藤井祐眞

川崎が誇るビッグラインナップがディフェンスとリバウンドで奮起

天皇杯ファイナルは宇都宮ブレックスvs川崎ブレイブサンダースの顔合わせに。天皇杯初優勝を狙う宇都宮と、Bリーグの時代になって優勝から遠ざかっている川崎が激突した。

両チームとも堅守が武器で、準決勝でもそれぞれ相手の持ち味を封じ込めて快勝を収めている。実際、立ち上がりはロースコアの展開になったが、形を作っていた点で宇都宮が先行する。前から激しく当たる川崎のプレッシャーをピック&ロールで切り崩す。フィジカルが強いだけでなく幅もあるジョシュ・スコットのスクリーンを確実にヒットさせてオフェンス優位の状況を作り出した。しかし川崎はそこからのカバーが素早く的確で、ゴール下にボールを入れられてもライアン・ロシターやスコットのイージーシュートを許さないことで耐えた。

川崎の攻めは宇都宮のマンマークを崩せずに形を作れず苦労するが、スピードのある藤井祐眞が強引なアタックからズレを作り出し、シュートが外れてもジョーダン・ピースのオフェンスリバウンドを押し込むなど、積極的に攻める姿勢で得点を動かす。

19-20と1点ビハインドで迎えた第2クォーターに川崎が波に乗る。パスワークのスピードを上げて宇都宮のマークを引きはがし、大塚裕土が、増田啓介が思い切り良く放つ3ポイントシュートを決めていく。それに宇都宮が対応しようとすると、今度はインサイド。強引に攻め込むのではなく人とボールが連動して動き、合わせのプレーで得点が入るようになる。逆転からそのまま突き放した川崎が41-34とリードして試合を折り返した。

第3クォーターも川崎のペース。昨日の準決勝では攻めで機能したビッグラインナップがこの試合ではディフェンスとリバウンドで奮起。チーム待望の辻直人の3ポイントシュートが連続で飛び出し、スティールから篠山竜青の速攻、ニック・ファジーカスの巧みなシュートと、長くチームを支えてきた選手たちの活躍でリードを2桁へと広げる。

宇都宮は第2クォーターに田臥勇太の3ポイントシュート成功が、第3クォーターには渡邉裕規の連続3ポイントシュートとビッグプレーが飛び出したものの、イージーシュートのチャンスを作れず、またリバウンドでも優位を作れずに流れを変えられない。

篠山竜青

2016年以来の優勝に篠山竜青「やっと届いたな、という感じ」

58-48と川崎の10点リードで最終クォーターへ。ジェフ・ギブスが増田に対するミスマッチを攻めた際にオフェンスファウルをコールされ、テクニカルファウルも取られるなど宇都宮はなかなか立て直せない。残り6分17秒でチームファウルが5つに達する。

ヒースがゴール下の混戦でも力強くシュートに行ってバスケット・カウントをもぎ取る。藤井はヘジテーションから加速してレイアップに持ち込み、攻め手を失ったタイミングでタフなジャンプシュートを決めたり、また守備ではスコットを狙ったポストアップのパスに飛びついてカットするなど個人のビッグプレーで点差をキープした。残り2分半、ファジーカスが正面からの3ポイントシュートを決めて71-60と宇都宮を突き放した。

宇都宮は最後のタイムアウトを使うが、次の得点も川崎。藤井がドライブで宇都宮ディフェンスを振り回し、がら空きになったゴール下に走り込むアギラールへとパスを合わせる。この一発で大勢は決した。最終スコア76-60で、川崎が優勝を決めている。

準決勝では3ポイントシュートが当たったヒースが26得点をマークしたが、この試合ではセカンドユニットの増田が13得点でゲームハイ。ヒースとファジーカスが11得点、アギラールと篠山が9得点、辻と大塚が8得点、藤井が7得点。先発もベンチも、ポジションも問わずにチームでチャンスを作り、多くの選手がフィニッシュに絡んだ。

キャプテンの篠山は「やっと届いたな、という感じ」と優勝の喜びを嚙みしめる。「コートの中でも外でも、味方の激しいプレーを見て自分を勢いを付けることができました。去年は天皇杯で悔しい思いをしているので、その忘れ物を取って川崎に帰れるのがうれしいです」