[現地レポート]強すぎたアメリカと、今後の期待が高まる日本代表

2016/08/17
日本代表
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文=栗原正夫 写真=Getty Images

まさにやられたらやり返すとばかりの『倍返し』

さすがにアメリカは強かった。いや、次元が違った。

リオ・デ・ジャネイロ五輪、女子バスケットボール準々決勝で日本代表『アカツキファイブ』は、五輪6連覇を目指す絶対女王のアメリカに真っ向から勝負を挑み、64-110と撃沈した。

序盤は本川紗奈生の強引なカットインからのレイアップや栗原三佳の3ポイントシュートなどで勢いを付けた日本だったが、徐々にアメリカも本領を発揮。第2ピリオドの途中には46-48と一時は2点差まで肉薄したが、第2ピリオド終盤にリードを8点まで広げられると、第3ピリオド以降は18-54とトリプルスコアで圧倒された。

予選ラウンドでは、面白いように決まった司令塔の吉田亜沙美とエース渡嘉敷来夢のホットラインも、武器となった本川のドライブも、栗原の3ポイントシュートも、すべてアメリカのパワーと強さの前に封じられた。

「決して(日本の)調子が持続しなかったわけではない。(アメリカのプレーは)想定内といえば想定内、想像以上といえば想像以上のことが想定内。なんて言っていいか分からないですが、スーパープレーヤーばかりなので」

この日、得意の3ポイントを4本沈めた栗原の言葉からも、日本の出来云々ではなく、アメリカとの力の差は歴然で、規格外の相手に成す術なしだったことがうかがえた。

筆者は、予選ラウンド最終戦となったフランス戦に続き、このアメリカ戦を現地で取材、観戦したが、正直、フランス戦で見えた微かな期待は、ハーフタイムを前に泡と消えた。

本川が、栗原が、渡嘉敷が得点しようとも、いとも簡単に返されてしまうばかりでなく、本気のアメリカを敵に回し、2点挙げれば2点ではなく4点、6点という具合に、まさにやられたらやり返すとばかりに『倍返し』に遭うようで、勝機を探ることすらおぼつかなかった。

アメリカに驚かされたのは高さやパワーはもちろん、その技術とシュート成功率の高さ。それには、日本チームの中で最も小さい身長162センチの町田瑠唯も「分かってはいたんですが、あそこまで高い確率でシュートを決められてしまうと」と舌を巻いた。

その意味では、返す返すも予選ラウンドで3勝(2敗)を挙げながらも、グループ4位通過となってしまったことが悔やまれる(その結果、グループB首位のアメリカと準々決勝で当たることに)。エースの渡嘉敷も「最後にアメリカとやりたかったけど、少し早く当たりすぎました」と振り返ったが、それがホンネだろう。

先の予選ラウンドの最終戦で、強豪フランスから金星を挙げながらも、得失点差で4位に甘んじた選手が、ほとんど喜びの表情を見せることなく、まるで負けたように暗かったのはまさにこのせいだったのだ。

日本は3位抜けにはフランス戦で13点差以上、2位抜けには15点差以上をつけての勝利が必要だったが、それができるとできないとでは天と地ほどの差があった。栗原や町田らの言葉を聞いても、ひょっとするとアメリカはその名前と実績で、戦う前から相手の戦意を奪ってしまうほどの強さがあったのかもしれない。

フランス戦後は特に本川の悔しそうな姿が印象的だった。その本川はアメリカ戦もフランス戦に続き随所に強気なプレーを見せ、栗原と並ぶ12点を挙げたが、アメリカは気持ちでどうにかなる相手ではなかった。

男子のチームUSAが気軽に試合観戦に訪れることができたのも、会場がメインパーク内のカリオカ1だったからだ。結果、日本vsアメリカは多くの観客を集め盛況となった。

トリッキーなプレーでブラジルの観客を虜にした吉田

現地観戦する中、アメリカ戦で一つ違ったのは、この日の会場がリオ五輪のメインパークにあるカリオカ1で行なわれたこと。これまで女子バスケの試合はユース・アリーナと呼ばれる五輪のメイン会場から車で20分ほどの場所を中心に行われてきたが、準々決勝以降はすべてカリオカ1で開催される。

カリオカ1はちょうど五輪会場の中央あたりに位置し、隣のカリオカ2では柔道やレスリングが行われており、周囲には体操や水泳、テニスの会場が並んでいる。観戦者にとってはアクセス面でもありがたく、試合開始直後には空席が目立った観客席も後半に入った頃には6~7割が埋まり、会場には日の丸の国旗も目立ち、日本からのファンの姿も数多く見かけることができた。

ちなみに、先のフランス戦でトリッキーなプレーを連発した吉田には、地元ブラジル人の観客からも「ヨシダッ! ヨシダッ!」のヨシダコールが起きたが、サッカー同様、ブラジル人は勝敗だけでなく見ていて楽しませてくれるプレーを好む。

この日のアメリカ戦では点差が開いてしまったことで、終盤には場内でウェーブが起きてしまったが(ウェーブは退屈な試合の象徴だ!)、全体として見ればDJの存在やタイムアウトで試合が止まった際にはパフォーマーが妙義を繰り出すなどして盛り上がりを見せていた。

最終的にアメリカの前に大敗を喫してしまった。とはいえ、グループリーグでアメリカに次ぐ世界ランク2位のオーストラリアに第4ピリオドの途中まで最大16点のリードを奪う大熱戦を演じ、フランス、ベラルーシ、ブラジルから3勝を挙げるなどした日本のリオでの戦いぶりは評価されるべきだし、今後に大きな期待を抱かせてくれたことは事実だ。

本川が「日本の戦いぶりは示せたと思うし、この結果は誰も想像していなかったと思う」と振り返ったように、アメリカ戦の敗戦一つですべてが否定されるものではない。

中には「もしここでアメリカと当たっていなければ……」と、ひょっとするとメダルに届いたかもしれないという思いを口にした選手もいたが、そうした選手は大きな手応えと自信を手にしたことだろう。

渡嘉敷はアメリカ戦を終えて「ここまで来られたのも、ここで負けたのも実力」としたが、バスケットボールは球技の中でもアップセットが少なく実力が結果に反映されやすい性質がある。一方、内海知秀監督が「これが実力通りの結果だと思わない」と話したように、もし準々決勝の相手がアメリカでなかったら別の結果になっていたとしても不思議ではなかった。

大会を通じての戦いが素晴らしかっただけに、出足でつまづいたトルコ戦を含め、オーストラリア戦、フランス戦の一つでも結果が違っていたら、との思いは強い。アメリカ戦での『世紀の番狂わせ』はならなかったが、3大会ぶりの五輪の大舞台で日本らしいスピードと組織力に長けたバスケで魅力を存分に示したアカツキファイブ。メダルにはもう一歩、二歩届かなかったが、4年後の東京五輪に向けて期待が高まる戦いを見せてくれたことだけは間違いない。

日本からも多くのファンが訪れ、試合を重ねるごとにその数は増えていった。地元ブラジル人の観客も巻き込んでAKATSUKI FIVEをサポートした。