クリス・ポール

サンダーに感謝「彼らとの繋がりは一生続く」

サンダーはロケッツとのGAME7を落とし、プレーオフのファーストラウンドで敗退した。昨年のオフにラッセル・ウェストブルックとポール・ジョージが退団し、今シーズンはプレーオフにすら進出できないと見られたサンダーだったが、プレーオフまで勝ち進み、優勝候補のロケッツをあと一歩のところまで追い詰めた。どんな難しい状況にも臆さず立ち向かい、持てる力すべてを出してぶつかっていく若いチームの戦いぶりは結果以上に価値があり、サンダーファンならずともリスペクトするものだった。

それからあっという間に1週間が経過。クラブは5シーズン指揮を執ったビリー・ドノバンとの契約を延長しないことを発表した。おそらくチームも再び解体される。クリス・ポールはそれを感じていたのか、『バブル』を去る前にサンダーのチームメートやスタッフ、フロントやファンに感謝するとともに「彼らとの繋がりは一生続くものだ」と語っている。

「僕たちはずっと疑いの目で見られてきたけど、僕らが自分たちの力を疑いはしなかった。誰にどう思われようとすべての試合に勝ちに行った。タフだったけど、僕たちはそうやって進んできたんだ」とクリス・ポールは言う。

彼が中心だったスター軍団クリッパーズが解体された後、ロケッツでジェームズ・ハーデンとコンビを組むも上手く行かず、年俸が高く年齢的にも上積みの見込めないポールの選手としての評価は、昨夏の時点では限りなく低いものになっていた。疑いの目を気にせず勝つために戦ってきたのは、他ならぬ彼なのだ。

このプレーオフで彼はプレーオフで勝つために必要な要素を備えたポイントガードであることを実証し、再評価を勝ち取った。サンダーは可能性に満ちた若手を多く擁するが、クリス・ポールのリーダーシップと勝負どころでの知性と駆け引きがなければ、到底ここまでは進めなかったはずだ。

彼は35歳になり、2年総額約8500万ドル(約90億円)という巨額の契約を残している。昨夏の時点ではどのチームも手を出さなかったが、今は違う。NBA優勝を狙い、ポイントガードを補強したいチームにとっては魅力的な戦力だ。

中でも有力なのがバックスだ。今シーズンのカンファレンスセミファイナルでの敗退は彼らにとっては不本意な結果だった。レギュラーシーズンでどれだけ勝っても、プレーオフで勝ち上がるには何かが足りないことを痛感しただろう。ヤニス・アデトクンボに残留を決断させるには『すぐに優勝できるチーム』であることを示す必要がある。1戦必勝のプレーオフでの駆け引きの妙。試合を支配する力、『アデトクンボ依存』を解消するカリスマ性。そのすべてが、クリス・ポールを獲得することで満たされる。

ヒートに敗れたカンファレンスセミファイナル第5戦、足首を痛めて欠場したアデトクンボがベンチから見守る中、『脇役たち』は素晴らしい戦いを見せた。クリス・ミドルトンはオールスターであることを証明したし、先発に回ったドンテ・ディビンチェンゾもアグレッシブな攻めを見せ、ウェスリー・マシューズもジミー・バトラー相手に気迫のディフェンスを見せた。彼らはアデトクンボを支える脇役ではなく主役になることで力を発揮した。つまり、普段はその力を出せていなかったことになる。アデトクンボは確かにMVPのタレントだが、それだけではチームは上手く回らない。得点力のあるポイントガード全盛のNBAだが、今のバックスに必要なのはクリス・ポールのようなオールドスタイルの、それでいて質の高いポイントガードだ。

当然、トレードには多くの代償が必要だろう。だが、バックスが勝つには変革が必要だ。そして再評価を勝ち取ったクリス・ポールにとっても、優勝を現実的な目標として戦えるバックスは魅力的な挑戦の場になるに違いない。