
デビン・ブッカーを中心にしたサンズのオフェンスは、全員が流動的にポジションを変更し、リーグ3位のアシスト数を誇る連携から、リーグ2位のフィールドゴール成功率と堅実なシュートチョイスが際立ちます。ベテランチームのような安定感を誇りますが、ブッカーだけでなくディアンドレ・エイトンやミカル・ブリッジスなどプレーオフ未経験の若手が多く、大舞台に動じることなく安定感を発揮しなければいけません。
ディフェンス面では何とかしてレブロンのリズムを乱す必要がありますが、ジェイ・クラウダーやトーリー・クレッグなど優れたディフェンダーも多く揃えており、一方的にやられることはないでしょう。レイカーズの冷静なパス回しにもスピードとローテーションディフェンスで対応でき、過度にレブロンへのカバーは増やさず、リスクを最小限に抑えたディフェンスをすべきです。
そもそもサンズは爆発力で圧倒するタイプのチームではなく、堅実なプレー選択で安定感のある試合運びをして、ワンポゼッションの正確性で上回る戦い方をするチームです。そのためディフェンス主体で相手に合わせてくるレイカーズとは、試合開始から終了まで接戦が続く展開が多くなりそうです。
そして、接戦のまま終盤にもつれれば、レブロンとクリス・ポールの勝負強さが勝敗を分けることになります。
スクリーンを使って抜け出し、ディフェンスの動きを見ながら正確なミドルシュートを決めていくクリス・ポールのプレーには、レイカーズはデイビスを中心にスピードで対抗できるメンバーを並べることで、スイッチとカバーリングの早さで対抗するでしょう。クリス・ポールの判断の早さが勝つか、レイカーズのスピードが勝つかの勝負になってきますが、『ポイント・ゴッド』の判断力を上回るのは簡単ではありません。
強さも速さも兼ね備えるレブロンは、最も倒しやすい相手へのスイッチを誘導し、自分に有利なシチュエーションを作り、突破力と大きなパスでディフェンスを崩してきます。サンズで狙われそうなのはポストアップしてブッカーをパワーで押し切るか、エイトンとのスピードで振り切るかです。いずれにしてもサンズはダブルチームを使ってレブロンにボールを手放すよう仕向けたいのですが、ゴール下のデイビスだけは絶対にフリーにするわけにいかず、仕掛ける方法も限定されます。
両者はそれぞれの得意なパターンに持ち込めば、ディフェンスが仕掛けてきても関係なく高確率で決めることができます。先にミスしたほうが負ける、緊張感に溢れた終盤の勝負か毎試合のように展開される、ヒリヒリしたシリーズになりそうです。