比江島慎

取材=古後登志夫 構成=鈴木健一郎 写真=バスケット・カウント編集部、B.LEAGUE

昨シーズンのレギュラーシーズンMVPにして日本代表のエースである比江島慎が移籍を選択した。大学卒業から5シーズンを過ごしたシーホース三河を離れ、新天地に選んだのは栃木ブレックス。Bリーグのトップスター選手である現状、安定した環境に甘んじることのない比江島は何に向かってチャレンジしているのか。その胸中を聞いた。

「もっと成長できる、しなきゃいけない」

──栃木への移籍は誰も予想していなかったと思うのですが、これは「成長したい」という気持ちからの決断だったんですか?

移籍をすれば成長できるという保証はないんですけど、違うコーチとやってみて、周りの選手も変わって、見てそこから得れるものがあるかなという勝手なイメージです。目先の目標としては2019年のワールドカップがあり、2020年の東京オリンピックがあります。その時には30歳になるので、それまでにもっと成長できる、しなきゃいけないと感じていました。

──三河での5シーズンでも大きく成長したと思います。

僕はノビノビとやらせてもらったと思います。1対1を任せてくれたり、最後のボールを託してくれたり、大事な場面でプレーさせてもらいました。そういったことが日本代表でのプレーに生きていると思います。

常勝軍団と僕が言うのもおかしいですが、(鈴木貴美一)ヘッドコーチだったり(桜木)ジェイアールや柏木(真介)さんだったり、僕が入団した時から勝ち方を知っている人がいました。第4クォーター、勝つための試合の感覚は三河で学んで成長できました。

──それでも物足りない面があった?

物足りないということはありませんけど、「自分は本当に成長できているのかな」とか「もっともっとやらなきゃいけないんじゃないのかな」と不安になることはありました。
比江島慎

「移籍したからといってプレッシャーは感じていない」

──三河の残留がなかなか発表されず、どのチームのファンも「比江島が欲しい」と思ったはずです。実際にオファーはたくさんあったと思いますが、栃木を選んだ理由は何ですか?

栃木のプレースタイルに入ることで、自分がもっと成長できると感じたことが一番です。それと同時に、自分が入ることで栃木にとってもプラスになるイメージが沸きました。激しいディフェンスからの速攻だったり、優勝したシーズンからメンバーが抜けて、そこに僕が入って中心になるじゃないですけど、ある程度は力になれるんじゃないかと思って。

もう一つは田臥(勇太)さんがいるのが僕の中では大きいです。リオ五輪の最終予選の時に一緒にやった経験が、僕のバスケット人生の中でもターニングポイントになっているので。

──田臥選手や栃木の他のメンバーには連絡を取りましたか?

田臥さんと(竹内)公輔さんには連絡しました。喜多川(修平)さんと(ライアン)ロシターからも「楽しみにしてるよ」って連絡をもらって。ロシターは多分、田臥さんが連絡先を教えたんだと思います。決まったら連絡をくれました。

──栃木のスタイルに自分が加わって、どんなバスケをイメージしていますか?

全部が新しいので、すべてが楽しみです。ブレックスアリーナで栃木のファンの皆さんの前で、あの声援を受けてプレーするのは楽しみです。トランジションバスケットで自分がどう生きるのかも楽しみだし、田臥さんとやるのも楽しみですし。そうやって考えると、移籍したからといってプレッシャーはあまり感じていないですね(笑)。
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