精華女子は4年連続5回目のウインターカップ出場を決めたが、福岡県予選での連続優勝は3で途切れた。東海大学付属福岡との決勝に敗れた後、斎藤風香は涙を流し、中園陽菜乃は「切り替えなきゃいけないんですけど、正直悔しい」と沈んだ表情で語った。昨年までのチームは世代トップレベルのポイントガードである樋口鈴乃、個人技で点の取れる絶対的エースの三浦舞華を擁して福岡県では敵なしだった。樋口の背番号4を受け継いだ中園、三浦の背番号7を受け継いだ斎藤はともに責任を感じていた。「先輩たちがずっと勝ち続けていて、この代で負けてしまうのはめっちゃ悔しい」と斎藤は言う。その一方で、大上晴司コーチはすぐに頭を切り替えていた。「樋口も三浦もいないから、中園も斎藤も去年は走ってリバウンドを取ってディフェンスを頑張っていれば良かったけど、今年は点を取ってもらわないといけない。ここからの1カ月でこの負けを良い負けにしたいので、本人たちの自主的な取り組みに期待したいです」。ウインターカップ本大会まで1カ月、精華女子は変わろうとしている。
「暗い表情をしていてもマイナスにしかならない」
──この数年はずっと勝っていたチームだけに、県予選で負けたショックは大きいと思います。決勝をどう振り返りますか。
斎藤 気持ちの面で負けていたところが一番の敗因だと思います。当たられた時に全員が「自分が」という勢いがなくてパスばかり回して、それでターンオーバーが多くなりました。私自身も相手にビッグマンがいたことで、自分の強みであるファストブレイクで走ることがなかなかできなくて、トランジションのチームなのに相手に走られてしまいました。
中園 相手は最後の最後までフィニッシュの気持ちで勝っていました。私は前半は相手が普通にマンツーマンが多かったので攻めることができたんですけど、後半にゾーンが増えると、相手が守っているところに突っ込んでミスが出ました。自分だけマンツーで付かれて後はゾーンだったり、自分たちがどう動いてもノーマークができなかったり、攻めづらいところがありました。その状況判断のスキルはあと1カ月で上げていきたいです。
──斎藤選手は新チームになった時に「プレーの幅を広げたい」と話した通り、3ポイントシュートを打つ意識も見られました。
斎藤 3ポイントシュートは決めたんですけど、他にももっと打てるシーンはあったと思うし、そこからのドライブがまだできていません。ゾーンディフェンスをされた時のペリメーターのシュートもまだ精度が低いので、しっかり上げていきたいです。
──声を出す意識は去年と比べて目に見えて出るようになっているようですね。
中園 去年もスタートとして出ていましたが、今年はラストだし、自分がコートの中で一番盛り上げてチームメートを鼓舞する、みんなもやるけど自分が一番やらないといけないと思っています。
斎藤 去年はただ先輩たちに言われて、鼓舞してもらってついていく感じだったんですけど、今回は自分がこういう立場で、負けている時間帯とか相手の流れとかで暗い表情をしていてもマイナスにしかならないので、前を向いてみんなに声をかけて、笑顔でやることを一番大切にしようと思っています。
「個人個人がこの負けから巻き返していく」
──それぞれ、自分の得意なプレーを教えてください。
斎藤 クイックジャンプシュートとドライブです。
中園 ファーストインパクトでのタッチダウンパスでブレイクに繋げることと、3ポイントシュートが得意です。
──プレーヤーとしてのお互いをそれぞれどう見ていますか?
中園 試合ではチームが苦しい時にドライブに行ってファウルをもらってバスケット・カウントを決めてきてくれたり、頼りになります。普段の練習では、私があまり言えるタイプじゃないので、言いづらいことでもみんなに言ってくれて、副キャプテンとして支えてくれていることに感謝しています。直してほしいのは結構一人で何でもかんでもやるところで、もうちょっと巻き込んでくれていいのにと思います。
斎藤 1年生からずっと一緒に試合に出ていて、3年生になって自分がもっとやらないとと思ってやっているんですけど、やばい時とかに声を掛けてくれるので助かります。今、自分で「あまり言えるタイプじゃない」って言いましたけど、練習中でも試合中でも思ったことは言ってほしいなとは思います。プレーの面ではもともとずっと3ポイントシュートも武器にしないといけないと思っていたのですが、最近になって確率も上がっていて、どんどん自分の持ち味にできているのはすごいと思います。
──東海大福岡との試合では、相手の留学生センターの高さに苦しみました。ウインターカップでも留学生のいる強豪チームとの対戦が予想されます。
中園 前半はリバウンドで勝っていたんですけど、後半になると相手も留学生だけじゃなく飛び込みリバウンドに来てセカンドショットでやられました。ビッグマンがいることでリング下をケアするんですけど、そこでボールアウトからまたリバウンドをやられたり。自分たちにビッグマンがいない以上、ウイングもセンターもしっかりボックスアウトすることがまずは仮題だと思います。
斎藤 自分たちの目標はウインターカップでのベスト4で、そのためにはオフェンスもディフェンスも気持ちの部分も全然足りません。今回、県でこういう負け方をしてしまったので、課題を自分たちでピックアップしてウインターカップ本戦に臨みたいです。
中園 リバウンド、ボックスアウトの部分はもちろん課題ですが、相手のオフェンスをよく見て止めることで自分たちの持ち味であるブレイクをもっと出せると思うし、個人個人がこの負けから巻き返していくのが大事です。自分たちがバスケットボールをできるのはあと1カ月だけなので、3年生が中心になって、1、2年生を巻き込んでやっていきたいです。全国の舞台で精華らしさを見せて、小さくても勝てるんだと証明したいです。
斎藤 そうですね。これからの1カ月の練習で結果は変わると思っています。自分たちはサイズのないチームで留学生のビッグマンはいないけど、小さくても勝てるんだと証明したいです。そうして全国ベスト4になりたいです。