桐光学園を関東の強豪へと押し上げた髙橋正幸、強いチームではなく「日本で『1番良いチーム』になろう」

桐光学園を関東の強豪へと押し上げた髙橋正幸、強いチームではなく「日本で『1番良いチーム』になろう」

2020/11/05
髙橋正幸

2004年にインターハイ初出場を果たした桐光学園は、その後ウインターカップを含め15度の全国大会に出場する神奈川の強豪となった。今年は創部初となる新人関東大会で優勝し、関東ブロックの枠でウインターカップ出場をすでに決めている。現役Bリーガーとして宇都宮ブレックスの喜多川修平や名古屋ダイヤモンドドルフィンズの齋藤拓実を輩出するなど、母校の桐光学園を関東の強豪へと押し上げた髙橋正幸に強さの秘密を聞いた。

野球とバスケを交互にやる異色のキャリア

──まず初めに髙橋先生の経歴を教えてください。ずっとバスケットボールをやっていたのでしょうか?

小学校の時から野球をやっていて、バスケを始めたのは中学校からです。中学に野球部がなく、一緒に野球をしていた友達に誘われてバスケ部に入りました。高校は桐光学園で野球部に入り、日体大に進みました。ちょっと複雑なんですが、中学校の時のバスケ部の先輩がたまたまいて「一緒にやろう」と誘われて、バスケ部に入ることになりました。

いずれ体育の先生になって野球を教えられたらなという気持ちで日体大に行ったのに、日本で一番強いバスケ部に入ることになりました(笑)。部員は300人くらいいました。もちろん下で頑張っていましたが、当然ベンチにも入っていないです。なので、僕個人としてはノンキャリアです。

日体大では代々、顧問の先生がバスケの専門じゃない高校や中学に先輩たちがコーチ見習いとして行っていました。私もそこに呼ばれて、大学2年の途中から2年間ぐらい教えに行くようになり、そこから指導の面白さを知りました。

──そのまま教員となり、母校に戻ってきたということですね。そこからずっとバスケ部を見ているのですか?

そうですね。顧問はいたんですけど「専門じゃないから、ベンチとか練習のメニューとかもお前がやってくれ」となり。平成に入ってから神奈川県で一番結果を出しているようですが、運だけです。それまでは経験者もいなかったですし、全然強くなかったです。公式戦で1勝もできないような状況でした。

髙橋正幸

フルコートで練習できる環境が整い飛躍

──弱小だったチームをここまでの強豪校に押し上げることができた理由は何ですか?

一番は体育館が新しくできて、オールコートで練習できるようになったことですね。以前は体育館が週2回しか使えず、それも17時半から19時までの1時間半しか練習できませんでした。しかも他のクラブと平等に分けていたのでハーフコートしか使えませんでした。ホームセンターで1年に1枚ずつ板でも買ってくれば、いずれ体育館できるかなって、自分で体育館を作ろうかなと本気で思いましたよ(笑)。

それで練習量を増やすことができたのと、スポーツ推薦の枠ができたことですね。特待生ではないですし、もちろんいろいろな理由で断られることも多いですが、徐々に良い選手が入るようになりました。オールコートの展開ができるようになって、推薦で入ってきた子たちを叩き上げていったというところですね。原石を信じて、とりあえず磨けるだけ磨いています。

──環境が整い、素質のある選手が入ったことで強くなっていったようですが、それだけで強豪になれるとは限りません。選手を指導する上で大切にしていることや工夫していることはありますか?

私は負けず嫌いで、負けた後の帰りの運転が嫌なので、あのメンタルになりたくないから普段頑張っているだけです(笑)。

2時間の全体練習の後に1時間は自主練という形を取っていますが、今はトレーナーさんが先にサーキットトレーニングをやるというやり方をしています。昔は工夫もなく、根性しかなかったですがね(笑)。

自主練習の中にトレーニングを入れるチームもあると思いますが、技術練習の最後の方にそろそろトレーニングの時間だとなってどうしてもサボっちゃうんですよ。だから、先に追い込んでヘトヘトの状態でシュートも入らない状態の工夫が欲しいなと思って、先にトレーニングをするようになりました。昔は長時間練習できたりしましたが、今はできないですからね。

髙橋正幸

「ラグビーみたいな感じで育てていかないとダメなんです」

──体育館前に靴がキレイに揃えてあったり、来客用のスリッパを出していただいた時に行動が遅いと指摘していましたが、人間性を大事にしているように見受けらえます。

そういったところはフィロソフィがあるかもしれないですね。日本で「1番強いチーム」になりたいけど、日本で「1番良いチーム」になろうと言っていました。勝てない言い訳ですけどね(笑)。

例えばボールを大事にするとか、遅刻しないで時間を守る、高校生らしく挨拶をする。能代工業が強かった時代に「ウチもああなろうぜ」とは言っていました。いろんな大監督のことを見習ったり、遠征で一緒になった良いチームを参考にしたり、形から入リましたがその形が続けられるようになったとは思います。

──良い選手が入ったとしても、その才能を発揮できずに辞めてしまう選手も少なからずいると思います。髙橋先生はコミュニケーション力が非常に高いとお見受けしますが、生徒ともストレートに言い合ったりしているのですか?

「君は下手」って言っちゃいますね。「何が足りないですか」と選手から質問しに来ることもありますが、「身長を20cmくらい伸ばしたら」って言っています(笑)。冗談ですが、私の側から自分をさらけ出すことで選手の意見はよく聞くようにしています。選手じゃないから選手の気持ちは分からないですし、「今の伝え方はどう思う?」って。それが一番大事なんですよ。野球はサインを出して、指示通りに行動するじゃないですか。ラグビーみたいな感じで育てていかないとダメなんです。

状況判断するのは選手なので、だから練習はうるさいですよ。「はい違う」、「はい違う」とその都度教えます。バスケはサインで誘導できるスポーツじゃなく状況判断、空間認知は選手がやります。試合は自由にやらせるしかないので、練習中はよく声をかけます。

──すでにウインターカップ出場を決めていますが、桐光学園のバスケはどんなバスケで、今年は特にどういったチームになっていますか?

今年はサイズのあるインサイドがいるので、その子たちを中心にとは考えています。後はスローガンでもある『堅守速攻』をベースに。やっぱり弱い時の名残があって点数が取れないので守るしかない。関東大会に出る前まではほとんどオフェンスを教えていたことがなかったですから、「根性だ!」って言ってね(笑)。

理想は1クォーターに10点取られないくらいのディフェンスをすることです。ちょっと譲って15点にしようと、そうすると4クォーターで60点を目安に。これが堅守で、あとは能力がなくても走りはスランプないだろうということで速攻です。堅守速攻をお見せできればと思っています。

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