クリスチャン・ウッド、ベン・マクレモアとの『ビッグ3』誕生?
ジェームズ・ハーデンがネッツでデビューしたその時、ロケッツは敵地でスパーズと対戦していた。
『チームの顔』だったハーデンは数々のトラブルの末に退団し、この日はジョン・ウォールにデマーカス・カズンズ、エリック・ゴードンと主力が軒並み欠場。チームは8人ローテーションを強いられながらも善戦したが、終盤に力尽きて91-103でスパーズに敗れている。
だが、得るものの多い敗戦だった。クリスチャン・ウッドは「試合を重ねるごとに成長している実感がある。今日は選手が少ない状況でスパーズとよく戦ったから、フラストレーションは感じていない」と語る。
この試合でウッドと並んでゲームハイの24得点を挙げたのは、シュート力が持ち味でハンドラーもこなすシューティングガード。と言ってもハーデンではなく、去年のドラフトにエントリーするも指名されず、ロケッツと2ウェイ契約を結んだ無名の選手、メイソン・ジョーンズだ。1月8日のマジック戦でNBAデビューを果たしたばかりで、キャリア5試合目となるスパーズ戦で主力の相次ぐ欠場を受けて初めての先発に抜擢された。
「毎日、いつ呼ばれてもいいように準備してきた。今日はコーチと仲間が与えてくれたチャンスを最大限に生かそうとした。チームが僕と契約してくれた意味を証明し、僕が本当はドラフト指名に値する選手だと示したかった」と語るジョーンズは、この試合で過去4試合での合計と変わらない35分のプレータイムを得て、24得点6リバウンド4アシストを記録。物怖じすることなくボールをプッシュし、ゲームメークを担った。
指揮官のスティーブン・サイラスはこう語る。「前の試合で素晴らしいプレーを見せていたから先発で起用したが、24点も取るとはね。ウチにはジョン・ウォールもエリック・ゴードンもいて、彼のプレータイムはなかなか伸びないかもしれないが、今日の活躍は次に繋がる。ここまでの試合にあまり出られない中で彼がどれだけハードワークをしてきたか、それを誇らしく思うよ」
『選手としての格』には大きな差があるにせよ、ロケッツはハーデンを失った代わりに、成長と成功に貪欲な若い選手の台頭といううれしいニュースが舞い込んだ。この日のロケッツの先発では、ジェイショーン・テイトも2018年のNBAドラフトで指名を受けなかった選手。シドニー・キングスでのプレーを経てロケッツにたどり着いている。
ジョーンズが先発に抜擢されて結果を出したと同時に、これまでは若手の立ち位置にいたウッドにチームを引っ張る自覚が生まれてもいる。「僕もリーダーシップを発揮して、新しく入る選手を助けてあげなきゃならない。大事なのは一緒にいること。今日のスパーズ戦がそうだったように、団結して立ち向かうことだ。そうすれば良いチームになっていくよ」と語るウッドも、もともとは2015年のNBAドラフトでどこからも指名されず、NBAプレーヤーとして認められるまでに何年も苦労した経験がある。
「僕もそうだったから、その大変さは分かるつもりだ。チャンス自体が保証されていないところからスタートして、ドラフトされた選手たちが毎年入って来て、簡単にチャンスをもらうのを眺めながら日々頑張ってきたんだ」
スパーズ戦を終えた会見で、記者から「君とジョーンズ、(ベン)マクレモアがロケッツの『ビッグ3』になるかもね」と冗談混じりで問いかけられたウッドは「君がそう思ってくれるなら、そうなりたいね」と笑顔で答えている。『ハーデン以後』のチームはスタートしたばかり。優勝候補と呼ばれるチームではないにせよ、彼らのような若手がイキイキとプレーする楽しみなチームになりそうだ。