中村浩陸

大阪エヴェッサはここまで17勝15敗、数字だけを見れば何とか勝ち越しているように見えるが、開幕から約1カ月の第7節までの4勝8敗に対し、それ以後は13勝7敗とシーズン序盤のつまづきを挽回しており、宇都宮ブレックスに千葉ジェッツ、琉球ゴールデンキングスと各地区の上位チームからも勝利を挙げるなど内容の良さが光っている。攻守に爆発的なパワーを見せるアイラ・ブラウンに、日本人屈指の得点力を持つ選手へと成長した橋本拓哉、そして異能のクラッチプレーヤーであるディージェイ・ニュービルとタレントが揃うチームで、キーマンとなっているのがポイントガードの中村浩陸だ。特別指定で加わった昨シーズンを経て、今シーズンがプロ1年目。彼の成長がそのままチーム力アップに繋がっている。

「今までと同じじゃ試合に出られない」という葛藤

──昨シーズンは特別指定選手として途中合流して、早々にプレータイムを与えられて活躍しました。新型コロナウイルスの影響でそのシーズンは途中で終わってしまいましたが、今シーズンに向けた課題はどんなものが見つかりましたか?

いろいろありましたけど、まずはフィジカル面です。ディフェンスのプレッシャーに負けてターンオーバーしてしまうことがあったので。単純なフィジカルというより圧力が大学とは全然違って、プレーしていて余裕を持てませんでした。カテゴリーが一つ変わると大きな違いがあることは今までもずっと感じてきて、中学から高校に上がる時も、高校から大学に上がる時も同じ感覚だったんです。ですがプロはまた全然違って、慣れの問題もありますが身体作りからしっかりやらなきゃいけないと思いました。

オフの間に自宅でできる範囲のことはやりましたし、竹野(明倫)コーチとチームメートでリモートで身体を動かしたり、そういう準備はしっかりやってきました。昨シーズンは短い期間でしたが、経験できて良かったです。

──こうして迎えたプロ最初の開幕ですが、特別指定の時とは逆で出場機会が減りました。ケガでもあったんですか?

ケガではなく、普通に自分に足りないことがあったからです。プレータイムがなくて最初はすごくヘコみましたが、やっぱりそれがプロの世界だとも感じて、落ち込むだけじゃなく自分に足りないものが何か、どう補っていくかを僕なりに考えたり、人に意見を聞いたりしました。その結果が今に繋がっていると思います。

具体的にはオフェンスでどうのこうのしようと考えすぎていたんです。僕はアタックして点を取っていくポイントガードなんですけど、それはちょっと違うと思って。前からディフェンスでプレッシャーを掛けることを自分の持ち味として出さなければいけないと思って。正解が見つからないまま開幕を迎えた感じですが、ディフェンスが必要だというアドバイスももらって、そこから自分の意識を切り替えて行動に移していきました。

──天日謙作ヘッドコーチは病気療養中ですが、オンラインでの指導でアドバイスをもらったりしますか?

チームミーティングはあまりやりませんが、個人としては徐々にプレータイムが伸びている時に、やっぱりディフェンスの部分を見てくださっていて、そこを引き続きやっていくことと、あとは空いた時には自分で打つように、そのために練習でたくさん打っておくように、というアドバイスはいただきました。「シーズン始まった時より調子が上がってきている、その中でチームのメンバーと切磋琢磨して競争してほしい」と言われているので、しっかり競い合っていきたいと思います。

中村浩陸

「チャンピオンシップ進出という目標は常に意識しています」

──11月の中断期間明けから先発に定着しています。これはやはりディフェンスの意識が評価された結果でしょうか?

そうですね。ディフェンスの部分ですごく評価してもらっているので、ここまでずっとやり続けています。

──大阪は帰化選手のアイラ選手がいるメリットがあり、ニュービル選手もB1で急増した外国籍ガードの中でも屈指の実力者で、橋本選手も日本人選手の中ではトップクラスの得点力があります。個性豊かなメンバーをポイントガードとして生かす意味で、どんな意識でコートに立っていますか?

僕も自分では得点を取りに行くガードだと思っていて、パスよりシュートだと思っているんですけど、そこを自分がやりすぎるんじゃなく、チームメートにストレスを感じさせないようにボールをしっかり出すというのはすごく意識していて、その中で自分が空いたら攻めるようにしています。そこは昨シーズンとは変えた部分です。正直、オフェンスは僕が点を取らなくても他のところで楽に点が取れるので、自分が無理するよりは起点になるように。パス優先というよりは、周囲を気持ち良くプレーさせることを意識しています。

──チームファーストの意識は当たり前ではありますが、中村選手個人としては試合中に何度も「自分でも打てたな」という小さなストレスを味わっているのではありませんか。そこの折り合いは難しくないですか?

ストレスはあまりないですね。そこは僕が取らなくても他の選手が取ってくれるので。決まっていれば大丈夫です(笑)。

──中村選手が先発で出るようになって、成績が上向いています。特に優勝候補の強豪に勝てているのは自信になるのでは?

僕が出たかどうかではなく、チームとして開幕当初から練習を重ねて、お互いにどんなプレーをする選手なのかが分かってきて、そこでチーム力としてすごく上がっている感覚はあります。チャンピオンシップ進出という目標はチームとして常に意識していて、普段のミーティングから「チャンピオンシップに出るためにはもっとここをこうしないといけない」という言葉がすごく出て、良い雰囲気でやれています。

中村浩陸

「ワクワクするものがたくさん詰まっているチーム」

──強力な個の力が揃っていますが、これを上手く噛み合わせるのは大変です。良いバランス感は見いだせそうですか?

探し中ですかね。良い時は良いんです、悪い時に流れをどう断ち切るか、どうやって雰囲気を変えるかはガードとしてコントロールしている以上、僕が責任を持って考えなくちゃいけない部分だと思うので。そこはやっぱり誰の調子が良くて誰の調子が良くないのか、ここはどの選手に打たせるべきかを考えてセットプレーを変えたり、また自分で行くことも含めてもっと適切な選択ができるようにならないといけないです。

最近の試合だと特に第4クォーターのゲームのクローズの部分はディージェイに任せきりの部分があるので、相手からしてもそこで攻めてくるのは分かるので、チームとしてどう改善していくかはこれからの大きな課題です。ディージェイがボールを持てば点を取ってくれるという安心感はあるんですけど、そこで決まらなかった時にどうするのかを僕は考えなければいけないので、それはそれで難しいです。

──ゲームコントロールの部分は試合を重ねながら改善していくとして、他にチームの課題はありますか?

リバウンドとターンオーバーですね。1試合を通してターンオーバーの数がすごく多いと感じているので、ミスが減れば得点も伸びるし、点差も開きます。あとはリバウンドでインサイドの選手に任せてしまうところ。ここはすごく課題だと感じます。

──上位とはまだ差があるものの、チャンピオンシップ進出を現実的に狙える位置にいます。そのチームの舵取り役を担うことにプレッシャーはありますか?

プレッシャーはあまりないですね(笑)。

──開幕当初に出番が少なかった分、今はプレーできることが楽しい?

すごく楽しいです。やっぱり上手くいかないことの方が多いですけど、そこで成長している実感があるので楽しいです。

──では最後に、ファンの皆さんに大阪エヴェッサのバスケの見どころをあらためて教えてください。

ディフェンスからブレイクに繋げるチームなので、その速い展開を見てもらえるとすごい楽しいと思います。アイラさんのダンクとかディージェイの個人技とか、ワクワクするものがたくさん詰まっているチームなので、そこを見てほしいですね。僕はディフェンスで相手のガード陣にプレッシャーを掛けるので、そこを是非見てください。

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