レブロン・ジェームズに移籍を決意させたマジック&ペリンカの『計画』を考察する

2018/07/05
NBA&海外
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文=神高尚 写真=Getty Images

レブロン加入で力を発揮するタイプの若手を集める

FA市場で最大の注目であったレブロン・ジェームスは早々にレイカーズ入りを決断しました。これにより2017-18シーズンに西カンファレンス11位に沈んだレイカーズは、一躍来シーズンの優勝候補の一角に躍り出ました。しかしロケッツやウォーリアーズだけでなく強豪チームがひしめくウエストでは、レブロンの加入だけでトップを狙えるわけではありません。チームの再建を託されて昨年就任した球団社長マジック・ジョンソンとロブ・ペリンカGMが描いてきたビジョンが大きく関係してきます。

低迷していたレイカーズが上昇曲線を描くのに一番簡単なのはフリーエージェントでのスター選手獲得です。そのために重要なのが高額サラリーを提示するためサラリーキャップに空きを作ること。昨年からトレードを活用し、ティモフェイ・モズコフやジョーダン・クラークソンといった複数年の契約期間が残っている選手を放出し、多少高額でも1年契約の選手を中心に集めました。その結果、今年のFA市場が解禁する段階でレイカーズにはスター選手を2人獲得できるだけのサラリーキャップの余裕が生まれました。

特にこのオフは各チームがサラリーキャップに空きがないため、自分達に有利な状況を計画的に作り上げたのです。レブロンという最高の結果を得たわけですが、他にもポール・ジョージやデマーカス・カズンズなど複数の候補がいました。他にも若手のスター候補に高額なサラリーを提示できる余裕があります。

もう一つ注目したいのはドラフト戦略です。ブランドン・イングラムやロンゾ・ボールという将来の中心として指名した選手もいますが、それよりも下位指名で獲得した選手にフリーエージェントでのスター獲得と合わせた狙いがあります。

昨年の指名はカイル・クズマとジョシュ・ハートでしたが、ともに3ポイントシュートが得意でシュートセレクションが良いタイプでした。積極的に自分で切り崩すというよりはチームオフェンスの中で適切なポジションでパスを受け、ディフェンスの状況を見てシュートとドライブを使い分けます。ディフェンスやリバウンドでも自分の役割を果たすことができるクレバーな選手です。

つまり下位指名で狙ったのはフロアを広げる3ポイントシュートがあり、エースからのパスを受けて確実に得点に繋げることができる、ロールプレイヤーとして機能する選手です。単に若い有望株というのではなく、強力なプレーメイカーを獲得すれば直ぐに戦力になるタイプをドラフトで狙ったわけです。

今年のドラフトでも25位でモリッツ・ワグナーという3ポイントシュートの上手いセンターを指名しており、レブロンのためのドライブコースを空け、キックアウトを受けて外から射貫く体制も整えました。よくあるチーム作りとしては中心選手をドラフトで指名し、フリーエージェントでロールプレイヤーを短期契約で集める形ですが、レイカーズはトレードで得た下位指名権を使って中長期的なビジョンの中で活躍できるロールプレイヤーを手に入れました。

レブロンがレイカーズに決めた理由の中には「長期的なビジョンに共感した」という話があります。単にフリーエージェントで大物選手を狙うだけでなく、チームとしての機能性を確保できるチーム作りをしてきたのがマジックとペリンカのコンビでした。レブロンのキックアウトから若手たちが得点を重ねていく。そんな効率的なオフェンスが期待できるからこそレイカーズへの期待も高まっています。

これまでの『速い展開』は維持か、切り替えか?

レブロン効果への期待の一方で、不安もあります。若手に切り替えたこの数年のレイカーズは、ウォリアーズのアシスタントコーチだったルーク・ウォルトンをヘッドコーチに迎えランニングゲームを志向してきました。キャブス時代もヒート時代も早い展開よりもしっかりとハーフコートでセットするオフェンスをしてきたレブロンとの相性は未知数です。

そして若さのあるレイカーズは昨シーズン、ターンオーバーがリーグで2番目に多く、フリースローの確率はリーグ最下位でした。レブロン自身もフリースローが苦手なので、急激に改善するのは難しそうです。

このランニングゲームを引っ張ったのはロンゾ・ボール。自らディフェンスリバウンドを確保しオフェンスの切り替えを早め、素晴らしいコートビジョンで驚きのアシストを連発しました。その一方でハーフコートオフェンスを組み立てるのには苦労しています。特にシュートに関してはセレクションにも確率にも問題があり、3ポイントシュートは積極的に打ちながら30.5%の低確率に終わりました。3ポイントシュートが得意な選手を揃えたにもかかわらず、チームの確率はリーグで2番目に低く、ポイントガードとして足を引っ張りました。

キャブスのレブロンは、ロンゾと同じくディフェンスリバウンドを取りポイントガード的に振る舞ってきましたが、基本はゆっくりとフロントコートに運び、ハーフコートオフェンスを効率的に組み立てるタイプです。その点ではロンゾの得意技をレブロンが消してしまう可能性も、お互いの苦手な部分を補い合う可能性もあります。

さらにここに高いアシスト力でプレーを組み立てるロンドを獲得したので、誰が主軸としてコントロールするかでオフェンスの方向性は大きく変わってきます。

また将来のエースとして期待されるブランドン・イングラムは2年目で成長を見せたものの、強引にシュートを狙うよりも周囲に合わせてプレーすることを優先しており、エースとしての強気な姿勢に欠ける部分があります。そこにリーグの絶対的なエースであるレブロンが加入し、さらに強烈な個性を放つランス・スティーブンソンまで加入してきました。2人を見習って強力に自分を出していくのか、それとも2人にボールを譲って黒子になってしまうのか。イングラムがどちらの道に進むのかも注目されます。

レイカーズはどんな形でレブロンを使っていくのか。これまでの流れを捨てて完全にレブロンが好むオフェンスを目指すのか、若手たちに仕込んできたオフェンスにレブロンを融合させることを目指すのか。そして新加入選手達は若手にどんな影響を与えるのか。若手複数人とスパーズのカワイ・レナードをトレードする噂もあり、レイカーズがどんな動きをし、どんなチーム構成を目指すのか、まだまだ注目は尽きません。