ケミストリーを作れず不本意な敗退、繰り返さないためには?
カワイ・レナードとポール・ジョージを擁して優勝を目指したクリッパーズの2019-20シーズンは、カンファレンスセミファイナルでナゲッツに敗れたことで終わった。彼らにとってはカンファレンスファイナル優勝、ライバルのレイカーズより上に行くことがノルマだったがそれは果たせず。プレーオフで勝ち進めばほんのわずかなディテールで勝敗が左右されるため、負けたこと自体に責任を求めるのはナンセンスでもある。ただ、クリッパーズは負け方が悪かった。
3勝1敗とナゲッツを追い詰めながら3連敗を喫しての敗退は、むしろナゲッツを褒めるべきかもしれない。しかしクリッパーズはシーズンの正念場になっても各選手の調子が上がらず、チームとしても噛み合わないままだった。他のチームは『バブル』でまるで寮生活の大学生のように寝食をともにすることでチームの結束力を高めていったが、クリッパーズにはそれがなかった。カンファレンスセミファイナルまで来て「ケミストリーが十分ではなかった」というのは、仮に勝ち上がっていたとしても問題ではあった。
チーム内外で信頼の厚かったドック・リバースが更迭されたのは、チームをまとめきれなかった責任を負わされてのこと。どれだけ良い選手を集めても、チームとして結束できなければ勝つことはできない。
チームケミストリーを作るのに、主力を固定して長く同じコートに立たなければならないのだとしたら、レギュラーシーズンでの酷使を嫌がるカワイ・レナードの姿勢は問題だ。またジョージはプレーオフでの精神的な弱さが指摘されている。分かりやすくリーダーシップを発揮するタイプではない2人をチームの軸に据えることのリスクも、あらためて受け止める必要がある。クリッパーズがカワイとジョージのデュオでは戦えないと判断するのなら、来夏にはフリーエージェントになる可能性のある2人をトレードしなければならない。
しかし、新ヘッドコーチに就任したタロン・ルーは『ESPN』の番組に出演した際に「カワイもPG(ジョージ)もこのチームに長く残るだろう。彼らの求める環境はここクリッパーズにあると思う」と発言している。
今シーズンをアシスタントコーチとして戦ったルーをヘッドコーチに引き上げた時点で、クリッパーズとしては再編ではなく継続を選んだということなのかもしれない。ただ、新シーズンはレイカーズがますます充実し、ウォリアーズも本調子を取り戻して、西カンファレンスの競争はより激しくなる。カワイとジョージを引き続きチームの軸に据えて戦っていくのは良いとしても、チームケミストリーの問題、プレーオフの勝負どころでブラックアウトを起こさないための方策は不可欠だ。
カワイとジョージを軸に据え、彼らの役割とプレーをより明確にすること。脇を固めるサポートキャストの人選とローテーション。新シーズンに向けた本格稼働を前に、新たな指揮官となったルーが決めなければいけないことは山ほどある。