比江島慎

写真=野口岳彦

オーストラリア代表監督が率いるブリスベン・ブレッツへ

昨シーズンのBリーグMVP、比江島慎のオーストラリアリーグ(NBL)挑戦が決まった。ブリスベン・ブレッツが、比江島と契約を結んだことを発表している。

今回の海外挑戦にあたり、比江島は5シーズン在籍したシーホース三河を退団。新たに契約を結んだ栃木ブレックスの了承を得た上でNBLに参戦する。

昨年からアジア地区に編入されたオーストラリアは世界ランキングで10位の強国で、ベン・シモンズを始めNBAのトップで活躍する選手も多数擁している。先月行われたワールドカップのアジア1次予選、日本代表は歴史的な勝利を挙げたが、なおも歴然たる実力差が存在する。

昨年10月、アジア1次予選がスタートする前の時点で、比江島はオーストラリアのバスケットボールのレベルについて「アジアでトップクラスなのがフィリピンで、オーストラリアはまた別次元のチーム。高さがあってフィジカルが強いのはもちろんですが、うまさも断然上。アジアというよりはヨーロッパのバスケで、ラトビアやチェコに似ている」と印象を語っている。

この時点で比江島は「機会があれば海外でプレーしたい気持ちはあります。通用するか分からないですけど、行ってみて初めて得られるものはある」と胸中を語っていた。

新天地となるブレッツは、昨シーズンのNBLでは8チーム中最下位に沈んだが、オーストラリア代表を率いるアンドレイ・ラマニスがヘッドコーチを務めるチーム。そのラマニスヘッドコーチはクラブ公式HPで比江島について「6000km以上の距離があるオーストラリアに来て、新しい文化と環境で自分を試し、成長しようとしている」と比江島の挑戦を称えている。

ワールドカップ1次予選で日本代表はオーストラリアと2度対戦。比江島は58-82と完敗したアウェーでの対戦で17得点を挙げ、そして79-78で競り勝ったホームでの試合では得点こそ6と伸びなかったが8リバウンド6アシスト、そして粘り強いディフェンスで勝利に貢献している。ただ、日本代表のエースとしてアジアの強国に立ち向かい、一定の手応えを得られることはあっても、それは継続的な自分の経験にはならない。

Bリーグにいる限り、比江島はトップスター選手だ。この安定した環境に甘んじて身を置くのではなく、さらに突き抜けた存在となるために自らに試練を与える。失敗した時のダメージは大きなものになるだろうが、それでも比江島は決断を下した。その挑戦に注目し、応援したい。