文=鈴木栄一 写真=野口岳彦、鈴木栄一

衰え知らずの41歳、平均プレータイムは29分

シーホース三河は昨シーズンの第3シードからステップアップし、セミファイナルまでのホームゲーム開催が確定する第1シードとして5月12日から始まるチャンピオンシップに挑む。この成績は日本代表のエースである比江島慎、爆発的な得点能力を誇る金丸晃輔、抜群のリーダーシップでチームをまとめる橋本竜馬など、リーグ屈指のタレントによってもたらされた。

それでも『常勝軍団』の屋台骨となっているのは桜木ジェイアールだ。それは比江島と金丸のオフェンスマシーンがいても、リーグ最強のハーフコートオフェンで起点となるのはジェイアールであることが端的に示している。

今シーズンの三河もハーフコートが中心ではあるが、展開の速いアーリーオフェンスを積極的に仕掛けるスタイルへと転換した。このスピードアップにジェイアールは難なく対応し、1試合平均15.5得点、8.4リバウンド、リーグ4位の5.3アシストをマークした。

これらのスタッツ以上に注目したいのが、欠場はわずか1試合のみ、1試合平均の出場時間はチームトップでリーグ全体でも11位の29分だったこと。レギュラーシーズン最終戦となった5月6日の川崎ブレイブサンダース戦でも35分間の出場で24得点11リバウンド6アシストと大暴れ。41歳という年齢を全く感じさせない元気一杯のパフォーマンスだった。

「まだプレーできていることに感謝している」

リーグ最高勝率の第1シードを獲得できた要因をジェイアールは次のように語る。「シーズンを通して、より安定したプレーができた。昨シーズンは一時、リーグ下位の相手にも負けがかさむ時期があった。今年はすべての試合にしっかり集中できた。これが違いだよ。僕と竜馬が一緒になってリーダーシップをとり、チームを引っ張った。それにベンチプレーヤーの層が厚くなった。連勝している時もベンチの選手が多くプレーした上で達成しているからね」

ジェイアール個人は、前述したように40代とは思えないクォリティの高いプレーを見せた。この年齢でこれだけ動けることに誰もが驚いているが、彼は「自分でもそう思っているよ。まだプレーできていることに感謝している」と笑顔を返した。

チャンピオンシップ初戦で三河が激突するのは、昨シーズンのセミファイナルで敗れた栃木ブレックス。この因縁を強調する外野の声は大きいが、ジェイアールは「昨シーズンの敗戦を受けてのリベンジといった気持ちはない」と言い切る。「昨シーズンとは違ったチームになっているからだ。同じメンバーであれば、そういう気持ちを持ったかもしれないけど、彼らは大きく変わった。MVPもいなくなっている」と平常心で試合に臨む。

ただ、言うまでもなく栃木のことは警戒しており、「どんな相手にも高いモチベーションを持って挑むだけ。とにかく勝ちたい」と気合十分だ。

「ルーティンは大事」とホーム開催を歓迎

昨シーズンのチャンピオンシップ、三河にとって痛恨だったのはジェイアールがシーズン終盤のコンディション不良を引きずってプレーせざるを得なかったことだ。しかし、今シーズンは6日の川崎戦での出場時間が示すように万全の体調でこの時期を迎えている。

「昨シーズン終盤にはトレーニングを十分にできないくらいに疲れてしまっていた。そこで自分より大きい、パワーのある相手とマッチアップする中でケガをしやすくなった。だけど今シーズンは最後までトレーニングできるよう、コンディションを維持することに集中してきた。いつも以上に体調に気を使ったおかげで、シーズンを通してしっかりトレーニングができた」

ここまでのフィジカル面の準備は万全。さらに心身ともにレギュラーシーズンとは段違いの負荷がかかるチャンピオンシップでのホームコートアドバンテージは、体調管理の面でも大きな利点となる。「試合に向けてルーティンは大事。自宅のベッドでしっかり休んで、いつもの食事をして、同じジムでトレーニングができる。これは大きなアドバンテージになってくる」

来るべく大一番に向け、「シーズンを通してやってきたことをしっかりやること。そして、アグレッシブにプレーすることが重要だ」とジェイアールは語る。20代、30代に続き、40代でも中心選手として日本一になる『偉業』に向け、1年前よりも充実した状況で大一番を迎える。