ゴードン・ヘイワード

敵将シボドーも絶賛「彼の才能は十分理解していた」

ニックスはホーネッツ相手に88-109と完敗を喫した。34得点を奪うゴードン・ヘイワードの活躍ぶりに、ニックス首脳陣は歯噛みして悔しがったはずだ。ヘイワードがセルティックスとの契約最終年を破棄してフリーエージェントになった昨年オフ、行き先として最も可能性が高いと見られていたのはニックスだった。しかしニックスはケガ明けのヘイワードのコンディションを懸念し、契約を見送った。

ジャズのエースだったヘイワードは2017年にセルティックスに移籍するも、開幕戦で左脛骨骨折と足首の脱臼という重傷を負った。復帰までに1年を要し、またケガのトラウマを乗り越えるのにも苦労した。その間にセルティックスではジェイレン・ブラウンやジェイソン・テイタムといった若手が台頭。チームリーダーの役割もケンバ・ウォーカーの加入があり、ヘイワードは好条件の契約を破棄してまで自身の選手としての価値の再評価という賭けに出た。

この賭けに乗ったホーネッツと、乗らなかったニックス。最終的な良し悪しが分かるのは何年か後の話だろうが、ひとまずこの試合ではホーネッツが賭けに勝った。ディボンテ・グラハムとラメロ・ボールを中心に作り出す速いペースに合わせたヘイワードは、次々とチャンスを得点に変えていく。34得点という数字はもちろん、フィールドゴール17本中11本成功、フリースローは10本放ってすべて成功と、効率の良さが際立った。

ホーネッツはこれで4連勝。殊勲のヘイワードは「チームは好調だし、僕個人も自分にできる形で勝利に貢献しようとしていて、良い感触を得られている」と語る。

「ボールを動かして、オープンショットやイージーバスケットを作り出す今のスタイルはすごく楽しい。このコーチングスタッフの下で、このチームメートと一緒にプレーするのが楽しいんだ。もちろん、これから勝つことも負けることもあるだろうけど、自分たちの成長に気を配ってハードに戦っていけば、チームはもっと良くなるはずだ」

まだシーズン序盤ではあるが、平均34.8分のプレータイムはジャズ時代の水準に戻り、22.5得点はジャズ時代をも上回る数字。なおかつ彼が絶対的エースではなく、テリー・ロジアーにラメロ、PJ・ワシントンなどどこからでも得点できるチームであり、オールラウンダーとしてのヘイワードの多彩なチャンスメークの能力も十分に生かされている。

面白いのは、ヘイワードの獲得を見送ったニックスの指揮官、トム・シボドーが実際に対戦した彼を絶賛したことだ。昔気質のシボドーは感情をストレートに表現するタイプで、ヘイワードの活躍に嫉妬するのではなく、素直に喜んだ。「フリーエージェントの選手はすべて調査したが、ゴードンには特に注目していた。今回は獲得しなかったが、彼の才能は十分理解していたんだ。得点能力じゃなくプレーを組み立てる力もある。プレーの判断が良く、味方を生かすという点では、私が指導した中ではジミー・バトラーに似ている。あのタイプの選手は長く活躍するよ」

4年1億2000万ドル(約124億円)の契約は安くない。だが、ヘイワードがこの調子を維持できるとしたら、それはホーネッツにとって大いに『お値打ち』な契約になりそうだ。