「チームメートがカバーしてくれたおかげで勝てた」
『常勝』を義務付けられる桜花学園で1年生からポイントガードの大役を務めてきた江村優有は、自分の代で最初で最後となる全国制覇のチャンスを逃さなかった。決勝では東京成徳大学を89-65で下している。
決勝でのスタッツは8得点3アシスト、ターンオーバーは7つありファウルトラブルにも陥るなど『らしく』なかったが、大事なのは個人のスタッツよりも結果である。江村は「ポイントガードとしてミスが多かったけど、チームメートがカバーしてくれたおかげで勝てたので、みんなに感謝です」と大きな笑顔を見せた。
勝ってもなお厳しい井上眞一コーチは「もうちょっと点を取ってほしかった」とこぼしたが、「江村をマークしすぎてインサイドのディフェンスが甘くなったから、アマカが50点を超えるようなスコアになった」と、見るべきところは見て評価している。
常に優位に立つ試合展開ではあったが、突き放すには至らないまま第3クォーター終盤に江村は個人ファウルが4つに。勝負どころでは常にコートに立ってきた江村が、わずかな時間とはいえベンチから戦況を眺めることになった。
「焦りはなかったですが、最後まで自分のミスを周りのメンバーがカバーしてくれたので、すごく感謝しています。この大会を通じて先生やコーチのご指導、周りの皆さんの支えがあったからこそ優勝できました。この1年間、しっかりチームメートと練習を頑張ってきた成果を出して優勝をつかみ取れたので良かった。先生を胴上げすることができて良かったのと、自分としてはしっかりと仕事をできたわけでもなく、足りないことばっかりだったけど、みんなに助けてもらいました」
後輩へ伝える「桜花の持ち味はディフェンスからのブレイク」
チームメートへの感謝の言葉ばかりが飛び出したが、仲間たちは下級生の頃から司令塔としてチームを引っ張り、またこの1年はコロナ禍の難しい状況の中でキャプテンの重圧と向き合ってきた江村がいかに大変だったかを見てきた。井上コーチ、また外山優子アシスタントコーチに続いて江村が胴上げされたのは、江村の3年間の献身ぶりに対する仲間たちからの自然な反応だった。
後輩たちに引き継ぎたいこととして江村は、「桜花の持ち味はディフェンスからのブレイク」と語る。「まずはディフェンスでのポジション移動をもっと早くするとか、もっとコミュニケーションを取って、当たっていって走ってブレイクを出すように。練習の時から全員で声を掛け合ってやってほしいです」
「支えてくださった方々への感謝の気持ちをコートで表現して、一戦一戦を戦えました」。そんな充実感に満ちた言葉で、江村の高校バスケは幕を閉じた。