後半に入ってシャンソンが失速、第3クォーターでねじ伏せる
Wリーグの東地区では先週末でレギュラーシーズン前半戦を終えた。各チームが10試合を消化する中、ENEOSサンフラワーズは10連勝を記録。大差を付けての勝利を重ね、平均得点は90.7、失点は63.9と『女王』の名に恥じない圧倒的なパフォーマンスを見せた。
それでも、どのチームも一矢報いようと必死に向かってくる中で、すべての時間帯で圧倒できたわけではない。10月18日のシャンソン戦も、前半はリードしてもなかなか点差を広げられない接戦となった。
シャンソンは素早くボールを展開してセンターのディヤイ・ファトーにシュートを打たせようとするが、渡嘉敷来夢と梅沢カディシャ樹奈が長い腕を伸ばしてそのパスをことごとくカットし、ENEOS得意の速攻へと持ち込んで先手を取る。それでもシャンソンはすぐに軌道修正、今度は一転してアウトサイドから思い切りの良いシュートを放ち、これを高確率で決めていく。
第1クォーター終盤、運動量で上回るシャンソンがオフェンスリバウンドを3度奪取する分厚い攻撃を仕掛けるも、ENEOSは辛抱強いディフェンスで良いシュートを打たせず、ようやくルーズボールを抑えた時には宮澤夕貴が一人速攻で走っており、そこにボールを出して簡単に得点を奪う。この粘り強いディフェンスからのファストブレイクで、シャンソンに行きかけた流れを断ち切った。
その後もシャンソンは運動量を前面に押し出し、リバウンドやルーズボールにも奮闘することで接戦を演じるが、その勢いは40分間続かない。逆に質の高いプレーを後半も続けられるのがENEOSの強みだ。前半はペイント内に走る渡嘉敷へ合わせるパスのタイミングがズレていたが、試合の中でアジャスト。第3クォーター途中には2人がマークする渡嘉敷にあえてパスを出し、その渡嘉敷がゴール下まで強引にこじ開けてシュートをねじ込むビッグプレーも。第3クォーターを30-10と圧倒し、最終クォーターを待たずしてシャンソンをねじ伏せた。
全力でぶつかってくる相手の勢いを真正面から受け止め、相手の時間帯にも慌てることなくディフェンスから立て直せるのはENEOSの強み。シャンソンは水野妃奈乃が3ポイントシュート6本中5本成功と絶好調、野口さくらも渡嘉敷との1対1を制するなど光るプレーを見せて17得点、さらにはチームで走ってボールへの執着心も見せていたのだが、良い時間帯ではなく悪い時間帯に引っ張られてしまい、大いに奮戦していたはずが点差が開いていった。
「皇后杯に向けてしっかり練習していきたい」
ENEOSの梅嵜英毅ヘッドコーチは「シャンソンの勢いに圧倒されたが、後半に挽回してくれた」と試合を総括するとともに、前半戦の10試合を「前半ちょっとこっちの緩みがあって、後半引き締まって一気に離すことが多かった」と振り返る。
「ケガ人が連続で出て、全員フルにやれる時期が少なかったんですけど、若手の底上げも上手くできている。キャプテンの岡本(彩也花)、渡嘉敷を中心に、今までの強いチームなのであまり心配はしていなかった。後半戦に向けてこれ以上ケガ人を出さないことが一番。皇后杯に向けてしっかり練習していきたい」
実際、岡本に宮澤、林咲希と主力どころにケガが相次ぐ苦しい状況にはあった。それでも辛抱強く起用してきた梅澤が、渡嘉敷をベンチに下げた時間帯に自信に満ちたプレーで攻守を引っ張っていた。奥山理々嘉は先発起用に応え、2年目の星杏璃、ルーキーの中田珠未も思い切りの良いプレーを披露。特に前半戦最後のゲームは、若手の成長を確認できる収穫の多いものとなった。
岡本彩也花は10試合中4試合にしか出場できていないが、前節の全勝対決となった日立ハイテク戦から戦線復帰。今回のシャンソン戦では先発に戻ることができた。最初はベンチから眺め、そして復帰してコートに立った10試合を岡本は、「苦戦したとは感じないですが、毎ゲーム課題が残る」と振り返る。
それでも、課題を乗り越えつつ結果も出している。言い訳にできる要素が多くても、きっちりと勝ち切るのがENEOSの常勝チームたる所以だ。岡本自身も「まだピークではないですが、自分に与えられた仕事をしっかりやることを意識した」と手探りのプレーながらも、前半戦最後の試合では11得点とスタッツも残した。
レギュラーシーズンは年明けの再開。それでも変則日程の今シーズンはこの後に皇后杯が入って来る。梅嵜ヘッドコーチと岡本キャプテンも「皇后杯に向けてはやるべきことをやっていく」とタイトル獲得に油断はない。今シーズンもENEOSは盤石に見える。
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