ラジョン・ロンド&レブロン・ジェームズ

「熱くなっている時もコミュニケーションが取れる関係」

レイカーズのNBA優勝は実に10年ぶり。その10年前、ラジョン・ロンドはレイカーズに敗れたセルティックスの一員としてファイナルを戦っていた。3勝2敗とリードしながら、最後は連敗で優勝を逃した10年前の屈辱を、ロンドはようやく晴らせたことになる。

今シーズンのロンドはケガもあり、コンスタントに活躍できたとは言い難い。しかし、ヘッドコーチ以上に卓越したバスケIQを持つ『コート上の指揮官』は、プレーオフでの戦いが進むにつれて存在感を増していった。得意のアシストはもちろん、パスを警戒させて自分でシュートに持ち込むプレーも多用した。セカンドユニットのリーダーとして彼がボールを運ぶことでレブロン・ジェームズの負担を軽減し、エースのスタミナを勝負どころまで温存させたことも、レイカーズの底の見えない強さに繋がった。

将来は指導者になりたいと公言しているロンドは、この『バブル』でコーチングスタッフのミーティングに加わっていたという。昨シーズンにロンドがケガをしていた時期、ルーク・ウォルトンがスタッフミーティングに彼も参加することを許可した。フランク・ボーゲルはそれを踏襲したというわけだ。「優勝チームのコーチのロッカールームを使い、フィルムセッションに参加することで、今まで知らなかったたくさんのことを学ぶことができた。現役選手でありながらコーチ陣のミーティングに6週間も入れてもらえたことには感謝しかないよ」

そこで得た経験は、今まで以上にコートで生きた。「映像で相手チームを分析して癖を学べば、コート上で精神的に優位に立つことができる。僕にとってバスケットボールはフィジカルよりメンタルが大事なゲームだ。僕はいつもチェスにたとえるんだけど、相手の2手先を行けば試合を優位に運ぶことができる」

優勝を決める第5戦の試合前、ロンドはレブロンから「優勝が懸かった試合では乗り越えなければいけない壁がある。それを経験しているのは俺たち2人だけだ」と声を掛けられたそうだ。もっとも、そのレブロンの存在がロンドの自信を裏付けていた。「レブロンが2017年のファイナルでウォリアーズに負けた時、もし僕が一緒にプレーしていたら、どのチームだろうと先に4勝されることはないと思ったんだ」

以前からお互いにリスペクトしている2人だが、ロンドは「このシリーズでは何度も彼にボロクソに言われたよ」と苦笑する。「それは僕がリスクの高いプレーをしたり、ミスしたからだ。彼との関係は素晴らしいし、お互いに理解し合えていると思う。毎試合、僕はレブロンに質の高いプレーを求める。今日の第1クォーターもレブロンのミスを注意したら怒鳴り返されたよ。つまり、熱くなっている時もコミュニケーションが取れる関係だということさ」

レブロンも、ロンドを次のような言葉で称賛している。「ディフェンスがどうプレーして、ゲームがどのように動いているかを見ることができる。リーグ全体を見回してもあまりいない存在だ。ポストシーズンでは、その力はとてつもないものだ」