川原央也

「相手どうこうでなく、自分たちがやるべきことを」

ウインターカップの岩手県予選決勝、盛岡南vs一関工業。第4クォーター残り24.2秒、1ゴール差に迫られた状況で、盛岡南のキャプテン、川原央也は2本のフリースローを落ち着いて決めた。

「この試合はそれ以前にもフリースローを打っていましたが、1本も決められていなかった。一発逆転もある状況で、キャプテンとしてしっかり決めなきゃという思いで打ったシュートが入ってホッとしました」

盛岡南が一関工業に泥をつけるのは実に4年ぶりのこと。序盤に負ったビハインドを川村愛斗の連続得点でひっくり返し、そのまま逃げ切った形だが、斉藤資コーチは「要所でレイアップシュートを決めて、相手に流れを渡さなかった」と、川原の戦いぶりを高く評価した。

同部OBで、大阪エヴェッサで司令塔をつとめた経験を持つ斉藤コーチは、同ポジションの後輩である川原に、試合の流れを読み、コントロールする力を求めてきた。

「試合の流れを嗅ぎ分けて、周りを生かす力を養おうと伝えてきました。私が試合中、コート上の選手に伝えられることは限りがあります。どうしても点が取れない、ディフェンスがうまくいかない時に、お前がパスやスティール、リバウンド、シュートで流れを変えるんだと。入学時から常に言い続けてきたことを、しっかり体現してくれています」

自他ともに認める真面目さや、メンタルとパフォーマンスの両面における波のなさ。川原の強みは、チームが理想に掲げるスタイルにピッタリ一致する。自主練習のシューティングは、確率アップのために「15本中10本決めたらクリア」というハードルを設けて行い、練習中にも波が生まれぬよう、ポジティブな声かけでチームメートを引っ張ってきた。ただ、「安定している分、爆発力がない」というのが本人談。「ウインターカップ本戦までに、一気に点を離せるような爆発力を身につけたい」と、さらなるステップアップを見据えている。

澁田怜音(佐賀バルーナーズ)が同校3年生だった4年前のウインターカップを、川原は現地で観戦している。ヒリヒリした会場の空気感と緊張感を、今でもよく覚えているという。

当時からずっと思い描いていた『ウインターカップ』という夢に、高校最後の年、とうとうたどり着いた。「相手どうこうでなく自分たちがやるべきことをやる。そうすれば結果もついていると思います」。目標であるベスト8に向けて、邁進する。