安藤誓哉

「順位を先に見てしまうと、何をすべきか見失ってしまいます」

シーズン序盤戦、最大のサプライズと言えるのは王者アルバルク東京の成績かもしれない。新型コロナウィルスの感染拡大を受けての途中打ち切りとなった昨シーズンから主力は変わらず、そこに欧州の名門パナシナイコスの中心選手デション・トーマスが加入した。充実の陣容でありながら、現在12勝9敗の東地区7位で、ゲーム差はわずかであるがチャンピオンシップの出場圏外となっている。

そして、チームを再整備する時間があった11月中旬からのブレイク期間を開けても12月2日の富山グラウシーズ戦、9日の秋田ノーザンハピネッツ戦と大差で負けるなど、ここまで12月は上位陣との対戦が続いたことを考慮しても2勝4敗と苦しんでいる、

まだシーズンは全体の3分1を過ぎたばかりで、十分に巻き返す時間は残っている。だが、これまで圧倒的な強さを誇ってきたA東京だからこそ今の成績に驚きや困惑を感じるファンは多いはず。

中心選手の一人、司令塔の安藤誓哉はチームの現状をこのようにとらえている。「バイウィーク明け、アルバルクとしては珍しく点数を離されて負ける試合がいくつかありました。でもトータルでは、自分たちのやるべきことを遂行する点において、勝ち負け関係なしに見えてきているところはあります。オフェンス、ディフェンスでもコミュニケーションのミスが減ってきています。合わせの部分、阿吽の呼吸の部分も少しずつ出ていると思いますし、良くなってきている手応えはあります」

地区7位の成績につては「現在のポジションに満足はしていないです」と忸怩たる思いを持っている。ただ、同時にチームが目指すのは最終決戦となる5月のチャンピオンシップでリーグベストになることであり、目先の成績に左右されずに追い求めていくべきものがあると続ける。

「逆に順位を最初に見てしまうと、自分たちが何をすべきか見失ってしまいます。もちろん絶対に勝つ気持ちですべての試合に臨んでいます。ただ、まずは、内容を突き詰めていく。勝ち負けだけではなく、自分たちの目指す、やるべきバスケットボールができているかに焦点を当てる。その上で勝たないと、5月に自分たちが本当に目指すバスケットボールができない。まずは自分たちが積み上げてきているものを発揮することが大切です」

主力メンバーが変わらないのに、これまでのように勝てないのは何故なのか。「研究されているのは、(ルカ・パヴィチェヴィッチ体制の)2年目から重々感じていることです。相手のスカウティングは2年目の勝てなかった時期の方が強く感じています。どちらかというと、コミュニケーションの部分で苦労していると思います」と安藤は感じている

そして、この問題は中心選手が長らく変わらないからこそ生まれた側面もあると安藤は考える。「コアメンバーは4年目でこのメンバーが長ければ長くなるほど、新しく入ってくる選手が難しさを感じるところもある。例えばデション・トーマスは高いレベルの選手だからこそ、新しく入って逆にケミストリーを作り上げるのは大変だと思います」

安藤誓哉

「下は見ないで、前を向いてタフに戦い続ける」

ただ、このコミュニケーションについても、冒頭で触れたように良くなっている手応えはある。また、今の苦しい中でも収穫は得ている。その一つが、ここ一番でA東京の本領を発揮して勝っていること。琉球ゴールデンキングス 、サンロッカーズ渋谷との連戦はともに初戦を僅差で落としたが、2試合目は大量リードで圧勝している。チームの根幹であるタフに戦い続ける部分は、しっかり継続できている。

「琉球戦との2試合はともにタフに戦ったとコーチから言われました。先週末のSR渋谷戦も1試合目は負けてしまいましたが、タフなディフェンスで戦い続けたことが日曜日に20点差以上で勝てた要因で、そこは自信になっています」

また、自身の役割については、「チーム4年目、キャプテンとなり今までと立場は変わりました」と意識している。「これまでで一番厳しい状況ですが、そこで僕が元気な姿で過ごしていかないといけない。その部分で周りに与える影響は大きく、明るい雰囲気を持たなければいけないと思っています」

A東京のタフなスケジュールは続き、今週末はアウェーで地区2位の宇都宮ブレックスと対戦する。貪欲に勝ちにいくのが大前提としてあった上で、安藤はこの注目カードのテーマを語る。

「もちろん宇都宮に2連勝して勢いに乗りたいですが、そんな簡単なことではないとみんな分かっています。今、しっかりと自分たちのやっているバスケットを出せた試合は琉球戦、渋谷戦と勝てています。今回も自分たちが成長段階にある中で、まずは一人ひとりがやるべきことを遂行し、チームとして目指すバスケットボールをいかにできるのか。その後で、結果がどっちに転ぶのかが大事になってきます」

そして、あらためて安藤は強調する。「自分たちが今やっていることは間違いではないと、信じています。逆に焦ったら僕はおしまいと思っています。限界はありますけど、今はグッとこらえて我慢している時期。下は見ないで、前を向いてタフに戦い続ける。その先にもう1回、勢いが来ると思っています」

今、王者は確かに厳しい状況に置かれている。ただ、そんな中でも再び王者になるためにやるべきことを続ける。そこに一切のブレはない。

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