Bリーグ

Bリーグの2020-21シーズンが10月に開幕する。新型コロナウイルスの影響で昨シーズンは途中で終了となり、今シーズンも観客を半分しか入れられないなどコート外の話題が多くなっているが、シーズンが始まればコートで戦う選手たちが主役となる。ここから開幕まで、テーマ別に注目選手をピックアップしたい。今回は主力選手から『チームの顔』へと飛躍を期待したい3人を紹介する。

中山拓哉 攻守に『超攻撃的』なバスケの牽引役

特別指定で秋田に加わったBリーグ初年度を含めるとすでに4シーズン在籍。気が付けばチームで一番在籍の長い選手になった。チームスタイルとして定着した激しいディフェンスを象徴する存在だが、オフェンスでもステップアップを求めたいところ。前田顕蔵ヘッドコーチは今シーズンからオフェンスも速いペースに変えたいと語る。ディフェンスの強度は落とさず、さらにオフェンスでも走るのは大変だが、チームが新たなスタイルをモノにするには中山がチームメートを引っ張るしかない。

まずは走ってペースを上げること。次は今まで以上にフィニッシュに直結する仕事を増やすことだ。ディフェンスには自信を持つ一方で、得点は昨シーズンの平均が6.7得点と、プレータイムを考えると物足りない。フィジカルを生かした力強いドライブという武器に、そこからのキックアウトでのチャンスメークを向上させ、決して得意ではないジャンプシュートの確率を上げること。

26歳はまだいくらでも変われるし、成長できる年齢だ。ディフェンスマンからオールラウンダーへのレベルアップを期待したいし、また変にいろいろ器用になって丸くなるのでなく、個性を生かす形での成長に期待したい。今シーズンからはキャプテンも任される。責任は重くなるが、期待を背負う準備は十分すぎるほどにできているはずだ。

原修太 愛されキャラから抜け出し、真の中心選手に

NBLラストシーズンにアーリーエントリーで千葉に加入してから4年半、様々な課題に直面しながらも原はステップアップを続けている。大学までは「何も考えずに得点だけ狙っていました」という彼は大野篤史ヘッドコーチの指導を受け、まずはチームのスタイルであるフィジカルな守備、ハードワークができるように身体を改造し、続いて自分で考えてプレーする力も養った。Bリーグになってタイトル争いを続ける千葉で、彼はチームの求めに応じて変化しながらプレータイムを勝ち取ってきた。

今オフも千葉は積極補強に出て、ウイングには赤穂雷太、佐藤卓磨、シャノン・ショーターが加わった。いずれも即戦力の実力を持つが、原にはかつての自分が学び、順応するのに苦労したジェッツのバスケへの理解度という点で大きなアドバンテージがある。千葉は常に新しいものを取り入れて成長していこうとしているが、いざとなった時に立ち返るのは『激しいディフェンスから走る』というスタイル。ここで原が力を発揮することは、チームの安定した強さに繋がる。

2016年3月27日、アーリーエントリーで加入していた23歳の原がプロ初得点を挙げた時、船橋アリーナは大いに沸いた。地元船橋出身、しかも船橋アリーナから歩いてすぐの高根台中学校の出だとファンが知っていたからだ。この試合後、ヒーローインタビューに駆り出された原は「このチームで長く活躍したい」と抱負を語った。小野龍猛が退団した今、彼は西村文男と富樫勇樹に続く古株となった。次に変わるべきは『ジェッツの息子』という愛されキャラ的な立ち位置から抜け出して、真の中心選手になること。小野が担っていた精神的支柱となるのは、このチームで人一倍努力して結果を出してきた原修太であるべきだ。

橋本拓哉 『走るバスケ』で眠っていた才能が開花

能力が高すぎるがゆえに器用貧乏にも取られかねなかった選手が、天日謙作ヘッドコーチの『走るバスケ』に見事にハマった。ハンドラーもこなす器用さは封印し、とにかく正しいレーンを走ることで相手を受け身に回らせ、自分たちの形に持っていく。「調子の良い選手は下げない」方針の下でプレータイムは26.2分へと伸び、平均得点は初の2桁(10.5得点)。それ以上にBリーグ4年目で初めて勝率5割を超えたチームに貢献したという自信を得られたのが昨シーズンだった。

2番ポジションで188cm、さらにはウイングスパンもあるサイズの強み、フィジカルとスピードを兼ね備えたバランスの良い橋本の能力は、速い展開の中で最大限に生かされた。1対1のディフェンスの強さとともに、トランジションからの3ポイントシュートでも高い確率をマーク。昨シーズンの大阪エヴェッサの強さはアイラ・ブラウンの加入、そして迷いなくハードワークを続ける橋本の成長によってもたらされたものだ。

一昨シーズンは不祥事により公式試合出場権が剥奪される処分を受け、終盤の2試合でプレーしただけ。試合はもちろんファンの前に姿を見せる機会もなく、練習環境も満足ではないこの期間を無駄に過ごさなかったからこそフィジカルもメンタルも成長し、昨シーズンを充実したものにすることができた。チャンピオンシップ進出が見えていた昨シーズンが中断になってしまったのは残念だが、新シーズン開幕でこれまでの良い流れを途切れさせるのではなく、さらに向上していけるか。橋本にとっては勝負のシーズンとなる。