大阪エヴェッサの今野翔太はこの夏、「バスケ界に貢献したい」、「地元の大阪でもっとバスケットを盛り上げたい」という思いから、3人制バスケという新たな挑戦に乗り出した。自らがオーナー兼選手となり3×3チーム『GERA.OSAKA.EXE』を立ち上げ、PREMIER.EXEへと参戦。「日本のバスケが変わっているところなので、何をするにしてもすごくワクワクします」とやる気に満ちている今野に話を聞いた。
3×3の阪神タイガースを意識「愛されるチームに」
「シーズンが終わって、すぐに身体作りを始めました。来シーズンに何が必要かを見据えての身体作りです。それと同時に3×3の準備をやってきました。1年半ぐらい前から3×3が東京オリンピックの種目に加わりそうだと聞いて興味を持ったんです。プレーは老け込んだつもりはないけど、年齢も年齢だし、バスケット界にどうやって貢献できるか考えた時に、3×3だと。自分が始めることで全体的なレベルの向上に貢献できればと考えました」
先週末にシーズンが開幕したが、オーナーとしてチームを立ち上げた今野の活動は自然とコート外がメインとなった。スーツを着てスポンサー営業に回り、メディアにも自ら売り込んだ。このインタビューも、編集部に電話してきた今野からのアプローチがきっかけで実現している。「僕は社会人の経験がないのですが、そういうこともやりたいと思っていたんです。365日いつもジャージだから、スーツを着ることにあこがれがあるんです」と今野は笑う。
そんな慣れないスーツを着ての活動で身に染みて感じたのは、大阪エヴェッサのフロントへの感謝だ。「大変さを実感できて、それでまた感謝の気持ちも出てきます。エヴェッサはスポンサーが約400社とすごいんです。Bリーグになったことでそれまで以上にプロ意識を持ってフロントが頑張っています。だから僕たち選手はそれをないがしろにはできないし、コートで中途半端なプレーはできない。それが分かるのも、今やっていることがすごく良い経験になっています」
「12カ月ずっとシーズンでいてほしいんです」
休む間もない奔走ぶりだが、「僕は12カ月ずっとシーズンでいてほしいと思っているので大丈夫です」と今野は笑う。「たまに1週間休みがあれば、それで家族とどこかに行って。それ以上バスケットとトレーニングから離れてしまうと寂しいんですよね」
『GERA.OSAKA.EXE』はオーナー兼選手の今野を筆頭に、仲西淳、中村友也、臼井隆浩、西裕太郎、橋本拓哉、西畝優というメンバー。インサイドを担う外国人選手がいないが、「1年目は日本人選手だけでやろうと思っています。弱くても愛されるように。もちろん、やるからには優勝したいですけど、1年目は様子を見ながら優勝できたら最高です」
チームのキーワードは『バスケを近くに』。今野がイメージしているのは3×3の阪神タイガースだ。5人制バスケット以上に身近なエンタメとして大阪に定着させようとしている。将来のことも見据えながら、そして彼自身も楽しむのがポイントだ。
「僕という人間はバスケットでできているから、現役を引退するからといってバスケから離れることは考えられません。ただ、自分は指導者向きじゃないし、いずれはバスケットコートを運営したいんです。今回の3×3もそのための一つ。あまり重い感じには受け止めていなくて、ファン・ブースターさんにオフシーズンの楽しみを提供し、僕たちも楽しむ。3×3をきっかけにBリーグを見に来る人が出てくれたらうれしいですし、そういう相乗効果があればいいですね」
「もどかしいシーズン」に得られた収穫
『大阪エヴェッサの今野』としてはシーズンオフだが、3×3に邁進しながらも来シーズンに向けた準備は抜かりなく進めている。昨シーズンは24勝36敗と大きく負け越した。「Bリーグが始まった時点で旧bjのチームは下に見られていたと思いますが、それを覆すつもりでやって、1年目は『十分に通用する』という自信を得ることができました。そういう期待を持って始めた2年目は、もどかしいシーズンになってしまいました」
外国籍選手がフィットせず、スタートダッシュに失敗したことで歯車が狂った。開幕からアルバルク東京、シーホース三河と優勝候補との対戦が続き連敗。「うまく行かないところに連敗が重なって自信を失って、その後も勝ち方が分からないままシーズンが進み、誰かが誰かのせいにしていた時期もあったし、ファン・ブースターさんの厳しい声もありました」
後半戦に巻き返したものの、チームとしては見るべきもののあまりないシーズンだったと言わざるを得ない。その中での収穫を今野はこう語る。「若い選手がチームを変える姿を見たかったです。シーズン後半は日本人がすごく良くなりました。僕はもうベテランで、エヴェッサの伝統を作るという意味では若い選手に任せるべきだと。特にキャプテンを任された根来(新之助)にとっては今後につながる経験になったし、チームとしても後半には良いケミストリーができたと思います」
大苦戦の末にチームの土台を作ることができたことを大切にしたいと今野は言う。「シーズン最後まで未完成でしたが、チャンピオンシップ進出チームと争えるだけの力は持てていたと思います。来シーズンに必要なのはチームメートとの深みを持つこと。ヘッドコーチは代わりますが、その中でもメンバーが一緒で把握できていれば、そこにコーチのフォーメーションが入ってくるだけなので。日本人選手も数人は入れ替わると思いますが、エヴェッサの伝統と文化を作ることを意識してやっていきたいです」
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