「結果を抜きにすると、すごく楽しい試合になった」
4月21日、琉球ゴールデンキングスは名古屋ダイヤモンドドルフィンズを相手に新本拠地の沖縄アリーナで初の公式戦を行った。本来なら柿落としは4月10日のシーホース三河戦だったが、三河だけでなく17日、18日の対戦相手だった大阪エヴェッサと相次いで新型コロナウイルス陽性反応が検出されたことで延期を余儀なくされ、今回待望の一戦となった。
試合は残り1秒に決勝点を奪われ85-87で敗れたが、その中でも存在感を発揮したのが岸本隆一だ。圧巻だったのは3点を追う残り24秒からのオフェンスで、岸本に3ポイントシュートだけは打たせまいとする相手ディフェンスの徹底マークの中、右サイドでボールを受けるとダブルチームに来た安藤周人、中東泰斗に対してシュートフェイク。これでまずは中東を完全に振り切ると、バランスを崩した安藤に対してもジャック・クーリーのスクリーンを使うことでオープンシュートを作り出して見事に決めきった。
琉球にとって記念すべき一戦を「結果を抜きにすると、すごく楽しい試合になったかと思います」と振り返った岸本は、沖縄アリーナの持つ力を感じたと強調する。「今日やっていて感じたのは、良いプレーが持続することです。アリーナの力が試合の雰囲気を作ったと感じました」
一方で、この恩恵を受けるのはホームの自分たちだけでなかったのは誤算だった。しかし、それも大局的な視点で好意的にとらえている。「自分たちがアリーナのおかげで良い雰囲気でプレーできるとはなんとなく感じていますが、相手チームも気分良くプレーしていると思いました。そこは相手を乗せないプレーしていきたいです」
「アリーナがお互いの良いプレーを引き出してくれる。これはBリーグ、日本バスケ界の向上に繋がっていくものだと、感じられるゲームになったと思います」
「勝ちにこだわり、緊張感は失わずにチャンピオンシップに向かっていきたい」
地元沖縄出身の生え抜き選手であり、アーリーエントリーで加入した大学4年時を含め今シーズンがチーム在籍9年目の岸本だけに、沖縄アリーナで自分がプレーすることに特別な感慨があるのは想像に難くない。その彼がこれまで何度も強調しているのは、チーム創世記からこれまで琉球にかかわってきた選手、スタッフなどすべての関係者の琉球への尽力があったからこそ今、自分たちが夢のアリーナでプレーできることへの感謝だ。
だからこそ、岸本には聞きたい質問があった。西地区優勝を決めた琉球だが、現在の順位のままだとチャンピオンシップのクォーターファイナルで対戦するのはサンロッカーズ渋谷だ。SR渋谷には伊佐勉ヘッドコーチ、岸本の盟友である山内盛久に加え、渡辺竜之佑、浜中謙アシスタントコーチと元琉球の面々が多い。
大前提として他のすべてのチームに敬意を持ち、SR渋谷がさらに順位を上げる可能性があることを理解している上で、岸本は言う。
「他のチームをリスペクトしていないということではなく、個人的な気持ちとして渋谷さんにチャンピオンシップの一発目に来てもらいたいです。渋谷には仲が良くキングスに縁のある選手やコーチがいて、僕としては彼らと一緒に戦ってきた期間がこのアリーナに繋がっている思いです。できることならぜひ渋谷さんと戦って、僕たちがハードワークして勝ちたい。どこが来てもチャンピオンシップは毎試合、緊張感があって難しいところですが、対戦相手はすごく気になります」
もちろんチャンピオンシップがどんな組み合わせになるのかは誰も分からず、希望はあるが岸本がフォーカスしているのは自分たちでコントロールできること。ファイナルまでのホームコートアドバンテージを確保しており、レギュラーシーズン残り試合は琉球にとって消化試合の側面も否めないが、「どういう状況であれ負けていい試合は一つもないです。毎試合、勝ちにこだわり、緊張感は失わずにチャンピオンシップに向かっていきたい」と気を引き締める。
そして「一番良い状態でチャンピオンシップに臨めるようにハードワークをしていきたい」と意気込む。琉球はディフェンスで流れをつかむチームであるが、彼の長距離砲は会場の雰囲気を変え、流れを変えられる力を持つ。リーグでも数少ない生粋のフランチャイズビルダーが、来るべき大舞台へ向け、どこまでパフォーマンスを高めていけるのかは琉球の命運を握る大きな要因となる。
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