両チームが持ち味を発揮、たった1試合で終わるのがもったいない試合に
レブロン・ジェームズとステフィン・カリー。3年前までNBAファイナルで顔を合わせ続けた2大プレイヤーが、まさかのプレーイン・トーナメントという舞台で対決した試合は、チャンピオンリングを手にした両チームらしいチーム戦術、そして理不尽なまでの個人技が入り混じり、まるでファイナルのようなハイレベルな攻防が繰り広げられました。
アンソニー・デイビスとアンドレ・ドラモンドのツインタワーのレイカーズに、サイズでは歯が立たないウォリアーズでしたが、豊富な運動量と的確なローテーションを併せ持ったチームディフェンスで驚くほどにインサイドを封じ込めました。ゴール下では複数人で囲い込み、ボールを奪い取ると即座にオフェンスに移行するウォリアーズのリズムで試合は進んでいきました。
レイカーズは当然のようにカリーを徹底マークしますが、ウォリアーズはこれを逆手に取るように次々にパスで展開していきます。前半だけで10本の3ポイントシュートを決めましたが、そのうちカリーが決めたのは3本だけと、見事な展開力を発揮。レイカーズに的を絞らせずに出場した8人全員が得点しました。スピードと運動量で高さに対抗した前半は、かつての『王朝』時代のように完璧なパフォーマンスを見せました。
レイカーズはレブロンとデイビスのコンディションが明らかに良くなく、2人でフィールドゴール19本中3本しか決まりません。チームとして機能しなかったものの、ベンチから出てきたアレックス・カルーソが動き回る相手ディフェンスの穴を確実に見つけて12点を奪っており、ウォリアーズのプレーに慣れつつ、対応策を見つけていった前半でした。
そして後半、レイカーズディフェンスは起点となっているカリーとドレイモンド・グリーンのパスを読み、後半だけで2人から10ものターンオーバーを誘発しました。ウォリアーズの連携を断つことで徐々に追い詰め、第4クォーターに入って逆転に成功します。
追い付かれたウォリアーズでしたが、厳しいマークがあっても関係なく3ポイントシュート3本すべてを成功させたカリーと、レイカーズの高いブロックに正面から飛び込んで決めたアンドリュー・ウィギンズの2人だけで後半は34得点を奪いました。チーム全体で得点した前半とは打って変わり、個人で突破していくオプションを発揮し、レイカーズの勢いに引くことなく食い下がります。
一方のレイカーズも前半に沈黙していたレブロンとデイビスの2人で36得点を奪い、こちらもエースの力でウォリアーズのディフェンスを攻略します。特にデイビスは後半は1回もベンチに下がることなく、シーズン通してビッグマンを2人並べるラインナップを基本としていたレイカーズですが、デイビス以外はドラモンドが7分出場したのみで、ウォリアーズの運動量とスピードに合わせた戦い方にシフトしたのです。
個人技を発揮しやすくするために広いスペースを作られたことで、前半のようにゴール下を複数人で囲い込む守備ができないウォリアーズですが、自分たちの土俵で簡単に引き下がることはありませんでした。
こうして同点で迎えた残り1分、レブロンが『キング』たる所以を見せつけました。ウォリアーズのハイプレッシャーディフェンスでショットクロックオーバー間際に追い込まれましたが、3ポイントラインの後方にいたレブロンにボールを戻します。レブロンが放ったタフな3ポイントシュートは美しい放物線を描いてリングに吸い込まれました。ショットクロックぎりぎりまで追い込むウォリアーズのディフェンスは完璧で、それだけにレブロンを褒め称えるしかないシュートが決定打となり、レイカーズがプレーオフ進出を手にしました。
今シーズンは両チームともケガに苦しみ、この順位は本来の実力ではなかったかもしれませんが、ちょっとしたつまづきで大きく順位が下がるのは西カンファレンスではよくあること。第7シードとなったレイカーズは第2シードのサンズと対戦することになりますが、もはやすべてのシリーズがファイナルのようなハイレベルの戦いが繰り広げられることになりそうです。
コンディションに不安があっても、試合の緊張感が高まるほどに、集中力も高まり異次元のプレーをみせたレブロンの存在感が際立ちましたが、ハードマークされても必ず結果を残すカリーだけでなく、戦力的には厳しい状況ながら『完璧』と評したくなるほどのチーム戦術を見せたウォリアーズの強みも存分に味わえる試合となりました。たった1試合で終わるのがもったいないプレーイン初戦でした。