勝負どころで力を発揮したバトラー「これが僕の仕事」
東カンファレンスのファイナル、セルティックスvsヒートは、初戦からいきなりオーバータイムの激闘となった。
ヒートはダンカン・ロビンソンが試合序盤にファウルトラブルに陥り、試合を通じて17分しかプレーできないことに。それでも、彼に代わって40分のプレータイムを得たタイラー・ヒーローが見事にその穴を埋める。序盤はこのファウルトラブルに加え、バム・アデバヨがリズムに乗れずにミスを連発。よく統率されたディフェンスを見せるセルティックスが、そのミスを突いて得点を重ねて2桁のリードを作った。
それでもディフェンスを修正することで立て直し、バトラーにボールを集めて得点も動かすことで主導権を奪い返す。激しいディフェンスが行きすぎてファウルがかさみ、再びビハインドを背負う時間帯もあったが、集中を切らすことなくセルティックに食らい付いた。
第4クォーター序盤も2桁のビハインドを背負いながら焦ることなくバトラーをベンチで休ませ、コートに戻ったバトラーがスティールに2つのアシストとチームを勢い付けて4点差に迫る。残り6分半でタイムアウトを取ったセルティックスも主力をコートに戻し、ここから終盤に向けて試合は過熱していった。
結果として第4クォーターでは決着がつかず、延長の最後で攻守にクラッチプレーを連発したヒートが競り勝つのだが、プレーオフで勝ち切るのに必要なクラッチプレーヤー、エースの仕事に差が出た。
第4クォーター残り1分9秒、セカンドチャンスから組み立て直したケンバ・ウォーカーはジェイ・クラウダーを振り切ってジャンプシュートを沈める。だが、次のポゼッションでの同じマッチアップではクラウダーに動きを読まれてブロックショットを浴びた。
この時点でヒートは2点ビハインド。アデバヨとの連係からゴール下に飛び込んだゴラン・ドラギッチがそのままシュートにも行けた場面で、ドラギッチは右コーナーで待つバトラーへのパスを選択する。シュートチェックに来たケンバをフェイクでかわしたバトラーが、コーナースリーを確実に決めて逆転に成功。その後、マーカス・スマートが抜け目なくファウルを誘うことで辛くも延長に持ち込むのだが、このバトラーのクラッチシュートの時点でヒートが勝っていても不思議ではなかった。
両チームが相手の隙をどう突くかという展開でもあったこの試合、オーバータイムに入りセルティックスが4点のリードを奪ったところで、今度はヒートのドラギッチが抜け目のなさを見せる。ゴール下にドライブで入り込んだドラギッチは、全くシュートを打つ場面ではなかったにもかかわらず、ダニエル・タイスの腕が自分に掛かった瞬間に反転してファウルを誘った。これでタイスはファウルアウト。相手のバランスが崩れた隙を見逃さずにクラウダーとアデバヨが得点を奪い、ヒートが逆転に成功した。
残り23秒、サイズのないヒーローとのマッチアップを突いたケンバにジャンプシュートを決められて再逆転を許すのだが、これでまたバトラーに火が付いた。23秒を使って攻めればいい場面、彼は自分のタイミングでアタックに出て、ジェイソン・テイタムにぴったり貼り付かれていたにもかかわらず窮屈な体勢から放ったシュートをねじ込み、バスケット・カウントのワンスローも決めた。
これで116-114とヒートが2点のリード。追い込まれたセルティックスだが、このチームは勝負を決めるクラッチプレーヤーがケンバだけではないのが強みであり、ラスト12秒の攻めを今度はテイタムに託す。トップ・オブ・ザ・キーから加速したテイタムはバトラーをかわしてダンクに行くが、ここに立ちふさがったのはアデバヨだった。スピードに乗ったテイタムが右腕を振り抜こうとするスラムダンクを、アデバヨは左の手首から先だけで強引に弾き返す。バトラーにアデバヨ、土壇場で攻守にクラッチプレーの飛び出したヒートが、第1戦を117-114で制した。
ジミー・バトラーは決勝ブロックショットを見せたアデバヨを「彼が僕たちのハートでありソウルだ」と称賛。また勝負どころを託されて決める自身のプレーについては「これが僕の仕事だ。チームメートにもコーチにもそう伝えているし、みんな僕を信じてくれるのだから、あとはやるだけだ」と語っている。
ドラギッチは29得点4アシストを記録、リードを許す時間が長くてもチームを落ち着かせるとともに、緊張が張り詰めるオーバータイムにも冷静に状況を見極めてタイスをファウルアウトに追いやるビッグプレーもあった。「自分の経験を最善の形でチームに還元しようとしてきたし、それは上手くいっていると思う。このチームに自信を持っている」と語った。