琉球ゴールデンキングスにとって大事なシーズンの開幕、岸本隆一は「3歩進んで2歩下がるぐらいがちょうど良い」

琉球ゴールデンキングスにとって大事なシーズンの開幕、岸本隆一は「3歩進んで2歩下がるぐらいがちょうど良い」

2020/10/02
岸本隆一

昨シーズン、琉球ゴールデンキングスはオフに主力選手の大量移籍、シーズン中盤には指揮官の退任と激動に見舞われながらも、シーズン中断時点で西地区1位をキープして3年連続の地区タイトルを獲得した。そして今オフは日本人選手、外国籍選手ともに即戦力を獲得し、チームの底上げに成功している。2021年には1万人の新アリーナもオープンする予定。琉球にとって大事なステップアップとなるシーズンの開幕へ向けた意気込みを『生え抜きの看板選手』である岸本隆一に聞いた。

潰瘍性大腸炎を公表も「心配はあまりしていない」

――いよいよシーズン開幕直前となります。今の仕上がり具合はいかがでしょうか。また5月に指定難病の潰瘍性大腸炎であることを公表しましたが、病気への不安などどのように感じていますか。

例年になく早い段階でシーズが終わって、長い間ゲームから遠ざかっていた割には良い状態で開幕を迎えられると思います。練習試合で出た課題は、良い時は良くても悪い時に立て直せないところ。その悪い時間帯をいかに少なくするのか、そのためにどうハードワークして、どうタフにプレーしていくのか。そこの部分はシーズンを通して成長していく必要があると強く感じています。

病気の心配はあまりしていなくて、それよりもバスケットから長い期間離れていたことが不安でした。それも練習試合をこなしていくことで感触は良くなっています。今は身体だけでなく、シュートタッチなど感覚的な部分も元通りになってきました。

――公表することでいろいろな反響があったと思いますが、岸本選手の内面で何か変化はありましたか。

大きなことで言うと人生観が変わりました。本当にクヨクヨしなくなり、何事にも動じなくなりました。入院中や体調が悪かった時期を考えれば、今がどれだけありがたいことなのか。本当にプレーできる喜びを毎日感じながら過ごせているので、そういったところで何が起きても一喜一憂しなくなったと感じています。

――昨シーズン終了直後の取材では「毎試合、この試合が最後になっても後悔しないようにプレーしている」と言っていました。

あの時とはまたちょっと違います。やっぱり明日もバスケがしたいですし、明日にはもっと上手くなりたい気持ちがあります。昨シーズンはどこまで自分を追い込んでいけるのか、極限状態まで持って行くことにチャレンジした年でありました。それに対して取り組んできたことに後悔はしていないですし、むしろやって良かったと思っています。

ただ、今はそこまで追い込まないようにしています。それこそ試合でミスとかいろいろことがあっても「明日があるから」と思っています(笑)。そこは昨シーズンとは逆になっていますね。日々、良いことも悪いこともあり、また明日は違う日になる。明日に対して希望を持って練習に取り組み、日々の生活を過ごしています。

――昨シーズンはチームを土台から作り直すことになり、琉球が培ってきた文化を継承することも大変だったと思います。チームにずっと在籍していたメンバーが抜けていく中、残り続けている選手として、自分が伝えていかなければと思う部分はありますか。

難しいところはありますけど、チームが作り上げてきた文化は間違いなく残っていると思います。その文化はやっぱり、どのチームよりもハードワークする、どういう状況に置かれてもタフに戦っていくことです。そこはヘッドコーチ、キャプテンがすごく口にしていますし、僕自身も同じ気持ちです。自分が文化を伝えていく部分について、感じることは本当にたくさんあるんです。ただ、キングスというより沖縄の風土として、ビジネスよりも文化をすごく尊重してきた歴史があって、そこは間違いなくキングスの文化にもなっています。

いろいろな取材の場で大きなことを言っていますけど(笑)、『日本のバスケットがどうあるべきか』の姿をキングスは示して行くべき、という思いはずっと持っています。長年一緒にやって来た選手がいなくなっていく中でも、チームとして忘れてはいけないものはたくさんあります。ただ、そこに固執して新しいものを受け付けないのは絶対に良くない。それは自分自身の歩みを止めてしまうことにもなります。進化しつつも、キングスの根底にある文化を表現していく。それは良いプレーすることよりもずっと強く思っています。

岸本隆一

「今シーズンはやることがいっぱい、それは自分の可能性」

――そういったチームの理念に関わる部分で、今夏からかつてキャプテンを務めていた地元出身の与那嶺翼さんがアカデミーコーチとしてチームに復帰しました。

翼さんは僕にとって見本になる方です。アカデミーの選手だけでなく、自分もまだまだ教わることがいっぱいあります。翼さんが持っている人間力、誠意といった部分はアカデミーだけではなく、トップチーム、また琉球ゴールデンキングスという組織全体にもっと落とし込んでいくべきものと思っていますし、これまで以上に自分もかかわっていきたいです。

――来春からはプロに直結するU18のチームもできます。地元の生え抜き選手として、彼らに見せたい選手像はありますか。

どうやってプロに行くのかが明確になりつつある中、彼らの見本でいなければいけません。それにプラスして、既定路線から外れる勇気、大胆さみたいなところも感じ取ってもらいたいです。そういう部分を持っているのが沖縄の選手で、昔から言われる「沖縄の選手って独特だよね」のところは、アンダーカテゴリーの選手たちにも受け継いでほしいです。そういう姿勢や思いはどんどん下の子たちにも伝えていきたいと思います。

――年明けには日本初と言ってもいい1万人規模の本格的なアリーナがオープンします。

僕自身とても楽しみにしていますが、まだプレーしたこともないので自分たちのホームアリーナという感覚まではないです(笑)。実際にプレーした時にどれくらいの興奮があるのか、見ている人にどう感じてもらえるのか。それは全く想像できないですね。ただ、練習試合をやった時にふと思ったのですが、逆に沖縄市体育館での試合が残り少ないことに僕自身が感傷的になりました。しかも相手がサンロッカーズ渋谷さんで、キングスにゆかりのある選手とコーチがいたので。彼らとここで戦うのも最後かと、いろいろなことを考えてしまいました。

――今オフに今村佳太選手と船生誠也選手が加入して、田代直希選手が故障から復帰したため、ボールプッシュのできるハンドラーが一気に増えました。その中で、自身の役割をどうとらえていますか。

今シーズンは役割が増えたように感じています。他の選手がボールプッシュをする時のサポート役、時にはプレーメーカーにもなります。オフェンスが重たい時は、ちょっと強引にプレーして無理やりにでも打開しなきゃいけない場面も出てきます。ディフェンスがルーズになっていたら自分が激しく当たることで、チーム全体のインテンシティを上げていく。

今シーズンはやることがいっぱいありますが、それは自分の可能性だと思ってチャレンジしていきたいです。イメージとしてはNBAクリッパーズのルー・ウィリアムズです。飄々とプレーしているように見えて相手の弱点を突いていく、彼のようなイメージでオフェンスはやっていきたいですね。彼のようなコンボガードとして、スコアラーでありプレーメーカーであり、時にはポイントガードもできるようになりたいです。

――相手の2番にもマッチアップする機会が増えてきていますが、リーグ全体としてここ数年はガードもサイズアップしています。今シーズンは外国籍ガードも増える中、守備での高さのミスマッチはより厳しくなってきます。

そこは昨シーズンでだいぶ慣れて、オフェンスの面では自信を持ってプレーできる手応えもあります。昨シーズンはBリーグ全体で、スイッチするディフェンスを多用するチームが多く、そこで相手のビッグマンとショットクロックがない場面で1対1をしなければいけない状況も少なくありませんでした。そこで攻める練習はこのオフシーズンで積んできました。だから今シーズンもスイッチしてきたらありがたいです。ペリメーターの外国籍選手とのマッチアップは本当に楽しみなだけです。むしろ、そのマッチアップになっても自分にアドバンテージがあると思って、そこは積極性や自信を失わずにプレーしていきたいです。

岸本隆一

「国内だとディープスリーは絶対に僕が先駆け(笑)」

――チームとしては優勝を狙う中、岸本選手個人の新シーズンの目標はどう設定していますか。

日々成長です。過程にこだわると毎年言っていますが、病気になって感じたこともあって、3歩進んで2歩下がるぐらいがちょうど良いし、世の中はそういうものだと思うようになりました。チームとして良くなっていれば、自分が試合でダメだったとしてもそれで後退したわけではない。そこで悪くても、いきなり多くを変えてはいけない。そういう時に自分のことをもう一度信じて、コーチとみんなで同じ方向を向いてやれるか。そういうことが大事と思っていて、ネガティブなことにあまり引っ張られずに進んでいきたいです。それが3歩進んで2歩下がるで良いぐらいで、そうやってシーズンを戦っていけたらと思います。

――岸本選手といえば、Bリーグ屈指のシュートレンジの持ち主です。ブレイザーズのデイミアン・リラードを筆頭に今やNBAではハーフコート近くからでもシュートを狙う姿を見るように見るようになりました。そこを突き詰めたい気持ちはありますか。

そこは狙って行きたいんですけど、さすがにリラードみたいなタイミングではどうかとは思います(笑)。ただ、ディープスリーは切り札としてずっと持っているつもりなので、タイミングだけ履き違えないようにしたいですね。そこは自分本位にならず、相手にとって一番嫌なタイミングで切り札を出せるようにしていきたいです。ただ、個人的にはハーフコートからでもチャンスがあればどんどん打ちたいですし、そういう怖さみたいなものも相手選手に感じ取ってもらえるように日頃から狙っていきます。

大きなことを言うつもりはないですが、国内だとディープスリーは絶対に僕が先駆けなので(笑)。だから、自信のあるなしの話ではないですね。すでに持っている自分の武器をいつ出すかの話で、相手には「気を付けてね」という感じです(笑)。

――シーズン開幕戦は宇都宮ブレックス、いきなり優勝候補とのの試合です。開幕戦は60分の1なのか、どういう意識ですか。

60試合のうちの一つとは思っていません。もちろん宇都宮というタフなチームとの対戦だからという部分もありますが、それ以上にいろいろな人がBリーグの開幕を待ってくれている中で、インパクトのある試合を見せたいです。あらためて「キングスって応援したくなるよね」と思ってもらえるようなプレーを表現したい思いがあります。応援してくれている方々の期待以上のパフォーマンスを見せたいと、とても意識している開幕戦です。

――最後にファンへのメッセージをお願いします。

コロナ禍にあって本当に長いオフシーズンとなりましたが、その分たくさんの皆さんがシーズン開幕を楽しみに待っていると思います。その期待に応えられるようにしっかりプレーしていきたいです。そして、何よりも僕自身がこの開幕を一番待ち望んでいるので、ファンの皆さんの叱咤激励を力に変えて、僕自身がバスケットを楽しみたいです。今シーズンも応援よろしくお願いします。

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