尽誠学園を強豪へと引き上げた色摩拓也コーチ(後編)「当たり前じゃないぐらいのレベルを当たり前に」

尽誠学園を強豪へと引き上げた色摩拓也コーチ(後編)「当たり前じゃないぐらいのレベルを当たり前に」

2020/10/28
尽誠学園

尽誠学園はウインターカップに過去13年で12回出場し、2度の決勝進出を果たしている『四国の雄』だ。また、NBAプレーヤーである渡邊雄太を輩出したチームとしても知られる。しかし、伝統ある強豪校というわけではない。創部9年目の初出場までは全国大会を経験しないチームだった。「最初は部室もなかった」ところからチームを強豪へと引き上げた色摩拓也コーチに、指導者としての考え方やチーム作りのポリシーを聞いた。

「プレー中にどう考えて判断するのかを突き詰める」

──ウインターカップの予選が始まりますが、今年の尽誠学園はどういったスタイルですか?

今年に限らず、ウチは何でもありです(笑)。選手たちは「自分たちは小さいので走るバスケを」と言うかもしれませんが、私自身そうは思っていません。2秒でシュートを打ってもいいし、24秒で打ってもいい。ただ、練習から「今のシュートはどうだったのか」を選手と話して、プレー中にどう考えて判断するのかを突き詰めるようにしています。

例えば「打てるタイミングだったのに打たなかった理由は?」と問うのですが、打てたけど相手が打たせたい雰囲気だった、パンチング的なドリブルを入れることで誰かがカッティングしたり、自分がもう一度攻めることを考えました、というのであれば「良い判断だった」と伝えます。

逆に同じシチュエーションなのに「今のはなぜ打たなかったんだ、絶対シュートだろう」と言うこともあります。選手としたら、さっきは褒められたのに今度はダメなのかと考えますよね。それはゲームの流れや自分のポジショニング、同じシチュエーションのようでも付いた選手が相手のエースなのかファウル要員なのか、瞬時に判断してプレーを変えられるようになってほしいです。

──尽誠学園は留学生不在のチームです。全国大会では留学生対策、高さ対策が必要になってきますね。

高さ対策は毎年必要ですが、単に「ここにボールが入ったらこう守るよ」ではありません。そこまで情報を集めて対策をするのが今の高校バスケなので、それを逆手に取るようなチーム作りも必要だと思います。マンツーマンは絶対にやらないといけないですが、私はゾーンも好きですし、対戦相手によって対策は練っていきます。全国大会でも無策ではないのですが、相手の動きによってこちらで対応を指示することもあるでしょう。

選手たちにはそれにアジャストしてほしいと思いますし、「ここまではやってほしい」というのもありますが、できなかったら選手が悪いとは思いません。そうではなく、「この選手がここまで考えられるようになったけど、ここから先は難しいかな」という時には、その選手の良いところを伸ばしてあげることを考え、後のところは戦術であったり外からの私の声であったり、その選手の弱いところを補うことのできる別の選手をこのタイミングで入れたり、そういうことを私が考えていけばいいと思っています。

選手たちにはよく言うのですが、留学生がいてもいなくても当たり前のことを当たり前にやれることが大事で、強いチームもちょっとしたミスから崩れてしまうものです。留学生のいるチーム、強いチームと当たる時に、ウチがそこで簡単なミスをしないのは前提で、当たり前じゃないぐらいのレベルを当たり前にやれるだけの知識と練習を積み重ねていかなければ、留学生がいる全国の強いチームとは勝負できません。

──決められたプレーを遂行することも大切ですが、状況に応じてアジャストするのはさらに難しくなります。それでもこのアジャストにこだわることで、選手たちのバスケIQは高まりますね。

そう思います。他のチームの選手たちがウチのバスケを見た時に「尽誠学園ってなんか難しいことやってるな」、「よく分からないな」と思っているのに、ウチの選手たちが「どこが難しいんだろう?」となってほしいです。そうなれば公式戦でスカウティングをいくらされても大丈夫になっていきます。

その上で、普通だったらこう動くというバスケットボールの当たり前の動きでも、尽誠学園だったらこう変えていく、というプレーをしていきたいです。多分それはバスケットを知る外部の人から見れば「なんだこれは?」と思うようなものだと思いますが、それが全国の強豪を相手に尽誠学園が勝つための動きなんです、と言えるものを作り上げたい。そして40分間の試合の中で子供たちが状況に応じて判断して動けるようになれば、どこが相手でも勝負できるというバスケットをやっています。

尽誠学園

「自然と応援されるようなチーム」を目指して

──高校バスケ界で強豪校を率いる40代のヘッドコーチは若い部類に入ります。大御所のベテラン先生たちに挑む気持ちは?

大御所の先生というより、全国の強豪校との対戦という感じです。母校の恩師と対戦したこともあって、渡邊雄太が2年生の時に初めて当たったんですけど、記事なんかでも『師弟対決』みたいにすごく煽られていて、それを見ていた選手たちの緊張を解く意味でも「試合で戦うのに恩師とかは一切関係ない」と伝えました。試合が終わった瞬間に挨拶に行きましたけど(笑)。

恩師との対戦に限らず、自分たちは全国の強いチームに挑もうとしているわけですから、どこと対戦するにしても相手に自分たちのバスケをぶつけにいく感覚でやってもらわなければダメだ、という話はしています。

──ものすごくバスケを研究している『バスケ博士』だと聞きました。どのような勉強をしていますか?

まずバスケ博士ではありません(笑)。特に勉強しようとは思っていないんです。自分自身で分かっているんですけど、良いものであっても映像であまりにも見てしまうと「ああしたい、こうしたい」が出すぎてしまって、「結局何がしたいんだろう?」という状況に陥ってしまいます。ちょっと変な話ですが、勉強するつもりではなく何かのタイミングで映像が目に入って「ちょっと良い動きをしているな」とか、誰かと会話をしていてヒントになるフレーズが出てきた時に「これを勉強しなければ」と考えます。勉強するために映像を見るのではなく、タイミングが来ればですね。そこで調べて面白いと思えば、ウチのチームに落とし込めるのかどうか探っていくようにしています。

──ウインターカップ予選が始まりますが、今のチーム状況はいかがですか?

3年生が中心のチームで、1人ではなく複数の3年生がコロナの状況も踏まえてくれて、生活面も練習もしっかりやれていると思います。四国ブロックで優勝したので香川県の男子は出場枠が2つありますから、予選で負けることはないだろうと思っています。今年は全国大会が1回しかない中で、そこにどれだけ重きを置いて日々練習を頑張れるかという話は今の段階から選手たちにしています。身長が大きいチームではないので、下級生の成長にも期待しながら練習しています。

──尽誠学園を応援してくださる方々にメッセージをお願いします。

「応援してください」と言える感じまで行けるかどうかがまず大事です。渡邊雄太がいた頃から言っているのですが、バスケファンの方々がパッと見ただけで「このチームは良いよね」、「良い選手がいるね」と思われるようなチーム、選手でありたいです。「頑張っているから応援してください」ではなく、パッと見られた段階で良い印象を持ってもらい、良い意味で「高校生らしいよね」とか「見ていて気持ちが良いね」と思ってもらい、プレーや戦術面までもっと見たいと思ってもらいたいです。だから応援してくださいとお願いするのではなく、自然と応援されるようなチームでありたい。それを目指して頑張っています。

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