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レイカーズ、ロケッツ、シクサーズ、スパーズが有力?

NBAファイナルはウォリアーズのスウィープ勝ちで幕を閉じたが、シーズンオフになってもレブロン・ジェームズが主役であることに変わりはない。ファイナルで敗れた直後、自身の去就について「何も決めていない。これから家族と相談して考える」と言うに留めたレブロン。この夏にフリーエージェントとなるのはほぼ確実。キャバリアーズへの残留は、このシーズンを通したチームの出来、特にプレーオフの様子を見る限りは『望み薄』と言わざるを得ない。

今回の移籍市場では何が起きてもおかしくないが、レブロン獲得に向けて優位にあるとみられているのはレイカーズ、ロケッツ、シクサーズ、スパーズといったところ。

メディアが総じて一番手に挙げるのがレイカーズだが、これは人気チームというバイアスも少なからずかかっているようだ。巷で言われる「ロサンゼルスでの生活」はレブロンの目にそれほど魅力には映らないのではないか。現役を退いた後なら、いくらでも望むところで生活できる。それよりも優先すべきはバスケットボール面だろう。レイカーズのどこに魅力があるかと言えば『ストーリー』だ。自身のキャリアを有言実行で演出してきたレブロンにとって、低迷するNBA最大の名門チームを立て直すというストーリーは他のどんな筋書きよりも魅力的なはず。

ただ、「勝てるチームか」と言えば少々疑わしい。カイル・クーズマやロンゾ・ボールと魅力的な若手が揃っているが、レブロンが来るだけで常勝チームになれるとは限らない。レブロンは強烈な個性だが、それだけにチームメートの存在感はどうしても薄くなる。もう一人の大物を獲得するキャップスペースをどう活用するか、それでレブロンを納得させることが必要となる。

ロケッツはどうだろうか。今回のプレーオフでウォリアーズを最も苦しめたチームにレブロンが加われば、これは間違いなくスーパーチームになる。『チーム・バナナボート』の一員であるクリス・ポールが残留を決心してロケッツへと誘えば、レブロンとしても真剣に検討するだろう。シーズンMVPの最有力候補であるジェームズ・ハーデン、ポールとレブロンが共闘すれば、打倒ウォリアーズどころかNBA史上に残る『ビッグ3』が完成する。このトリオであれば、かつてのヒートでそうだったように役割はシェアできる。キャブズでそうだったように、相手のエースをマークし、シュートをブロックし、オフェンスを組み立て、決める必要はないのだ。逆に言えば、それほどのタレントと組まない限り、レブロンは余裕を持ってプレーできる環境を手に入れられない。

チームメートの将来性を考えた場合、セブンティシクサーズも魅力的だ。ベン・シモンズとジョエル・エンビードは間違いなく今後10年のNBAを背負って立つ逸材。他ならぬレブロンも彼らに最大級の評価と好感を持っている。だが彼らはレギュラーシーズンでその底知れぬ才能を披露した一方で、プレーオフでは大舞台での経験の浅さを露呈した。それだけに、レブロンが導くことで彼らは次のステップへと進むことができる。シモンズとレブロンはエージェントが同じで、今シーズンの時点ですでにレブロンは実質的に彼のメンターの役割を担っていた。

そして、この数日で急浮上したのがスパーズだ。レブロンのワンマンチームで限界を露呈したキャブズとは正反対のチーム。『New York Times』はグレッグ・ポポヴィッチがレブロンと面談すると報じた。ワンマンチームに疲れ、チームバスケットの一つの役割を演じることを学びたいとレブロンが考えるのであれば、ポポヴィッチの下でやるのがベストだ。スパーズにとってはティム・ダンカン引退後に右肩下がりの状況を一気に変えられるだけでなく、レブロンとプレーすることでカワイ・レナード、ラマーカス・オルドリッジの2人が真のベストプレーヤーに成長する期待も持てる。ただ、サラリーキャップをどう片付けるかは大きな問題として残る。

レブロンが新しいチームとの契約を済ませ、ロゴ入りのキャップをかぶって会見を行うまで、毎日新しい選択肢が浮上しては消え、議論を呼ぶだろう。その存在感もまたレブロンだからこそ。レブロンが主役となる夏は、まだ始まったばかりだ。