目標を同じくする3チームが東海大福岡に集結
11月15日、福岡県宗像市にある東海大学付属福岡の体育館は熱気に包まれていた。東海大福岡は2週間前に県予選を勝ち抜いてウインターカップ出場を決め、昨年の『全国で1勝』を果たしたさらにその上を目指してチーム強化に励んでいる。この日は同じくウインターカップ出場を決めた広島の県立広島皆実、宮崎の県立小林を集めての練習試合。本大会を見据えて本番さながらの激しい戦いが繰り広げられた。
県立小林は過去に優勝歴があるものの、それは42年前の話。最後にベスト4に入ったのは1990年だ。県立広島皆実は22回目の出場となるが、これまでベスト4進出はなし。東海大学付属福岡は昨年が初出場、今年が2回目の出場となる。いずれも2年連続の出場で、県大会では強豪だが本大会で優勝候補と見なされるチームではない。具体的な目標は1勝もしくは2勝を挙げて、ベスト8の壁、ベスト4の壁に挑戦すること。そのためには県内での練習試合では強度が足りない。目標を同じくする3チームが集まっての真剣勝負には大きな意味がある。
広島皆実の村井幸太郎コーチは「福岡県決勝の映像を見て、月曜の朝イチに電話で練習試合をお願いしました」と語る。「東海大福岡の選手にはフィジカルの強さ、1対1の強さがあって、そこに留学生が入ると全然違うバスケットになります。その変化にウチの選手がどう対応できるのか、経験させたかった。小林とは以前も試合をしたのですが、ウチが頑張ってもいなされる上手さがありました。小林も来ると聞いて、こんなに良い機会はないと思いました。すごく良い経験になりました」
「ボール運びからアーリーオフェンス、流れでハーフコートオフェンスに入って、選手とボールがずっと動き続ける自分たちの目指すバスケができる時間帯がありました。そういう時はリズムが良くてシュートも入ります。逆に止まってしまう時間帯もあるので、本大会までにどれだけ良い時間を増やし、悪い時間帯をなくせるか。すごく面白い練習試合になりました」
県立小林は11月1日の県予選決勝で延岡学園に勝利して本大会進出を決めた。それでも宮崎県ではこの大会の2週間前から、新型コロナウイルスの感染予防のために対外試合が禁止されており、試合勘のなさが懸念されていた。前村かおりコーチは「長く真剣なゲームから離れていたので、午前中の試合では面食らっていて、そこから『全国ってこうだよね』と再確認できました。今日やったレベルが普通なのが全国大会なので」と話す。
「まずはビデオを見て、できていないことの反省もしますけど、全体的に一つひとつのエネルギーが足りないと感じがしました。ディフェンスのポジション取りにしても、シュートへの行き方にしても『このぐらいでできるよね』ぐらいの感じでやっていたのが、『そんなんじゃ守れない、打てない』というのが分かりました。練習の質を上げないといけないと私自身も感じました」
東海大福岡の宮﨑優介コーチは就任9年目、33歳と若いコーチ。「皆実さんと小林さんに来ていただいて、それぞれのコーチがウインターの舞台でどのように戦っているか勉強させてもらいました。ウインター出場を決めてから本大会までのこの準備期間に何が不足しているか、肌で感じられました」と語る。
「それぞれカラーがあるチームなので、目標や目的がコートに出ます。その対応力は勉強になりました。福岡県では精華女子さんがベスト4を目指しているチームです。我々も負けじと全国でトップを狙えるチーム作りを、あと1カ月やっていきます」
今回はレフェリーの協力も仰ぎ、練習試合ではあるが雰囲気はできるだけウインターカップに近づけ、緊張感も経験させたという。同じチーム内での紅白戦、あるいは県内での練習試合では味わえない『全国仕様』のゲームの経験は、ウインターカップ本大会に向けて良い強化になったに違いない。県立小林の前村コーチとは会場で取材できなかったので、宮崎へと帰るバスの車中から電話で感想を語ってもらった。「久しぶりの真剣勝負でみんな刺激を得られたと思います。今、みんな寝ています」とのこと。
あと5週間でウインターカップ本大会が開幕する。出場するすべてのチームが一つでも多くの勝利を求め、日々の練習に励んでいる。